古代史の本 10 松本清張『火の路(みち) 上・下』文春文庫、原著1973~1974年
危険ドラッグに関連して思い出したのが、松本清張さんの名作・古代推理小説の「火の路」。
T大学史学科助手の高須通仔を主人公に、古代史から引退した海津信六を副主人公に、明日香の石像物をめぐって通子が謎を追う。
古代史推理の部分は、おもしろくてためになる(少し古いが)が、新聞連載でよくこんなむずかしいものを毎日連載したと思う。なんせほとんど「研究ノート」が延々と続く「論文」部分があるのだ。
物語は、カメラマン板根要介と雑誌副編集長福原が明日香の酒船石の写真を撮っているところから始まる。そこに高須通子が現われるというシーンから始まる。
古代歴史学界・骨董界・盗掘界・偽造界のどろどろした暗い背景の前を、高須通子がひたすら歩き続けるような物語です。
酒船石・益田岩船・猿石・亀石・二面石‥
そして海津がつぶやいた「アサシン」という言葉から、高須は古代ゾロアスター教とペルシア文明の渡来を考察する。
著者は斉明天皇が異質であり、ゾロアスター教=拝火教のペルシア文化と、ドラッグを使った幻人の文化の流入を述べています。
おもしろい本です。検討の余地があると思います。