有田芳生の『酔醒漫録』

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山崎拓から抗議電話があった(笑)

2007-01-31 08:27:42 | 人物

 1月30日(火)台湾から電話があった。テレサ・テン物語の撮影は金宝山にある彼女の墓地で順調に行われているという。新富町から神保町までタクシーで急いだ。閉店直前の「松島清光堂」で落款を受け取る。フクロウを彫ってもらったのだ。よくできていてとても気に入る。『酔醒漫録』と3月に出るテレサの文庫本にこれを押すつもりだ。地下鉄で市ケ谷。JRのホームに上がれば電車が止まったまま。車内のアナウンスでは人身事故で中央線がストップしているという。原宿でテレビの生放送があるのでいささか慌てる。動く気配がないのでタクシーで移動しようと出口へ向かった。おかしいのは電車が動いていないことを駅構内でまったく放送していないことだ。都営新宿線からJRに向うところで情報があれば、無駄な時間は省けたのに、まったくもって不親切だ。原宿のBS朝日で午後8時から「ニュースの深層」に出演。キャスターは上杉隆さん。アシスタントが重信メイさん。酒場以外で上杉さんと会うのはこれがはじめてのこと。テーマは「統一教会と政治」だ。冒頭から山崎拓訪朝と統一教会といった話題からはじまり、国会議員秘書への浸透、国際勝共連合と政治家、北朝鮮で活動する統一教会などなどを語る。1時間の番組はあっという間に終ってしまった。表参道ヒルズで会食。重信さんに母親で日本赤軍の最高指導者だった重信房子さんのことなどを聞いていた。そこで上杉さんの携帯電話が鳴った。テレビ局の担当者だとすぐわかる。会話が終ったところで山崎拓さんから抗議電話があったことを知る。素早い反応だ。

014  上杉さんが席を外して電話をした。山崎さんは訪朝が統一教会ルートではないと主張する。しかし昨年7月に訪米したとき、「ワシントン・タイムズ」の朱東文社長から訪朝を勧められたことは事実だ。上杉さんが統一教会の人はいなかったのかと問えば、「いた」と答えている。番組で語った統一教会の施設に出入りしている女性との関係などについては「番組のビデオを見てから判断する」という。見てもいないのに抗議をしてきたのだった。支持者が関係者に連絡をして本人に伝わり、いきなり電話をしてきたようだ。「有田は嘘つきだ」と語り、「告訴する」と何度も語っていたという。何と「大人」(たいじん)=「度量の大きい人物」であることか。ぜひとも告訴していただきたいと心から願う。午後から見た「オール・ザ・キングスメン」は戦後アメリカで独裁的政治家と恐れられたルイジアナ州知事ヒューイ・ロング(映画ではウィリー・スターク)の物語。演じるショーン?ペンがすごい。実在の政治家がこれほどの演説をできれば、民衆は熱狂するだろう。先日見た「ボビー」はロバート・F・ケネディの暗殺をテーマとしたすぐれた作品だった。政治家を描いた作品を続けて見ただけにそれと比較して山崎拓さんの度量の小ささに呆れてしまった。


筑紫哲也は都知事選に出ない

2007-01-30 08:49:57 | 人物

 1月29日(月)再び冬らしい寒さだ。今日はテレサ・テン53回目の誕生日。30日の「スポーツニッポン」「東京中日スポーツ」でテレビ朝日が放映するドラマのテレサ役が公表される。これまで「XX」と書いてきたのは木村佳乃さん。女性週刊誌などは小雪がテレサ役を断ったなどと報じてきたが、そんな単純なものではなかった。テレサ・テンを本気で演じたいと判断した木村佳乃さんの存在がこの配役を実現した。役者が本気だからスタッフもそれに応える。だからこそ役者はそこでさらにエネルギーを発揮できる。そうした関係なのだ。テレサの母親には高橋恵子さん、父親には古谷一行さん、舟木稔さんには高嶋政伸さんといった配役だ。ほかにも淡路恵子さん、大杉漣さん、小林綾子さんなどが出演する。木村さんにしても高嶋さんにしても見事に当人に成り切っている。マイクの持ち方ひとつもテレサであるし、笑い方がまた舟木さんなのだ。役者とは他人の人生をつかの間ではあっても生きることができる人たちだ。ドラマの撮影はさらにタイのチェンマイ、パリへと続く。他人の人生を演じることができる俳優たちに感嘆するばかりだ。木村佳乃さんたちは金宝山にあるテレサの墓を訪れたはずだ。残念なことに5月の日生劇場で歌う予定だった華原朋美さんが別の歌手に変更となった。華原さんが熱唱するテレサ・テンを聴きたかったが、問題が生じれば仕方がない。木村佳乃さんといい華原朋美さんといい、それぞれの人生だなと痛感する。

