有田芳生の『酔醒漫録』

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安倍首相「退陣」発言の真意

2007-09-10 09:28:35 | 政談

 9月9日(日)安倍首相がシドニーの記者会見でテロ特措法の延長ができなければ「退陣する」と語った。正確にいえば「私の職責にしがみつくということはない」という発言が「退陣」と報じられたのだ。先日ある自民党国会議員にこの問題について話を聞いた。こんな見方だった。安倍首相は民主党の小沢代表に会談を申し入れる。しかし参院選挙で勝った小沢代表は妥協をしないだろう。そして11月にはインド洋に派遣されていた海上自衛隊が日本に戻る。アメリカ政府は不快感を示し、その責任はすべて民主党に向かうというのだ。そこで安倍首相は退陣するのか。自民党のなかでも退陣論と解散論が入り乱れている。批判記事を書いた記者に対して感情的に対処してきたように、いっきょに解散するかも知れないことを恐れる議員が自民党のなかでも少なくない。たとえば山本一太議員なども「年内解散」と読む。政治の世界では理屈はあとからついてくる。テロ特措法が延長できなかったとき、はたして安倍首相は理性的に対処できるだろうか。これまでの首相なら「国民の信を問うこともありうる」と語ることで、選挙準備の整っていない野党への圧力とするはずだ。私には安倍首相が情況に対応した政治言語を語れなくなっているとしか見えない。

 選挙の後遺症で左肩がまだ完璧ではない。久しぶりに成増へ。大橋屋でもやしそばを注文。コクボ治療院でマッサージ、鍼、温灸をじっくり。あら不思議、ほとんど痛みが消えてしまった。喫茶店で読書。レジで珈琲代290円を出すとき、何だか複雑な思いがよぎった。NHKスペシャル取材班の『ワーキングプア 日本を蝕む病』(ポプラ社)を読んでいたからだ。働きたくとも仕事のない若者たちが増えている。駅のごみ箱などから汚れていない週刊誌を集めて業者に販売する若者は、一日の収入が400円。そんな実体をルポした貴重な成果が本書だ。全給与所得者の5人に1人は年収200万円以下(国税庁「民間給与実態調査結果」2005年)、15歳から34歳までの非正規雇用者は27・2パーセント(総務省統計局「労働力調査結果」2006年)で毎年増加している。この問題を見る基本的視点は憲法第25条の「生存権」だという結論に同意。「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するものが生活保護である。懸命に働いていてもその水準に達しない「ワーキングプア」の現実。この現状を打開することもまた私たちの政策的課題だ。