有田芳生の『酔醒漫録』

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中島みゆき「顔のない街の中で」

2007-09-30 10:07:41 | 人物

 9月29日(土)新宿のデボネールで散髪したあと池袋。西武のなかのリブロで新刊などを見て歩く。「おもろ」で常連と雑談。演劇評論家の江森盛夫さんがパレスチナから来た子役(12歳)に驚いたという。「何が欲しいですか」との質問に「自由が欲しい」と答えたそうだ。あふれる商品のなかの何かを言うのだろうと思っていたところ、日本人のように自由に行動できることがうらやましいというのだ。しかしこの日本はその「自由」を高い次元に昇華することはできていない。丸山眞男がいうところの主体性を発揮して政治の行くべき道を選択する大衆という課題だ。池袋に詳しい中川雅さんは、最近のネットカフェには小学生の子供を連れた母親が寝泊まりしていると教えてくれた。夜中のハンバーガーショップで注文したとき、店内で食べると言ったところ、「席を見てきてください」と言われた。二階席に行くとホームレスが何人も眠っていたそうだ。厚生労働省の調査ではネットカフェ難民は5400人だが、そのうちの2割は50歳代だ。地元の「あゆみブックス」で浦沢直樹さんの『21世紀少年 下』(小学館)を入手。8年間連載された物語もこれで終わりだ。大型書店では欲しい本がなかなか見つからないときがあるが、街場の充実した書店ではあらゆるジャンルの新刊が整理されて置いてある。大人になった主人公ケンジたちの社会貢献はさらに続く。ヤマハから送られてきた中島みゆきの新しいアルバム「I LOVE YOU 答えてくれ」を聴く。「顔のない街の中で」の歌詞が心にとまる。「見知らぬ人の笑顔も/見知らぬ人の暮らしも/失われても泣かないだろう/見知らぬ人のことならば/ままにならない日々の怒りを/物に当たる幼な児のように/物も人も同じに扱ってしまう」。そしてこう続く。「ならば見知れ/見知らぬ人の命を」と。担当者の手紙には「渾身のアルバム」だと書いてあった。きっと中島みゆきも自分の年齢のことを考えているのだろうと推測するのは、同い年ゆえだ。どんなスタイルで、いつまで走るのか。そんなことをふと思うのだった。