日本古代史の本 藤田友治・伊ヶ崎淑彦・いき一郎/編著『ゼロからの 古代史事典』ミネルヴァ書房、2012年5月30日初版第1刷、405ページ、定価本体3800円+消費税
「事典」と言っても小項目主義の「事典」ではなく、大項目主義の日本古代史全体を客観的に見ようとする数少ない貴重な事典です。「客観的に」というのは「九州王朝説」も含めて検討しようとする態度が、貴重だと思います。
以下、目次を掲げれば、その内容がよくわかります。それぞれの内容も、通常言及されない学説も読むことができて、広く眼を配った学習には最適だと思います。
「第1部 大陸文明との交流」は「1 列島の旧石器時代、2 縄文文化、3 弥生時代、4 徐福集団渡来、5 銅鐸、6 道教の列島渡来、7 邪馬い(壱)国、8 銅鏡、9 三角縁神獣鏡、10 古墳時代、11 前方後円墳、12 天日槍(天之日矛)、13 騎馬民族征服説、14 渡来人、15 朝鮮式山城と神籠石山城、16 好太王(っ広開土王)碑、17 金石文」、「第Ⅱ部 「国際化」する文化」は「18 ヤマト王権、19 多元史観と「九州王朝」節、20 倭の五王、21 扶桑国、22 豪族と氏姓制、23 磐井戦争(磐井の乱)、24 日本への仏教伝来」、「第Ⅲ部 倭から日本へ」は「25 厩戸太子(聖徳太子)、26 遣隋使と遣唐使、27 「大化の改新」(乙巳の変・後)、28 白村江の戦い、29 壬申の乱、30 古代における聖と賤、31 考古学と化学測定、32 建築の変遷、33 都市の変遷、34 『万葉集』(『萬葉集』)、35 内外史籍、36 君が代と和歌(倭歌)、37 三種の神器、38 藤原京政権」。
附録として「倭・韓・中五地域対照略年表」「人名・事項・資料名索引」がついていて見易いです。
「まえがき」に「高校生のためにルビを多くつけましたが、受験する人は「定説」を覚えて答えてください。」とあるのが愛嬌で、皮肉が効いています。
細かい内容は、いろんな機会に紹介していきたいと思いますが、「1 列島の旧石器時代」について言えば、基本的な内容は正しいと思いますが、発覚以前に「前期旧石器」のインチキさを石器そのものの研究から批判し続けた希有の存在である「竹岡俊樹」さんなどの名前と批判は簡潔に出ていますが、竹岡さんの著書が参考文献としてあげられていないのは不足ですね。つまり「旧石器」の判定基準とは何か、ということは竹岡さんの本を読まないとわからないと思います。
それと「出雲神話」とか、「『古事記』」とか「『日本書紀』」とか「記紀神話」とかいう項目は欲しいですね。