P1270024_1  民主党の国会議員とこんな話をした。「そのまんま東はどうですか」「注目されているのが自分の実力だと勘違いしてきていないか。マスコミの関心は〈そのまんま東現象〉。知事室の椅子をパイプ椅子にするとか公用車を使わないと言っていたのに、行動で否定。もっと大きな問題でマ二フェストを否定すればマスコミは批判に転じる」「専門家の見方ではいずれ利権勢力に取り込まれるという」「そう、たとえば一律賃金カットが具体的に提案されると議会などの猛反発を生むだろう。そのとき議会を解散することができるかどうか」「そこで25歳以上で政策を支持する人たちに呼びかけて〈そのまんま党〉でも作って、与党議員を当選させることだ」「ところで都知事選は?どうして筑紫哲也さんの名前が出たの?」「あれはわたしたちが政党人以外で誰がいいだろうかと話をしていたんですよ。そこで筑紫さんなら勝てるかもしれないと話題になっただけ。それがスポーツ新聞で報じられた。100人の候補者名簿などないですよ」「誰がいいんですか」「菅さんだけど、出ないですね。筑紫さんも本人がありえないと言っている」「田中康夫さんは?」「あくまでも個人で動く人だから、難しいんですよ」「でもそこが強みでしょう」「うーん、マ二フェストがしっかりしていれば小宮山洋子さんでも海江田万里さんでも勝てると思っているんです」「でも彼らも出ない。それに無党派層に広がっていかない」ざっとこんなことを話し合ったのだが、ここにも混迷が見て取れる。民主党は国会議員ではない人物を都知事候補に擁立することになるだろう。


東京地検が狙う大物政治家の蹉跌

2007-01-29 08:19:34 | 政談

 1月28日(日)成田エクスプレスで書いている。音楽はテレサ・テンの中国語バージョン。まずは「海音」だ。やはり日本語ではなく、母国語で歌う曲の方がずっと情緒的でいい。撮影陣は朝から海岸などで仕事をして夕方台湾へと向かった。この2日間撮影を見学して感じたことは現場の熱気だ。すでにプロデューサーからテレサ役のXXさんはこの仕事にのめり込んでいると聞いていた。相乗効果なのだろう。撮影、音響、美術などのスタッフにも活気がある。たとえばテスト演技の合図が出されると同時に美術スタッフから「喜んで!」という声がかかる。聞いてみれば特に意味があるわけではない。このシーンを喜んでやります、喜んでやりましょうなどなど何とでも解釈できる。高校時代のクラブ活動レベルでいえば「ファイト!」の掛け声のようなものだ。その繰り返される言葉が緊張した現場をいっきょに和ませる。協同した労働の見事なアンサンブル。映画でもテレビでもこうした仕事に魔力があることを実感した。厳しい仕事であっても「やめられない」という気持ちはよくわかる。XXさんはおそらく数時間の睡眠が続いているはずだ。ときに台詞を間違えることもあるが当然だ。それでも「本番行きます」の指示が出ると見事に演技を決める。その凛々しさにどこかで人物ルポを書こうかと心が動いたほどだ。演技と言葉そしてリラックスについて得ることが多い。このテレビドラマはきっとうまくいくと確信する。日本での撮影も見学することを舟木稔さんと約束。昼食はペニュンシュラホテルで飲茶。空港で免税店などを歩く。

