馬糞風リターンズ

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利根の川風袂に入れて・・・・天保水滸伝の世界4・座頭市聞き書き

2012年09月30日 | 雑学
座頭市は実在した、と言う人がいます。果して座頭市は実在したのか・・・・・。
お茶の間のヒーロー誕生には様々な経緯があります。当ブログでも紹介した「伊那の勘太郎」などは全くの創作上の人物です。林不忘の丹下左膳、大仏次郎の鞍馬天狗、また勝新太郎のライバル市川雷蔵の当り役・眠狂四郎(柴田錬三郎)などなど・・・・は、作者の全くの創作した人物です。吉川英治の宮本武蔵などは、実在の人物ですが、吉川英治が、我が子として産み育てた虚とも実とも曰く言い難いヒーローもいます。実在の人物ですがその内容が全く荒唐無稽のヒーローもいます。暴れん坊将軍吉宗は江戸幕府第8代将軍、水戸黄門は水戸徳川家当主と実在の人物ですが、お茶の間の彼等の活躍は全くのフィクションです。一方、池波正太郎の鬼平犯科帳の長谷川平蔵は、京都西町奉行や火付盗賊改役などを務めた実在の人物をモデルとして、その事績の幾つかを踏まえた人物像が描かれています。
 司馬遼太郎のようにできるだけ史実に忠実に人物を作り上げられたヒーローもあります。「竜馬がゆく」の坂本竜馬などはその典型でしょうが、飽く迄も「竜馬がゆく」と言う小説の中の人物であり、司馬遼太郎の世界観の中での「竜馬像」です。昨今、「平成の竜馬」などや「維新○○」など司馬遼太郎が作り出した「竜馬像」や「維新の評価」が独り歩きしています。幾ら史実に忠実であろうとしても、小説はあくまで小説であり、描き出そうとする意図がリアル或いはツルー・ヒストリーではありません。安直にテレビドラマで見聞きした程度の歴史認識で、「平成の竜馬」や「維新○○」と空騒ぎしている政治家擬きを見ていると、その軽薄さを思わざるを得ません。

 座頭市の作者・子母沢寛は、「従来の歴史書のかたちに捉われず、実際の体験者の談話による生きた歴史書=ルポルタージュ文学」を確立した作家です。彼の代表作「新選組始末記」「新選組遺聞」「新選組物語」新選組三部作は、今日の新撰組研究に多大な功績をあげ、多くの新撰組に関する作品は、この子母沢寛の三部作の綿密な調査の賜物と言われています。
 子母沢寛は「侠客の話、古来里人の胸から胸に残されて、伝説口碑に聞くべきものは多いけれども、さてこれを文書に求めて虚実を確かめんとすれば、その証拠の余りに少ないのに困らされる」と言いながらも、足で取材し、目や耳で確かめる作業から多くの名作を生み出しました。
 座頭市は、子母沢寛が知人から「飯岡に行かないか」と誘われ「天保水滸伝の飯岡助五郎で有名な所なので、ちょっと興味があった」ので出向き取材中、宿で食事中に、宿のおやじさんから「市さんという目の見えない変わった人がいましてね」という話から座頭市が誕生したそうです。

 また、会津若松に座頭市の墓なるものがあるそうです。地元には下総から追われた座頭市が会津に住み着き余生を送ったという座頭市伝説があるそうです。そして「座頭市」は二人いた、などの面白い言い伝えもあるようですが、下総の旅から少し離れるので今回は見送りとします。

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