有田芳生の『酔醒漫録』

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「未来なんてわかるわけがない」

2007-09-17 09:25:55 | 読書

 9月16日(日)中島みゆきの新曲「本日、未熟者」を聴いていると複雑な思いに囚われる。どうも最近の中島みゆきは先祖返りをしているようだ。同世代としてここまできても突っ張ることへの共感がある。午後から明治記念館で山口智史さんと清水ひとみさんの結婚式に出席。恩師である故・山口正之さんのお孫さんだ。「労働の社会化論」でユニークな経済分析をしていた先生を思い出す数時間だった。九州の佐賀で自転車屋をしていた山口さんは、仕事の傍ら論文を書き、それが認められて大学教授となる。学部は違ったけれど、よく先生の研究室に通ったものだ。嵐山のご自宅にもお邪魔をしたとき、ビール(いつもキリンの小瓶だったなあ)の好きな先生につまみを持ってきたのが久児子夫人だった。葬儀以来に再会したその姿は車椅子だった。人生はこうして過ぎていく。ある政党の最高幹部が機関紙で先生を名指しで批判したことがあった。学問的議論を政党の幹部が裁断したことにはいまでも違和感がある。あのとき衝撃を受け、酒を飲んだ先生は嵐山を歩きながら「バカヤロー」と叫んだとあとから聞かされた。あれもこれも遠い過去。

070916_13430001  山口先生のお孫さんは体つきや文才があるところがよく似ている。ひとみさんとお父様が退席する姿を見ていて、ほろり。いつか子供たちがこうした場面に立つときを想像するだけでダメだ。帰宅して各党の知人に連絡。小選挙区での準備状況を聞く。どんどんと候補者が決まっていく。急がなくてはと参議院選挙での得票を分析。松井孝典さんと南伸坊さんの『「科学的」って何だ!』(ちくまプリマー新書)の「未来なんてわかるわけがない」という項目を再読。「人生」とは脳の中に作られた内部モデルの蓄積だという松井さんはこう語る。

 
ある意味で未来はどんなふうなことでも可能なんです。つまりいまを必死に生き、過去をそうやってきちっと脳の中にためこんでいる人間にとっては、「未来なんてわかるわけがない」と思える。そういうことをやっていない人は安易にーー過去も蓄積されていないから、未来も考えられると思ってしまうんでしょう。

 松井さんは血液型性格判断を一刀両断し、スピリチュアルブームを一種の宗教だという。宇宙に果てがあるのか、人間の欲望がなぜ尽きないのかなどなど、とても参考になる対話だ。学校教育でこうした著作をテキストにすれば、いまのくだらないテレビ番組などへの強力な免疫になるはずだ。