ウラジミール・アシュケナージのショパンピアノ独奏曲全集を聞いている。
ニキタ・マガロフの独奏曲全集が力まないで深さを聞かせる渋い演奏だったので
最近ショパンづいている。
このピアニストはワルシャワのショパンコンクールで2位だった実績もあり、実力派である。
アシュケナージは技巧に冴えがあり、ショパン演奏のスタンダードと言える。
日本人がショパンと聞いて思い浮かべる音はアシュケナージが弾いているショパンである。
アシュケナージの演奏はひじょうに精度が高い。
アシュケナージは安心感のある演奏家だと評されている。
ショパン自身が考えていたより強く弾き過ぎという意見もあるがこれも解釈である。
アシュケナージが放つマグナム弾は聞き手の的を外さない。
前奏曲やバラードは力強く弾くが、ノクターンやエチュードでは控えめに弾く。
この弾き分けの妙がツボにはまっている。
聞き手を飽きさせない工夫が随所に盛られている。
癖のない演奏だが、微妙に装飾やアクセントを加えて弾く。
ニキタ・マガロフの老境の渋い指使いが素晴らしいが、
アシュケナージの技巧に裏打ちされた禁欲的な演奏の微細な揺れも悪くない。
ポロネーズはスケール感のある気宇壮大な演奏を聞かせてくれる。
躍動感のあるポロネーズを堪能できる。アシュケナージは頼れる引率者だ。
安定感はあるが決して通俗的な音に走らないところがよい。
質量ともに聴き応えのある独奏曲全集だと言える。
ニキタ・マガロフとウラジミール・アシュケナージの
独奏曲全集で秋の憂愁を乗り切るのだ。
のしかかる秋の愁いを追い払い独奏曲でここは乗り切る