P1270031  今春の統一地方選挙に関わって驚くべき情報がある。ある大物政治家の談合疑惑で東京地検特捜部が動いているという。有名な側近に手が入るのは簡単だが、その政治家にまで達するかどうか。ある土地をめぐる疑惑で、金の流れ、使途についても構図は描けているようだ。最大の問題は政治的判断だ。当選すれば摘発しにくいが、落選すればいっきょに動く可能性が高い。昨年末から新聞数社がチームを組んで取材を進め、この元旦にもスクープがあるという噂も流れていた。そうした情報が当人の耳にも入っているのだろう。いつもは勢いのいい人物だが、最近会った記者によれば、そうとうに落ち込んでいるという。別の目撃者によれば足元もおぼつかなかったとまでいう。いま具体的に書くことははばかられるが、まさに「驕れるものは久しからず」といったところだろう。参議院選挙の前哨戦ともなる統一地方選挙でもっとも注目されるのは、やはり東京都知事選挙だ。石原慎太郎都知事が家族を都政に関与させた問題は、そこに法的問題がなくとも都民の批判を高めている。それでは対抗政治家はいるのか。「週刊朝日」が香港にまで電話をしてきたので、思うところを語っておいた。その横ではテレサ役のXXさんが「悲しい自由」を歌う前に中国政府批判の台詞を繰り返しているのだった。auの携帯電話に挿入しているICカードをNOKIAに入れて国際通話ができるのだが、何度も途切れてしまう。この分野ではドコモの方が優れているのかもしれない。「サンデー毎日」の記者も同じテーマ。留守電に入っていたが香港から電話をするのを忘れてしまった。


香港ロケ3日目の発見

2007-01-28 09:37:14 | 人物

 1月27日(土)昨夜の最終便で香港に着いた文藝春秋の松井清人さん、文庫を担当(発売は2月ではなく3月の勘違いだった)してくれた森正明さんとお粥でも食べに行こうとホテルを出た。ところが小奇麗に変貌した街並みを歩くのだがなかなか見つからない。小路に入って探す。セブンイレブンはいくつもあるけれどお粥屋がわからない。仕方なく雲呑麺を食べる。その足でペニュンシラホテルへ。ロビーで珈琲を飲みながらノンフィクションの現状、直木賞のことなどについて語る。評価はすべて巡り合わせといったところか。吉村昭さんは芥川賞を受賞したという知らせを受けて文藝春秋に駆けつけたところ、それが取り消されたという経験がある。前代未聞のことだ。そのことを吉村さんは泰然とした態度で振り返っていたが、どうもそれは本音ではないという。「許せない」という気持ちを持ったとしても当然のことだ。ただし吉村さんが公言したように、もしそのとき芥川賞を獲得していたならば、「戦艦武蔵」をはじめとした戦記物は生まれていなかった可能性が高い。人生など絶えず転がる石のようなもので、何が起きるかなど誰にもわかりはしない。ホテルを出て新界に向かう。撮影のために借りた豪邸に着いたのは午前11時ごろ。スタンレーにあったテレサの住まいはすでに取り壊されている。シチュエーションはテレサの自宅。ここで天安門事件前後のテレサと母親である趙素桂とのやりとりを撮影していた。テストが何度も繰り返され、最後に「本番行きます」の声がかかる。テレサ役の××さんはまさに熱演。感情移入が伝わってくる。母親役も熟達した演技で安心して見ていられる。わたしたちはすぐその横で、あるいは二階で撮影現場を眺めていた。

P1270030  舟木稔さんはテレサと母親のあつれき場面をじっと見つめていた。デジカメで後ろから撮影した姿には味がある。やがて舟木さん役の俳優が加わった場面となった。会話の最後に男優は笑った。それがまた似ているのだ。テレサ役の××さんは「泣く」場面を撮影するとき、最低限のスタッフしか近くにいさせなかった。わたしたちもそこには立ちあわなかった。精神を集中して特別な感情を演じる。どうすればそんなことができるのかが不思議だった。休憩時間に聞いてみた。どうすれば感情を移入して本人になり切れるのですかと。男優はこう言った。「ともかくリラックスすることです。それがすべてです」。ではどうすればリラックスできるのか。そう訊ねると「深呼吸することは大きいですね」と答えた。精神を落ち着けることで狭い世界に入りこむのだろう。そういえば××さんは深刻な台詞を語る前にうつむき、意識して内向化していく様子が見て取れた。その直後に感情を爆発させるかのように身体全体から言葉を発していた。小手先の技術ではない。邪心を排除することなのだ。6時間ほど見学をして撮影現場をあとにした。夕食はレイユームーン。ここに来るのは20年ぶりのこと。ここでも小汚い街が美しく整えられていた。テレサ・テン役の××さんは午後11時まで撮影が続いた。


