1本のわらしべ

骨肉腫と闘う子供とその家族とともに

多目的室

2009-11-11 10:38:40 | Weblog
昨夜遅く、市橋容疑者が捕まった。
大阪から東京まで新幹線で護送される。
新幹線の多目的室に乗っているということで、テレビのニュースで
多目的室が映っていた。

三年前の10月20日、岡本真夜さんのコンサートに行くために、新幹線に乗る。
朝の10時から夜中の11時まで車いすに乗りっぱなしという強行軍。
この強行軍を成功させるために、細心の注意を払った。
JRに電話をして事情を話すと、多目的室のことを教えてくれた。
新幹線の多目的室は本来、身体障害者用だが空いていれば、オムツ替えや授乳、具合の悪くなった方の休息等に利用できる。
しかし、中の広さに不安があった。娘の車いすは水平に近く、おまけに足がはみ出ているので2m近い空間が必要になる。入口の幅も必要だ。
ネットで調べても、その広さはわからないし、電話で聞いても正確な長さまではわからなかったので、不安は残ったままだった。
当日、改札口に行くと、係りの方が出てきてプラットホームまで車いすを押して案内してくれた。その動作はとても丁寧で、娘が揺れない様に細心の注意を払ってくれていた。
新幹線に乗り込むと、不安は的中した。
間口が狭い。おまけに部屋は畳1畳程度で、まっすぐには入れない。何度も切り返して何とか車いすを押し込み、ドアを閉めた。
この時期、人ごみに出ることは娘にとっては自殺行為だった。
度重なる抗がん剤治療で、白血球の数が思うように増えなくなっていたので
医師からも十分気をつけるように念を押されていた。

東京駅に着くと、ドアの前に駅員さんが待機してくれていた。
やはり丁寧に車いすを押して誘導してくれた。
コンサートが行われる東京国際フォーラムまでの移動は歩きだった。
京葉線に向かう通路を10分くらい歩く。向こうからディズニーランドのお土産を抱えて歩いてくる人たちとすれ違う。「今度はディズニーランドに行こうね。」と話しながら歩いていた。
JRの出口まで来ると、駅員さんが「僕は、ここまでしかご案内できませんが、国際フォーラムはすぐそこです。」と教えてくれた。

駅員さん、ありがとう。


厚い壁

2009-11-07 18:16:27 | Weblog
昨日、娘が入院していた病院へ行ってきた。

いままで行きたくても行けなかった場所...
悲しい記憶しかない場所...

いままで何度か病院の入口まで行ったけれど、そこから足を踏み入れることはなかった。そこには厚い壁があった。
どうして、そんな思いをしてまで行く必要があるのか。

娘が亡くなった後、入院中お世話になった方が訪ねて来てくれた。
「お掃除のおばさんが、病室を掃除していると、鈴の音が聞こえた。そこに、あかねちゃんの気配を感じたらしいよ」と。
私は、死後の世界も神の存在も信じてはいない。でも、その話は私の心に引っ掛かっていた。
「身体は連れて帰ったけど、魂を置き忘れてきたのでは」その思いは3年経っても消えなかった。ちょうど、幻の島にあの子を探したように。
そう思って病院に向かうのだけど、結局途中で引き返してしまう。

しかし、昨日は違った。
娘と同じ病を持つ知人に会うために出かけた。
前日まで、私の中では、彼女を見舞うこととその病院に行くこととは全く結びついていなかった。当日になって、その病院に行くことを実感し、焦った。
ちゃんと病棟までたどり着けるだろうか?彼女に不快な思いをさせないだろうか?ドキドキしながら階段を昇った。
詰所に当時お世話になった看護婦さんが二人みえて、思わず涙があふれてしまったその時、彼女が病室から迎えに来てくれた。
彼女とは初対面だったが、そんな気がしない。
明るい笑顔で迎えてくれた。その笑顔を見て、私の不安は消えた。

妊婦だった看護婦さんは、2歳児の母になっていた。
そこには時の流れがあり、娘の影はなかった。

厚い壁は、もう消えた。



修学旅行

2009-11-06 06:40:44 | Weblog
今朝、小学生の息子が修学旅行に発った。
彼らの修学旅行はインフルエンザのため1か月延期になっていた。前回の出発日は台風の直撃というダメ押しもあった。
朝起きて、お弁当を作って、新幹線の駅まで送って行った。
帰りの車の中で「これで又ひとつ親の仕事が終わった。」と思うと訳のわからない涙が出てきた。
9年前と5年前、同じように二人の娘たちを送って行った。
下の娘は、その年の3月まで三重県の小学校に通っていたが引っ越したために4月からは今の小学校に移った。
転校の時、「仲良し4人組で修学旅行に行きたかったなぁ」と言っていた。
5年前の5月、娘は京都・奈良に出発した。
次の日、帰ってきて発した第一声。
「奈良の若草山で、はぁちゃん達に会った~
なんという偶然。

やっぱり、あんたは運がいい!