四季の歌と暮らす

 年齢ごとに「一度っきり」の四季と、
旬(しゅん)のヨコハマを味わう「くりごとの集」です。

文人の俳句

2012-11-10 05:40:44 | 俳句

 中公新書『文人たちの句境』関森勝夫著を読んでいます。副題が「漱石・龍之介から万太郎まで」とあり好著です。俳句専業でなく手すさびの作品ですが、さすがに文芸に秀でた方々の句は教養に富、いやらしさがなく素直な好句が多い。明治は遠くなりにけりの文豪たちですが、恋心は万古不易です。真っ先に読んだのは「女人賛歌」、恋のうたです。

 ☆黒塀にあたるや妹が雪礫  夏目漱石(慶応3年生)

   私が一番好きな句で手帳に書きうつしました。あの厳粛なお顔の文豪に、こんな青春、純情があったのですね。ふたりの仲がうらやましい限りです。黒塀が 懐かしいなぁ。和服の美人に「このひとわぁ」と雪を投げつけてもらいたいものです。わが明治生まれの父ははにもこのような恋があったでしょう。

 

☆萩の露こぼさじと折るをんなかな  幸田露伴(慶応3年生)

   どんな和服の、しとやかなお方ならんと想像が膨らみます。「をんな」の表記、音がなまめいて日本人に生まれて良かったと思います。

 

☆女湯の声の覚えや春の宵   会津八一(明治14年生)

   生ぬるい春風に女湯の声、色っぽい句ですね。いろんな声の中からなじみの女に気付いたのです。

 

☆明眸の見るもの沖の遠花火   芥川龍之介(明治25年生)

   花火より景色よりも、横にいる浴衣姿の美女をいとおしく眺めているんです。


 ☆雪ふるといひしばかりの人しづか   室生犀星(明治22年生)

    いいですねー。炬燵のふたりでしょうか。

☆ほほゑめばゑくぼこぼるる暖炉かな  室生犀星

   洋間の暖炉でのふたりきり。このしあわせもん、勝手にしろと言いたくなる気配です。


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