「テレサ・テン」in香港

2007-01-27 08:45:18 | 人物

 1月26日(金)香港のインターコンチネンタルホテル。舟木稔さんと通訳のマリアさんと日本料理「銀座」のカウンターに座り、さっきまで窓の向こうを見つめていた。ライトが灯るそこでテレサ・テン役の女優が思いを語り、そのあとで「悲しい自由」を歌っている。場面は天安門事件が起きたあとのこと。日本の歌番組に行く気持ちになれないテレサが衛星中継で正直な気持ちを表明するところだ。冷たい風の吹く遊歩道で何度も同じシーンの撮影が続いた。午後7時過ぎから2時間ほどロケを見学。夕食のため近くのホテルに移動したのだった。もしテレサが生きていたらどうしていただろうか。そんなことを舟木さんと語り合った。朝8時過ぎに成田空港で会ったとき、舟木さんが缶ビールを買ってきて乾杯しましょうと言った。テレビドラマ化の話があったのは一昨年の秋のこと。ようやく実現に到った喜びの乾杯だった。『私の家は山の向こう』を原作にしたドラマの撮影はすでに日本ではじまっていた。海外ロケの最初が香港だ。総勢40人ほどのロケ陣。テレサ役の女優××さんにはじめて会った。舟木さん役の男優に会ったときもそうだったが、両手で握手をしてくる丁寧さには驚いたものだ。この女優は近く公開される映画での演技も印象的だったが、フリーダ・カーロが好きだということも芸術への関心の方向を示している。撮影現場にいるのはテレサ役と舟木さん役、そしてテレサのお母さんを演じるベテラン女優だ。テレビ朝日で放送されるドラマの全容は30日に明らかにされる。XXさんが天安門の学生を支援する香港の集会で歌ったシーンを演じるところを写真で見た。似ている。

P1260009_3  プロデューサーに話を聞けば、テレサのビデオを繰り返し見ることなどで本人に成り切っているという。たしかにそうだと気づいたのは、マイクを持つしぐさ、歌い終わったときの顔の動きなどなど、テレサそっくりなのだ。それは舟木さんとも一致した感想だった。寒さのなかで撮影を繰り返し、そのたびに自分の演技の出来を確認している姿を見て、これはすごいと思ったものだった。しかもテレサがかつて語った重要な言葉を完璧に記憶している。テレビドラマはアジアでも放送されるはずだ。XXさんの世界も広がっていくことだろう。待ち時間が多いので大変ですねと舟木さん役の男優に言ったところ「わたしたちはウェイティングビジネスと言われているんです」と教えてくれた。撮影は深夜まで続いた。俳優とは大変な仕事だと実感した。夕方、香港の街を歩いて思ったことは、日本人観光客の比重が相対的に低下したとはいえ、まだまだ多いということだ。21年前にはじめて訪れたときに比べると何と清潔になってしまったのだろうか。この都市の魅力であったいかがわしさ、猥雑さがどんどんと失われていった。経済的発展は都市の匂いを奪い、そこに暮らす人たちから発散する土着のエネルギーを漂白していった。「東京化」とは、独特の「顔」が能面化していくプロセスなのである。一方向への文明化がもたらす「のっぺらぼう」現象。東京都知事選挙もそうした視点で見ることもできよう。


