有田芳生の『酔醒漫録』

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米原万里の『終生ヒトのオスは飼わず』

2007-09-02 10:59:53 | 読書

 9月1日(土)「政治とカネ」で問題が出たら辞職してもらうと語ったのは安倍首相だった。ところが補助金を不正受給していたことが発覚した農水相は、いまのところ辞職を否定。ならば首相が罷免すべきなのに、黙したまま。これでは支持率が再び下ることだろう。気になるのはマスコミが「身体検査」という永田町の隠語を、そのままためらわずに使っていることだ。本来は病気がないかを調べたり、持ち物検査をしたりする意味であることは誰でもが知っていること。ところが一般的用語とはならないから隠語であるものを、「身体検査」とカギ括弧をつけてはいるものの、当たり前に使用する言語感覚がどうも気になる。言葉に対するセンスといってもいい。たとえば「マル暴」(暴力団)と新聞が書くだろうか。そんなことを思うのも、米原万里さんの『終生ヒトのオスは飼わず』(文藝春秋)を読んだからだった。そこに言葉の問題ばかりが書かれているわけではない。

106  飼っていた犬や猫との愛くるしい生活、それを通した人間観察などを読んでいるとき、研ぎ澄まされた万里さんの言語(現実)感覚に感心したからである。何よりもご両親である米原昶、美智子さん、妹のユリさんとの温かい家庭の様子がすばらしい。人間的豊かさが読んでいる者にも実感として伝わってくるのだ。とくに物質的豊かさを振り切って共産党のために16年間も「地下生活」を送った米原昶さんの、しかし楽天的な生き方がすごい。時代は戦前のことである。どこかの穴蔵で暮らしていたと子供心に思っていたという「地下生活」という言葉。やはり隠語は文学や私的文章では使われても、なかなか一般的表現とはならないのではないか。「身体検査」という言葉の意味、内容については上杉隆さんが説明してくれている。新宿で取材を受けて池袋「おもろ」。選挙の応援で奮闘してくれたKさんが息子さんと来店していた。常連共々泡盛を飲む。やがて長男が合流。まさにほろ酔いの一夜。