あかねが亡くなる一日前にアカネが生まれた。
2月9日お昼前。先生の回診があった。
「息も苦しそうですし、痛みもあります。もう眠らせてあげましょう。」
肺は腫瘍でいっぱいになっていた。これで息苦しさを感じなくなる。
その時、アカネのことで先生からお話があった。
「あかねちゃんの後にも、同じ病気で苦しむ子供たちがいます。その子たちのために、あかねちゃんの体の一部をつかわせていただきたい。」
あかねの胸には、大きな瘤ができていた。ちょうどウルトラマンの胸のランプのようだった。
そこの腫瘍細胞を採取して、培養するという話。
難しい処理らしく、生研の先生は3日3晩寝ずの番で見守るらしい。
処置室から戻ったあかねの胸には、白いガーゼが被せてあった。ほとんど出血もなかったらしい。
あかねが眠り続ける薄暗い部屋で、娘の顔を眺めていた。それまでの苦しそうな表情が消えていた。
すやすやと眠る娘。ほっとすると同時に寂しさがこみ上げてきた。