都知事候補はこうして作られる

2007-01-26 05:02:25 | 政談

 1月25日(木)ジムに行くか茗荷谷クリニックに行くか。日本テレビを出て迷ったが、あとの予定を考えて茗荷谷へ向った。ビタミン剤などをもらって赤坂見附。「不安定研究会」に30分遅れで参加。今回のテーマは「香港返還10年ー変わったもの、変わらないこと」。香港から戻ったばかりの鈴木雄二・共同通信前支局長の話を聞いた。政治、経済の動向でいくつもの刺激があったが、なかでも興味深いのは「一国二制度」の行方である。50年という期限の10年が過ぎた。それでは40年後に中国と香港との関係はどうなっているのか。「そのときには本土が香港のようになっているだろう」という意見もある。「そのとき」を見たいなと思う。香港にディズニーランドが開園したのは2005年9月。年間の予想客は560万人ほどだったが実際の入場者は500万人ほど。大陸ではディズニーのキャラクターが浸透していないこと、入場料が日本円にして6000円と高いことから当てが外れたようだ。最近の香港ではかつてのような日本人観光客の比率は低下して、ここでも大陸からの客が増えているそうだ。たしかに買い物やグルメ旅行で香港を取り上げるテレビ番組も少なくなっている。香港だけではなく日本人の意識も変わりつつあるのだろう。それが政局にも影響する。昨夜会った松井秀喜さんとの会話でも話題となったのは東京都知事選挙であった。今朝のワイドショーでも石原都知事に対抗する候補者は誰かという特集を組んでいた。最近スポーツ紙を賑わし、それを反映したテレビ番組などでは、虚報に近い情報に振り回されている傾向が強い。

 ある民主党議員がマスコミ人との雑談で「久米宏や田中真紀子なんていいんじゃないの」と言えば、それが「出馬か」といった記事として流れていく。いまもっとも必要なことは石原都政の現実をどう捉えるかだ。問題は石原都知事と親族の公私混同疑惑、元水谷建設会長からの献金疑惑だけではない。「FACTA」2月号は「重篤『慎太郎銀行』の深き闇」という記事で、「新銀行東京」が2年間で500億円もの純損失を突破するという現実を指摘している。都民の血税がいとも簡単に捨てられていいのかという大問題である。「庶民の食」という生活問題では「週刊ポスト」1月26日号が掲載した天野隆介の「石原慎太郎『築地市場』移転予定地は『発がん物質』まみれだ!」に驚いた。築地の卸売り業者約800のうち6割が反対している豊洲への移転目的は土地売却だ。豊洲なら千数百億円。築地市場を売れば2兆円を超えるという。しかもその豊洲の土壌は30年間も東京ガスの都市ガス製造工場だったから、基準値の1500倍のベンゼン、49倍のヒ素などが検出された。こんなところに築地市場を移転していいはずがない。こうしたことも都知事選の争点とすべきだ。誰が候補者に相応しいかは、オルターナティブ(代案)を提起できる構想力と実行力から選考していかなければならない。現在の都知事選候補者報道は、噂話としては面白いのだが、このままでは本末転倒が続くだけだ。


松井秀喜の胸板の厚さに驚く

2007-01-25 08:34:57 | 人物

 1月24日(水)都内某所で松井秀喜さんと会った。アメリカに戻る松井さんを草野仁さんが招いて食事をする場にお誘いいただいたのだった。カウンターだけの上海料理店で参加者は総勢10人。第一印象は大きい人。話をしていて噂どおり人格者だなと思った。松井さんのことを意識したのは作家の森まゆみさんの経験を聞いたときのことだった。まだジャイアンツで活躍していたときのこと。神楽坂にある店の二階で森さんたちは飲んでいた。そこへ試合を終えた松井さんがひとりでやってきた。隣の座敷との間には仕切りがある。そこで松井さんが「テレビをつけてもよろしいでしょうか」と聞いてきたというのだ。その態度に接したことで森さんたちは松井ファンになったという。その店にはいまでも松井選手のユニフォームなどが展示されている。それが都はるみさんたちと昨年飲みに行った「モー吉」だった。銀座の路地にある小さな割烹も松井さんとの接点だ。店主夫妻は毎年一回ニューヨークに出向き、松井さんのために料理を作っている。多くの人たちが松井さんのためならと思うことには理由があることを実感した。威圧感などをまったく感じさせない柔和な大人(たいじん)なのだ。5時間ほどご一緒しても「あれっ」と思わせるような言動が微塵もない。子供のファンにもマスコミにも分け隔てなく丁寧に対応することができる人格がすごい。健康管理のことなどを聞いて印象的だったことは、やはり睡眠を7時間は取るということ。手の甲を見ればツヤツヤとしている。新陳代謝がいいのだろう。そう伝えると「身体を動かしていますから、そうだと思います」と言っていた。

