今年の「小浜の旅」は、全般に曇り空で風が強く、天候には恵まれなかった。
幻の島に行けるかどうか心配だった。風が強いと船が出ないから。
もともと、この時期は風が強く、波が荒い。
あかねが「幻の島」を訪れた時も、波が荒く、船が出せるギリギリの天候だった。
波が船底を叩き、ゴツンゴツンと音をたてていた。
水しぶきではなく、バケツをひっくり返したような水が船内に飛び込んでくる。
スタッフの方たちが自分を盾にして、娘が濡れることを防いでくれた。
島に着くと、風が止み、太陽が顔を出した。
光が射すと、海の色が変わり、「幻の島」が白く輝き始める。
幸運なことに、今年も「幻の島」を訪れることができた。
けれども「幻の島」は、あのときの「幻の島」ではなかった。
おととしの台風で島の形が変わったため、海中の砂が島の一カ所にせき止められ、盛り上がっていた。
おそらく、その場所は満潮時も海中に沈まなくなったのだろう。うっすらと緑色を帯びている。
見渡す限り真っ白に輝く「幻の島」は、そこにはなかった。
潮流が変わったせいか、あかねの写真に飾るための貝殻も、サンゴも少ない。
おまけに、島に埋めるために持ってきた娘の骨も、ホテルの部屋に忘れてきた。
「幻の島」でも時は経っていた
私たちは、あかねが亡くなってから経ってしまった年月を思い知らされた 。
そして私たちは島を去った。