赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

核問題を考える

2023-05-23 00:00:00 | 政治見解



核問題を考える :230522情報

広島G7開幕直前に、被爆者の女性が「核兵器を保有していたウクライナでも戦争が起きた。核兵器は抑止力にならない」と事実誤認したままテレビインタビューに答えていました。世界第三位の核兵器保有国であったウクライナが核兵器を放棄した直後から、ロシアにクリミヤ半島を簒奪され、いまでは東部の領土を掠め取られている現実を理解できていないようです。

また、余談ながら、共同通信社の太田昌克氏は「G7を軍事同盟にしちゃいかん」などと上から目線でものを言っているのを見ましたが、その方向にもっていったのはウクライナ侵略をしたロシアであり、台湾を掠め取ろうとしている中国の脅威、いずれも、核による恫喝を行う国であることは、見て見ぬふりをしているようです。きれいごとを言う人ほど、その背後に、核で恫喝する国が糸を引いていると考える方がいいようです。

残念なことに、日本の場合、唯一の被爆国のため、感情論が先走って冷静に核問題をとらえることができないようです。そこで、冷静な議論のために、問題の本質を静かに見つめる国際政治学者に登場いただき、核問題をどうとらえるべきかをお話いただきたいと思います。



■核の恫喝、効果あり

ウクライナ戦争ではプーチン本人も、その外務大臣も含め、ロシアは核の恫喝を使ってきました。戦争直前には核ミサイルの演習をしていて、さらに戦争が起こったあともプーチンは核を使うことをほのめかしてきて、アメリカやNATO を牽制しました。

これが何を意味するのかというと、核が確実に効いている、核が大きな力になるという有用性を示したということだろうと思います。

実際にアメリカもNATO 諸国もロシアの核の恫喝を恐れてしまいました。

そのため、あからさまにウクライナ戦争に軍事介入するということができなくなっているわけです。実は、アメリカは本来であればウクライナを助けるために軍隊を出す必要がありました。その約束があったのです。

1994 年のブタペスト覚書ではロシアも含め、アメリカ、イギリス、フランス、中国の安保理常任理事国の 5 か国がウクライナが核兵器を放棄する代わりにその安全保障を約束したからです。

しかし、結局はロシアの核を恐れて、アメリカ陣営の国はウクライナに武器は提供しても、一緒に戦うことはないわけです。


■日本を取り巻く核の脅威

日本も同じような状態にかれていると思います。日本の周辺国には日本に敵意を持っていて、実際に核ミサイルを日本に向けている国が少なくとも 3 か国あります。1つはロシア、もう 1つが中国、そして北朝鮮です。

日本は悪意を持つ核保有国に囲まれていると言っても過言ではないのに、その脅威に対する防衛策はたった 1つだけ、核の傘に頼ることだけなのです。
では、核の傘とは何なのでしょうか?

もし東京に核ミサイルが飛んできたら、アメリカが日本の代わりに報復してくれるということです。現在、ロシアと中国は極超音速ミサイルを持っていて、これは音速の5倍から10倍ぐらいのスピードで飛んできます。その場合、現存するミサイル防衛システムでこれを防御することは基本的にはできません。

ですから、そもそも核ミサイルを打たせないようにするには、東京に 1 発でも核ミサイルを撃ち込んだら、必ず北京に同じようにミサイル攻撃するということ以外に方法はないのです。


■実は存在しない核の傘

では、アメリカの場合はどうでしょうか?

アメリカは本土防衛策として24時間体制で世界のあらゆる国の核ミサイルの状況を監視しています。例えばロシアや中国が核ミサイルを発射したときには、軍事衛星によってどこに向けて発射したのかがだいたい分かります。

例えば、ワシントンに向けて撃っていることがわかれば、アメリカ大統領はその場の判断で即座に「撃ち落とせ。反撃せよ」と命令することができます。

では、中国が東京に向けて発射した場合はどうでしょうか。もちろんアメリカは監視をしていますが、残念ながら「撃ち落とせ」という決断は下せません。なぜなら、中国と日本との距離が近いからです。中距離ミサイルは発射から数分で日本に到達するため、アメリカ大統領が電話を受けたときには、おそらくすでに着弾しているのです。

ですから、アメリカ大統領が何も考えずに「北京に反撃しろ」と指令を出すことはおそらくないでしょう。緊急会議を開いて「大変なことになっている。これからどうするか」という流れになるはずです。

北京に反撃しようという意見もあれば、少し待ったほうがいいという意見も当然出てきます。北京に反撃するということは、アメリカと中国の戦争の開始を意味します。

アメリカにとっては、東京全滅で政府機能という頭脳が効かなくなった状態の日本をわざわざ助ける価値があるか?という問題になるのです。

ですから、日本に対してアメリカの核の傘というのは実際には機能していないと言えるでしょう。日本が核兵器を持つか、中国やロシアの核を無力化する手段を持たない限り、これから先、ずっと核の脅威に怯えることになるのです。



  お問い合わせ先 akaminekaz@gmail.com【コピペしてください】
  FBは https://www.facebook.com/akaminekaz
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« Ⅱ.最新のアメリカの経済動向 | トップ | ウクライナをめぐるトランプ発言 »
最新の画像もっと見る

政治見解」カテゴリの最新記事