070124_23480001  そこでニューヨーク・ヤンキース広報担当の広岡勲さんがこう言った。「女性的な手でしょ。プロ野球選手では珍しいですよ」。松井さんはテレビでも語ったことだが、どんなに素晴らしいプレイをしても、決してパフォーマンスはしないという。「どうしてですか」と聞くと、意外な答えがあった。「相手チームの人たちのことを考えればできないですね」と言うのだ。ホームランを打ったり、ファインプレイをすれば、自然に派手な行動をしたくなることがあるだろう。そんな瞬間にも相手の存在が抑制となる。すごいことだなと思う。パフォーマンスはしないという松井哲学は自然に身に付いている。身体だけではなく精神にまで達する徹底した自己管理の結果なのだろう。2月20日には新潮新書が出るという。いまから楽しみだ。松井さんからは都知事選挙のことなどを聞かれた。美味しい料理を堪能して最後にサインをしてもらう。ヨーコ?ゼッターランドさんに携帯電話を渡して記念写真をお願いする。ヨーコさんが困っているのでどうしたのかと思えば、松井さんと並んで立つと身長の違いで画面に入らないことがわかった。そこで松井さんがしゃがんでくれた。胸板の厚さを見て、これがまさに「巨人」の身体なのだなと感激。超一流の人物には年齢に関係なく滲み出る人格と風格があることを知った一夜であった。


筑紫哲也は都知事選挙に出るか

2007-01-24 08:31:18 | 政談

 1月23日(火)新宿にある紀伊国屋サザンシアターで井上ひさし作の「私はだれでしょう」を観る。井上さんの遅筆により、初日が2回延期された作品だ。入り口で娘の井上都さんと立ち話。「ひさしさんはどうしてますか」と聞いたところ「昨日の初日に来てご機嫌でしたよ」。そう言ったあとでこう付け加えた。「人の気も知らないで」。最初は1月14日が初日だった。それが20日に延びて、さらに22日と再延期された。10公演のチケットを振り替えるのだから劇団の実務は大変だったはずだ。それが都さんの言葉となった。昭和21年の日本。ラジオから流れる「尋ね人」の時間は、戦争で不明となった身内を探すための番組だった。聴取率は90パーセントを超えていた。アナウンサー役は浅野ゆう子。周囲で手伝うスタッフとして梅沢昌代、前田亜希。とりわけ好演だったのは「山田太郎」を担当した川平慈英だった。テレビでときどき眼にする川平がこれほど芸達者だとは知らなかった。「山田太郎」はサイパンで記憶を失い、自分を取り戻すために「尋ね人」で家族を探す。そのミステリーじみた物語を軸に、戦後の言論状況を見事に描いていく。歴史的事実を発掘し、それを役者が表現するからいささか説明調になるのは仕方がない。それを音楽や動作で客席に届ける演出が優れている。役者の気概が伝わってくる。客席で舞台を見つめながら「必要な情報とは何か」ということを思った。捏造番組が問題となったからだけではない。グルメとダイエット情報であふれるマスコミ情況の異常を期せずして浮き彫りにしたようにも感じた。こうした作品で埋もれゆく歴史を記録することがまだまだなの必要だ。

 終演と同時に席を立つ。早足で大江戸線へ。赤羽橋で降りて芝公園スタジオ。午後6時から「もしも私が主人公だったら……」(放送は1月27日13時30分から14時55分)の収録があった。歴史上の人物がピンチに陥ったときにどう対処したか。それをタレントが自分だったらどうするかを演じる。わたしは解説者のひとりだ。北芝健さんには「スキャンダル」報道以来はじめてお会いした。宮崎哲弥さん、有馬晴海さんとは初対面。休憩時間に政局についての情報交換。安倍首相が衆参同時選挙に打って出るだろうということではほぼ意見が共通した。いまの支持率では参議院選挙で敗北すれば年内に衆議院を解散せざるを得なくなる。ならば相乗効果のある同時選挙を選ぶだろうというのだ。それでも衆議院で自民党が50議席も減らすという予測がある。問題は野党の存在感の希薄さだ。政治専門家のなかで参議院選挙で自民党が勝つという論評が多い根拠はそこにある。その前哨戦としての東京都知事選挙に筑紫哲也さんは立候補するのか。たしかに「ニュース23」の契約更新が夏に切れること、ご本人も引き際を考えていることなどを考慮すれば都知事選挙への出馬は「花道」になるだろう。石原都知事に対抗する候補者としては有力だ。だが筑紫さんの行動を最終的に決めるのは奥様の存在だと思う。わたしは「出馬はない」と判断している。有馬さん、宮崎さんも「そうかもしれない」と言う。田中康夫さんが都知事選挙あるいは参議院選挙に出ることでは一致した。安倍政権のスキャンダル情報が流れ出していることもふくめ、政局は動く。


