自宅からワイナリーまで電車を通す/ヴィラデストへの道

はるかに仰ぎ見る丘の上のワイナリーに心の中で鉄道敷設をする話

おばあさんの涙を集めたワイン

2007-03-14 00:47:41 | 出会ったワイン&ワイナリー

 前述のように、私は現在「おばあさんのワイン」を看病しています。ワインのおばあさん。つまり押入れで見つけた日本の夏を18回すごしたムートン・カデ白1989です。「酢」でした。限りなくほの弱く静かに寝ついているおばあさんのワイン。わたしは面倒をみることに決めているのです。

 前にずっとまえに読んだ事があります。ワインがすっぱくなっている、酸化している、と言ったら友人のフランス人が「いや、これはこれで味わいがあるんだ」と、そういってしみじみ飲んでいたと。ああこれはワインに対する年期が違うわい、とその人は思ったと。開高健氏だったかなあ?

 それで、その時「せんべいファン」の私は「ああ!」と思い当たって、そうそうせんべいの食べたい夜にせんべいがない!ことがあって、その時ハコの下からゴキンコキンにしっけたセンベイが発見された時、ありがたくてもう木材くらいに湿気たせんべいを味わって食った、という事があって、それと同じかな?違うか?同じかな?

 私もフランス人がワインについて「入ってる年季」が私も「せんべいには入っている堂々と」だから同じですきっと。

 だからその人ならきっとこのワインも看取る、じゃなくって見守る、でしょう。寝付いて「水がのみたいわいー」「背中さすってくりゃー」ぐらいしか言わないワイン。全国のおばあさんの涙を集めたようなワインです。

 そういうわけで見守っています。昨日に比べ気のせいか味わいがあるような気もします。

画像はやさしい色の布団で静かに寝ているおばあさんワイン。いくらか見えている胸元の5本の矢・ロスチャイルドマークが胸に痛いです。
コメント
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