赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

②緑の日本列島の隠された日本の財産が新たな文明を開く

2023-12-07 00:00:00 | 政治見解



②緑の日本列島の隠された日本の財産が新たな文明を開く
:231207情報


昨日からの続きです、「石油を超える資源」としていま注目を集めているのが「木材」です。日本の木材は、宝の持ち腐れ状態にあると言われていますが、これをどう解決したらいいのか、伊勢雅臣氏の解説を、許可を得て引用し、日本のお宝を有効に活用する方法を考えてみたいと思います、


■5.「隠された日本の財産」

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木は物やありません。生きものです。人間もまた生きものですな。木も人も自然の分身ですがな。この物いわぬ木とよう話し合って、生命ある建物にかえてやるのが大工の仕事ですわ。木の命と人間の命の合作が本当の建築でっせ。[西岡]
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西岡棟梁のこの言葉が復活する道が、「愛工房」によって開かれようとしている。特に日本全土に生えている樹木の約四分の一は杉だ。伊藤氏は言う。

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日本の風土に一番適していたのが杉なんです。私たち日本人の先祖は、一番身近な杉の手入れをして、育て、共生してきたんです。[船瀬、p103]
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そういえば、各地に杉のご神木が祀られている。杉の学名は「クリプトメリア・ジャポニカ」、「隠された日本の財産」という意味である。ご先祖様たちが大切にしてきた宝物を、我々は山に置き忘れてきた。その宝を今こそ大切に活用しなければならない。

[船瀬]の著者は「緑の郷」構想を提唱している。それは全国各地の山村に「愛工房」を設置し、その近隣に木材加工工場、家具工場、建具工場などを併設する。山村が木材の供給地として復活すれば、これらの工場をその近くに建てることが経済的になる。

これにより、山村にも仕事が生まれ、過疎地が再生する。


■6.山主から地域工務店までが結束する「森林再生プラットフォーム」

「緑の郷」構想を実現するにも、川上の山主から川下の住宅建築を担当する工務店を繋ぐ、サプライチェーンを効率良く運営できるシステムが不可欠だ。現状では、各段階がバラバラにマージンをとるため、しわ寄せが山主に行って、直径30センチ、長さ4メートルの丸太を数十年かけて育てても3600円しか得られない。[a]

a. JOG(1159) 「三方悪し」の現代林業: 国内の森林を放置・荒廃させ、他国の森林を収奪し、輸入代金と補助金で国富を浪費させている現代林業。

この状態をなんとかしようと立ち上がったのが、伊佐ホームズ株式会社の伊佐裕・社長だ[b]。伊佐社長は、まず今の価格では山林経営はとうてい成り立たないため、現在の市場価格よりも5割高い価格で木材を購入することとした。

b. JOG(681) 和の家、和の心:日本の伝統家屋には、社会や自然との和を創り出す智慧が込められている。

そして、サプライチェーン全体を見直して、各段階でのムダを無くし、その木材価格でも工務店のビジネスが成り立つように工夫した。そのために伊佐社長は「森林再生プラットフォーム」という仕組みを考え出し、志を同じくする地域工務店などに呼びかけ、その運営を担う会社を設立した[森林パートナーズ]。

伊佐社長はその狙いをこう語る。
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例えば、工務店が三十社ほど集まれば、施工実績から全体で年間千軒ぐらいの家が建つという見通しができます。そうすると、木材需要は年間二万立方メートル規模で発生することになる。もちろん、年によって多少の変動はあるだろうけれども、安定的に需要が生まれるわけですから、川上の林業家はいつ間伐しようとか、いつ作業道を付けようという計画を立てることができます。

また、川中の製材所・プレカットエ場も、工務店からの仕事が安定的に入ってくるわけですから、交渉や営業にかかっていた無駄なコストは要らなくなるし、繁忙・閑散期を見越して適切な形で工場を動かして行くことができる。