桜田淳子の芸能界復帰はない

2007-01-23 08:25:20 | 人物

 1月22日(月)桜田淳子さんが「婦人公論」で「独占告白」したため、ネットでも「芸能界復帰か」といったニュースが流れている。駅のキオスクで買って地下鉄で読む。肩書きは「女優」とある。山口百恵さんがもしどこかのマスコミで手記を発表したとしても「歌手」とは言わない。桜田さんにこの肩書きを使うのは、編集部が勝手に使ったのでなければ、そこにご本人の芸能界復帰への意思が入っているのだろう。「それでも自分に素直に生きる」と題したのは編集部だ。最初のリード文から事実誤認がある。「結婚を機に芸能界を遠ざかった」と書いているが、そうではない。社会問題化している統一教会による霊感商法を肯定したから芸能界にいられなくなったのだ。桜田さんは日常の家庭生活を語る流れのなかで信仰についても語っている。昨年11月に集英社からエッセイを出したことに関連して、編集部はこんな文章を挟んでいる。「桜田さんが、統一教会の信者で、合同結婚式で挙式したのは周知の事実。その後、教団に対して霊感商法に関する訴訟なども起こり、有名人である彼女が、そこにひと言も触れないのは、不自然だというわけだ」。ここでも再び基本的誤りがある。桜田さんが合同結婚式に参加したあとに霊感商法が裁判で争われたのではない。桜田さんはすでに社会問題化し、裁判にもなっていた霊感商法に対してマスコミの前で「喜んでいる人もいる」と肯定したのだった。桜田さんはこんどのインタビューのなかで「隠したつもりはないです」「今の私は、(批判を)甘受したいと思います」と語っている。

060613010_1_1 060613011_1  そのうえで「芸能界の仕事も、私の波動の変化をキャッチして、一緒にやろうという人が集まってくださるのかもしれないし、私も必要とされることでスイッチが入って、何か行動を起すかもしれない」という。この表明が芸能界復帰というニュースとなった。1992年の合同結婚式から14年が過ぎた。子育ても一段落した桜田さんがもういちど女優として活躍したいという気持ちは痛いほどわかる。桜田さんを育てたある芸能関係者などはいつも「淳子は惜しい」とつぶやいている。わたしにも何度か打診があった。そのたびに答えてきた。芸能界復帰はありえない。かつてほど表面化していないとはいえ、いまでも社会問題となっている(静岡での被害が大きい)霊感商法を肯定したからには、曖昧なままで芸能界に戻ることはできない。もしそのような動きが明らかになったときには、被害者や弁護士たちは猛烈な抗議を寄せることになる。霊感商法が違法であることは最高裁でも認定されている。この高いハードルはいくらエッセイ集を出版しインタビューを受けても超えることはできない。わたしはいつか円熟した演技を見せる桜田淳子の姿をどこかの舞台で見たいと思っている。しかし、統一教会の文鮮明教祖の前で歌うような桜田さんなど見たいとも思わない。日本人信者に送金命令を出し続けている文鮮明教祖がいるからこそ霊感商法は終らないからだ。神保町で降りて東京堂書店。大道寺将司句集『鴉の目』(現代企画室)を買い、東京大学出版会の「UP」をもらう。高岡書店では弘兼憲史さんの『常務 島耕作』(講談社)を手に入れた。


