夏の美術の旅が、諸事情により延びに延びて、ようやく先日出かけてきました。今回は、東京・横浜へ。
まず、どうしても見たかったのは、「オルセー美術館展 印象派の誕生~描くことの自由~」、とりわけカイユボットの「床に鉋をかける人々」がお目当てです。
何しろ日曜日だったので、人出はハンパなかったです。やっぱり東京は人が多いのですね~。人気作品の前では5重くらいの人垣ができていて、なかなか絵の前に近づけません…。
さて、昨年展覧会を見に行って、改めて出会ったカイユボット、いろいろな素晴らしい作品がありましたが、やはりオルセーが所蔵する「床に鉋をかける人々」が最高峰のように思え、ぜひ見てみたいと願っていました。
この作品は、1876年にパリで開催された第2回印象派展に出品され、人々に衝撃を与えたと言われています。なぜなら、ブルジョア層であったカイユボットが、このような労働者階級の人たちを描くことは、当時としては斬新だったから。
絵の前に立つと、柔らかな光が印象的です。労働者がモデルとはいっても、描かれているのは丁寧に仕事をこなしていく職人たち。その様子は談笑しているようでもあり、絵の隅にはワインらしきボトルも見え、リラックスした雰囲気です。作家とも親しい間柄なんでしょうか、自分の家をメンテナンスしてくれる職人への愛情のこもったリスペクトが感じられるようです。腕を伸ばした職人たちの美しい身体、遠近の効いた構図、落ち着いた色合い、もう、ずっとずっーと見ていたくなる絵。なぜこんなにも魅かれるのだろうか…?とにかく、はるばる見に行ってよかったです!
この展覧会では、まさにキラ星のごとき印象派の巨匠たちの質の高い作品が見られます。初めは作家のネームバリューに惑わされそうになりますが、見ているうちに、絵を見る楽しさ、喜びというものをジワジワ感じていきます。
やっぱりモネには脱帽しますわ~。白色で埋め尽くされた「かささぎ」にはホントに感動した!白一色と思って近寄って目を凝らすと、光のあたっている部分には薔薇色が塗り込まれていて、影のところの灰色とか、すごい凝った色使い。絵から少し離れると、本当に写実的な雪景色に見えてくるその視覚マジック!すっごくオモシロイです。モネの絵は、まさに実物を見る価値があると思います。マネをリスペクトして描かれたという巨大な作品「草上の昼食」も、意欲的でした。
ところでこの「草上の昼食」とういテーマは、いろいろな作家によって描かれており、のどかでスノッブな感じが特徴だと思うのですが、ここで裸体の女性を描いたマネの作品は、当時としてはかなり奇異であり、美術史上、革新的であったのだと改めて実感。マネに始まりマネで終わるこの展覧会、あの「草上の昼食」も出品されていたら完璧だったのですがね…。(ゼイタク?)
さすがオルセー、大変良い展覧会でした。会期はもう少し、10月20日(月)まで。ますます混むでしょうけど、ぜひ見に行ってみてください!