「国家の品格」という著作で200万部を売った藤原「大」先生の最新作というので、興味半分、借りて読みましたが散々でした。
つまり、近現代史の個々の事象に対し、あれこれの著作を切り張りして構築した独自の世界観を元に、八紘一宇は日本古来の平和思想、朝鮮併合・満州建国結構、南京大虐殺は幻、日中戦争はコミンテルンの策謀、日本は被害者と歴史をねじまげ、戦後、米国により刷り込まれた自虐思想こそが日本衰退の元凶と説きます。
その結果、同氏が提示する日本再生の処方箋は、
1.戦勝国の復讐劇にすぎない「東京裁判」の断固たる否定と日本の百年戦争がもたらした世界史に残る殊勲(アジア諸国の独立を促した)の評価
2.日本弱体化のための現「憲法」の破棄と「日本人のための日本人による」(天皇を元首とした)新憲法の制定
3.自らの国を自らで守る気概を持つ。具体的には、強力な軍事力の保持と対等な日米同盟の締結
というのですから驚きます。これらは、あちら様(インテリ右翼)が、戦後一貫して主張し続けて来た古いドグマの焼き直しに過ぎません。
こんなエリート意識丸出しの浅い考察で近現代史を語り、「日本人よ誇りを持て」などと言われても戸惑うばかりです。
小生は、新田次郎氏が描いた山岳小説が好きで、最近も「蒼氷」などを読み、その筆力の高さに感心すると共に、同氏の業績を多とするものです。
しかし、掲題の著作を読むかぎり、ご尊父の輝かしい業績に泥を塗る結果とならないか心配です。