その、2月10日は土曜日。
昨夜は、今週始めから、病院に泊まっていた私に代わって主人が付き添っていた。
夜中に、一度、容態が悪くなったが、持ち直したので、朝まで待って、家に連絡があった。
子供たちを起こして、病院へ急いだ。
あかねの容態は落ち着いているようで、スヤスヤと眠っていた。
目はうっすらと開き、角膜が乾いて捲れあがっている。
「大変。起きたときに、目が見えなくなっちゃう。」そんな心配はいらないのに、ガーゼに水を浸みこませて、まぶたの上に載せる。
その後も、あかねの容態は落ち着いていて「ひょっとしたら先生の診立て違いで、あと2、3日はもつんじゃないかしら。」と淡い期待を抱いていた。
病院には、家族が泊まれる部屋があるというので、その部屋を確認するために病室を離れた。
5分もしないうちに友人が息を切らして走ってきた。
顔を一目見て、何が起こっているかすぐにわかった。
私たちが病室に付いた時には、あかねは、また眠っていた。
目を「カッ!」と見開いて、不安そうな表情を見せていたそうだ。
姉と弟の目には、その表情が今も焼き付いている。
夜9時ころ、私がトイレで手を洗っていると、また、友人が呼びに来た。
急いで戻ると、看護士さんが「あかねちゃん、あかねちゃん」と呼びかけていた。
看護士さんが、「あかねちゃん」と呼びかけると、あかねは、はっきりとした声で「はい」と答えたそうだ。
そのあと、あかねの呼吸は止まった。
あれから丸9年がたった。今日から10年目に入る。