川上弘美がいるような『真鶴』

2007-01-22 08:01:30 | 読書

 1月21日(日)夕方、二女が京都に遊びに行くので、いっしょに池袋まで行く。リブロで生井英考『空の帝国 アメリカの20世紀』(講談社)を買う。重金淳之「酒屋に一里 本屋に三里」(「本の話」文藝春秋2月号)に「生井教授は学生時代に私の『文章論』の講座を受講していたが、文章力は当時から目を瞠るものがあった」とあったからだ。東京堂書店でも、この筆者だから買うという読者がいると聞いていた。文章力があってテーマがアメリカ。しかも「興亡の世界史」のシリーズだから好奇心は高まるばかりだ。朝から川上弘美さんの『真鶴』(文藝春秋)を読んでいた。そんなことはないのだろうが、どうしても主人公が川上さんのイメージと重なってくるのだった。久々の長編についても重金はこう評している。「女性の生理を描く筆致は濃淡の均衡が取れ、品位に富む点では当代随一。女性読者には魅力的と思われる」。書籍や酒場の神髄や欠陥を短文に凝縮する重金淳之の眼はすごい。テレサ・テンの「ニューミュージック・ポップスを歌う」を聴きながら「ざ・こもんず」の原稿を書く。先日も紹介した福岡「殺人教師」事件の真相を描いた書籍の紹介で、タイトルは「でっちあげの構図」。こんな文章だ。

 読んでいて不安になってくる本に出会ってしまいました。福田ますみ『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮社)です。テレビ、週刊誌、新聞で報じられていることがどこまで事実なのか。いやいや、そんな他人事ではありません。あのとき何とコメントしたのだろうかと朧な記憶を蘇らせていたのでした。「もしそれが事実だとしたら」という限定的な言葉を添えていても、厳しく糾弾したはずです。報道されていたことが捏造であったならば、あのときのコメントは無実の人物を傷つけただけでは済みません。マスコミも世間もすでに忘れている「事件」が起きたのは、いまから4年前のことでした。

 全国ニュースとして「事件」が知られることになったきっかけは「週刊文春」でした。それまで朝日新聞西部本社版や西日本新聞で報じられていた「事件」が、これでいっきょに全国的な社会問題となっていきました。どんな「事件」だったのかは、「週刊文春」のタイトルを見れば思い出される方も多いでしょう。「『死に方教えたろうか』と教え子を恫喝した史上最悪の『最悪教師』」。福岡市で起きた衝撃的な「事件」です。家庭訪問した教師が、教え子の曽祖父にアメリカ人がいたことを知り、「血が穢れている」といじめを行ったというのです。

 両親が校長や教育委員会に抗議したため、やがて教師に6か月の停職処分が下されました。抗議から処分までの間にも「問題教師」は教え子に暴力を振るい、あげくのはてに「死に方を教えたろうか」とまで言ったというのです。週刊誌がトップニュースで、しかも実名で報じたことで、テレビが追いかけました。ワイドショーだけでなくニュースでも「こんなにひどい教師がいる」という報道が行われたのです。福岡市の教育委員会によって全国ではじめての「教師によるいじめ」が認定されたのですから、まさに驚くべきニュースだったのです。両親は福岡市と教師を相手取って1300万円の損害賠償裁判を起します。弁護士の数は何と503人(のちに550人)。

 ところが……。裁判で霧が晴れるように明らかとなっていくのは、「事件」が冤罪だということでした。両親の虚言に基づく学校への抗議。事実を正確に確認せずに「親の言い分」を鵜呑みにしていく学校現場や教育委員会。「教育という聖域」で起りうる異常な現実がそこにはあったのです。教師の釈明を聞きながら、それをアリバイ的なコメントとして使うだけで、「殺人教師」を追いつめていくマスコミ報道は、この福岡での「事件」だけの問題ではないでしょう。わたしが関わる「ザ・ワイド」(日本テレビ系)は、テレビで最初に教師の言い分を取材して報じたのですが、「事件の構図」は、それでも「教師による異常ないじめ」という大枠だったはずです。

「あるある大辞典」の納豆騒動が問題になっていますが、「事件」報道でも捏造は行われるのです。事件現場にいればどう報じていただろうか、コメンテーターとして発言するときに、これまでの方法でいいのだろうか、一般の視聴者、読者としてどうニュースを受けとめるべきなのだろうかなどなど、さまざまなことを考えさせられるのでした。どこまでも批判的な眼を失ってはならないとは思うのですが、情報に流されることなく立ちどまる難しさを改めて突きつけられました。