有田芳生の『酔醒漫録』

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マイケル・ムーアの「シッコ」を見よう

2007-09-01 10:29:14 | 映画

 8月31日(金)原稿執筆を切り上げて午後3時に外出。シネ・リーブル池袋でマイケル・ムーアの「シッコ」を見る。会場が明るくなったところで客席から拍手が起きた。こうした反応は完成試写会でもなかなかないことだ。よくできたドキュメンタリーだった。いまキューバのブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのCDを聴きながらあれこれのシーンを思い出している。テーマは医療問題だが、そこで社会の質が描かれているのだ。規制緩和されたアメリカ社会の非情を、カナダ、フランス、イギリス、さらにはキューバと比較し、後者の人間性を際立たせている。たとえそこに高い税負担や経済難があろうともである。何しろアメリカでは医療費を払えなくなった入院患者を病院が路上に捨てる社会なのだ。その映像と証言には唖然とさせられた。それに対して医療費が無料の社会とは何と優しいことだろう。「自由」とは、医療や教育など、人として生きていく基礎的基盤が整えられていることが条件なのだ。キューバにあるグアンタナモ基地に、「9・11」で傷ついた救命員たちを連れて行くところは、いかにもマイケル・ムーアの手法だ。テロリストであろうとも最高の医療が無料で施されているからだ。「ああ、またか」と思ったものの、驚いたのはそれからだ。

070831_20110001  経済封鎖されたキューバでは、医療は誰でも無料。アメリカからやって来た患者も、名前と生年月日を書けば、充分な治療を受けることができたからだ。しかもアメリカでは1万4000円する治療薬と同じものが、たった6円!だった。日本よりずっと悪化した経済状況にあるキューバでこうした医療が行われている。この映画で描かれているアメリカは、いまの日本であり、日本の遠くない将来なのだ。池袋の過剰に華美な商品街を歩きながら、虚飾を感じてしまったのは、マイケル・ムーア効果なのだろう。久々に「華八」へ顔を出した。住宅街でこれだけ充実した寿司屋を維持するのは大変な努力だ。たとえ客は少ない日があっても、仕入れに手を抜かない。住民=消費者に対して飲食店がサービス業であるように、医療もまた同じ精神で対応すべきなのだ。その仕組みがおかしいならば、それを変えるための政治とは究極のサービス業であるべきだ。参議院選挙のとき、私たちが配布したあるビラでは「発想を変えよう」「選択を変えよう」「仕組みを変えよう」という項目で政策を提示した。「人間の顔をした社会」を創ることは不可能ではない。「シッコ」を見てそう思うのだった。