古代ギリシャ文化を学んで、一番、印象的だったのは、古代ギリシャ語で「余暇」「ヒマ」を意味する「スコレー(σχολή:スコレー:/skʰo.lɛ̌ː/)」です。
古代ギリシャは「余暇」や「ヒマ」があり、その余裕のある時間で「哲学(φιλοσοφία: フィロソフィア:/pʰi.lo.so.pʰí.aː/)」が産まれました。
ギリシャ語で「余暇(ヒマ)」を意味する「スコレー(σχολή)」が
ラテン語で「学校」を意味する「スコーラ(schola:/ˈskʰo.la/)」となり、
ラテン語で「学校」を意味する「スコーラ(schola:/ˈskʰo.la/)」となり、
イタリア語の「学校」を意味する「スクォーラ(scuola: /ˈskwɔ.la/)」、
英語の「スクール(school)」、
フランス語の「エコール(école)」、
ドイツ語の「シェーレ(Schule)」の語源となりました。
「スコラ哲学(Scholastic philosophy)」とは、「学校の哲学」と言う意味です。
古代ギリシャでは、学校・訓練場として「ギュムナシオン(γυμνάσιον: /ɡym.ná.si.on/)」がありました。古代ギリシャでは「ギュムノス(γυμνός=ラテン語のgymnos)」とは、「ハダカの」という意味です。
「ギュムナシオン」は、レスリングやボクシングなどをハダカで行う軍事訓練施設でしたが、のちに、知性をトレーニングする場となりました。ギリシャでは「ハダカ」は神の似姿であり、むしろ男性の肉体美を賞賛する場でした。「ギュムナシオン」で男性たちはハダカでレスリングを行い、終わったら、からだに高価で貴重なオリーブオイルや香油を塗って、「ストリギル(strigil)」でこすってマッサージして体の手入れをし、浴場に入ったり、敷地を散歩しながら哲学や政治を議論しました。この余暇が「スコレー(σχολή)」です。
代表的な「ギュムナシオン」は、
ソクラテスとプラトンの「アカデメイア(Ἀκαδημεια)」と
アリストテレスの「リュケイオン(Λύκειον= Lykeion)」です。
「アカデメイア」は英語の「 アカデミー (Academy)」の語源となり、
「リュケイオン(Lykeion)」はフランス語の高等教育施設「リセ(Lycée)」の語源となりました。
古代ギリシャの教育訓練施設「ギュムナシオン(gymnásion)」は、ドイツ語の「学校(ギムナジウム:Gymnasium)」の語源となりました。
そして、古代ギリシャの「ギュムナシオン(gymnásion)」でやっていたことが、ドイツ語の「ギュムナスティーク(Gymnastik)」です。ドイツ語の「ギュムナスティーク(Gymnastik=ギリシャ語のγυμναστική:ギムナスティキ)」とは、もともとギリシャ語であり、ヒポクラテス以来の言葉で「運動だけでなく、塗油・入浴・マッサージなど身体の手入れ」を意味する言葉でした。
ドイツで19世紀初めに「体育の父、ヨハン・クリストフ・グーツムーツ(Johann Christoph Friedrich GutsMuths:1759-1839)」が「身体教育=略して体育(ビルトゥングス・デス・ケルパァ:Bildung des Körpers)」、「ドイツ体操(英語のジムナスティックス:gymnastics=ドイツ語のギュムナスティーク:Gymnastik)」を提案しました。これは「平均台・水平はしご・ボールや棍棒、輪などの軽手具が使用される学校で行われる体育運動」です。オリンピックの「体操競技」はジムナスティックスです。
つまり、古代ギリシャのハダカのレスリング教育訓練施設「ギュムナシオン(gymnásion)」から、西欧の高等教育制度や体育、体操ジムナスティックス、マッサージが生まれたのです。
ところが現在は、高等教育に関わるヒトが、「アカデミー」の語源も知らず、「体育」の語源も知らず、スポーツに関わるヒトが「ジム」の語源も知らないのが現状です。
もちろん、英語のschoolの語源が、古代ギリシャ語の「余暇」「レジャー」「ヒマ」を意味する「スコレー(σχολή)であることも知りません。
古代ギリシャの「ギュムナシオン(gymnásion)」では、対話によって、教育をしました。日本で言ったら、居酒屋トークです。対話があってこそ、人間は人間を学ぶことが出来ます。古代ギリシャ語「スコレー」は、人間の知の本質を表したコトバだと思いました。