ひとつの記憶から、別の記憶たちが芋づるを手繰るように蘇る。
2年前のお正月。
大晦日から3日まで外泊許可をとって、娘が帰ってきた。
その頃には痛み止めのロキソニンが効かなくなっていたので、
モルヒネの錠剤が処方された。
病院に戻る日の夕方。福祉タクシーのおじさんが迎えにきてくれた。
大人4人がかりで、バスタオルと足を持って「せーのーで」と車椅子に乗せる。
それから、やはり4人がかりで階段を降りる。
ところが、その日はそうはいかなかった。
車椅子に移った娘が「お尻が痛い。」と言いだした。褥瘡(床ずれ)がひどく痛むらしい。この様子では病院までもたないだろう。
でも褥瘡の処置は明日に延ばせない。モルヒネも外泊日数分しか出ていない。今夜には薬が切れる。
仕方がないのでナースセンターに電話をかけると「動かせないようでしたら褥瘡の処置の道具とモルヒネを取りに来てください。」という返事だったので、急いで主人が病院へ向かった。
福祉タクシーのおじさんには謝って帰っていただくことにした。今まで何度もドタキャンしたが、おじさんはいつも笑って「また明日ね。」と帰っていかれる。
主人が戻ってから褥瘡の消毒をした。
私は病院で先生が処置をされるのを見ているので、その通りにやってみる。
体を90度横に起こして、みんなで支える。起こしている間、本人はかなり辛いので手早くやらなければならない。器材、ガーゼ、ラップ等を前もって準備しておく。それまで娘の褥瘡を見た事がなかった家族は息を呑んだ。直径5センチはあった。クレーターのように肉がえぐれていた。そこに黒いものが見える。移植した蝶骨を止めたボルトの頭だった。
次の日、娘は病院に向かった。
2年前のお正月。
大晦日から3日まで外泊許可をとって、娘が帰ってきた。
その頃には痛み止めのロキソニンが効かなくなっていたので、
モルヒネの錠剤が処方された。
病院に戻る日の夕方。福祉タクシーのおじさんが迎えにきてくれた。
大人4人がかりで、バスタオルと足を持って「せーのーで」と車椅子に乗せる。
それから、やはり4人がかりで階段を降りる。
ところが、その日はそうはいかなかった。
車椅子に移った娘が「お尻が痛い。」と言いだした。褥瘡(床ずれ)がひどく痛むらしい。この様子では病院までもたないだろう。
でも褥瘡の処置は明日に延ばせない。モルヒネも外泊日数分しか出ていない。今夜には薬が切れる。
仕方がないのでナースセンターに電話をかけると「動かせないようでしたら褥瘡の処置の道具とモルヒネを取りに来てください。」という返事だったので、急いで主人が病院へ向かった。
福祉タクシーのおじさんには謝って帰っていただくことにした。今まで何度もドタキャンしたが、おじさんはいつも笑って「また明日ね。」と帰っていかれる。
主人が戻ってから褥瘡の消毒をした。
私は病院で先生が処置をされるのを見ているので、その通りにやってみる。
体を90度横に起こして、みんなで支える。起こしている間、本人はかなり辛いので手早くやらなければならない。器材、ガーゼ、ラップ等を前もって準備しておく。それまで娘の褥瘡を見た事がなかった家族は息を呑んだ。直径5センチはあった。クレーターのように肉がえぐれていた。そこに黒いものが見える。移植した蝶骨を止めたボルトの頭だった。
次の日、娘は病院に向かった。
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