要するに、「三方よし」ではないけれども、誰か一人が得するのではなく、全体で価値を共有して無駄を省き、利益を分け合う。それができるようになるわけです。[伊佐]
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「緑の郷」にこういう仕組みが導入されれば、「現場に納入する期日も守られない」という工務店の不満も解消するだろう。「ちゃんと乾燥させてくれと製材所に言っても、全然やってくれない」という問題も「愛工房」によって解決する。

「愛工房」という技術的ブレークスルーと「森林再生プラットフォーム」による事業システム革新が組み合わされば、日本林業の再生を切り拓く鍵となるだろう。


■7.セルロースナノファイバーで我が国は資源大国に

木のいのちをさらに活用する画期的な技術革新が生まれようとしている。紙や綿花は植物の繊維をとりだして作られるが、同様に、植物繊維の主成分であるセルロースを1ミリの百万分の一のレベルで取り出した材料がセルロースナノファイバー(CNF)である。

CNFは樹木の強さを引き継いで、鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強度をもつ。自動車のドアなどの車体材料に用いれば、2割程度軽量化できる可能性がある。また歯車や軸受けなども試作されている。建設も、CNFの構造材で骨格を作り、壁や床は愛工房で乾燥させた生きた板材、ガラスはCNFによる透明な代替材料を使えば、森林由来の材料で自然と人間に優しい建物ができる。

CNFは、プラスチックの代替材料としても使える。

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森林の2/3を占めるスギやヒノキなどの人工林において木材の蓄積量が毎年7,500万立米増加している。木材1立米の重量を400kgとすると、その半分はCNFなので、人工林で毎年1,500万トンのCNFが蓄積していることになる。それは我が国における年間プラスチック消費量の約1.5倍の量に匹敵する。[アグリバイオ、p12]
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つまり、現在国内で消費されているプラスチックはすべてCNFに置き換えることも可能なのだ。その原料となる木材パルプは国産原料であり、100円/kg以下という安価で、大量かつ安定的に入手できる。その分の石油輸入も不要となる。

またCNFは従来の紙と同様の廃棄・リサイクルが可能であり、そのための技術や社会インフラがすでに確立している。


■8.「鉄と石油の文明」から「木の文明」へ

我が国は鋼鉄を作るために鉄鉱石を輸入し、各種プラスチック製品を作るために石油を輸入している。CNFの技術革新により、これらの原料輸入を大きく削減できる。エネルギー用途に使う石油輸入も、薪や木片チップなどを用いたバイオマス発電や、小水力発電、潮流発電など、日本の自然を活用したエネルギー利用で減らしていくことができる。[c,d]

c. JOG(1142) 小水力発電 ~「和の国」のエネルギー: 小水力発電こそ、日本列島の自然と調和したエネルギー。

d. JOG(730) 夢と希望のエネルギー立国: 新エネルギー開発の夢と希望を抱いて、様々な人々が努力を続けている。 

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海外の原油や鉄鉱石に依存してきた我が国の産業形態を、林業、製紙産業、高分子化学産業、部素材加工業、
自動車・家電・建築産業が垂直に繋がった自国の持続型資源による21世紀型脱炭素産業形態へと大きく変革できる。[アグリバイオ、p12]
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かつては、家屋や家具、道具の原材料は木材であった。エネルギーも薪や木炭など、山林から得ていた。近代に入って、原材料もエネルギーも輸入品に代替されてしまったために、経済の中心は臨海部に移り、経済的役割を失った山村は過疎化していった。

CNFの技術革新によって、海外から輸入される石油や鉄鉱石を樹木で代替し、山村を再び我が国の経済構造の中心に引き戻すことができる。それによって、人口も臨海から山村に逆流し、現在の行き過ぎた都市の過密化を変えていくこともできる。

森林大国日本は、その「隠された日本の財産」を活用して、新しい「木の文明」を築くことができるのである。


(了)


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