田舎の倉庫

Plala Broach から移植しました。

赤染晶子著「乙女の密告」

2011年08月23日 | 読書三昧

第143回(10年上期)芥川賞受賞作。



物語~京都の大学で「アンネの日記」を教材にドイツ語を学ぶ女子学生は、日本式根性を愛するバッハマン教授のもと、スピーチコンテストに向け、必死に暗記に励むのだが、ある日、女子学生と教授との間に黒いうわさが流れ・・・

赤染さんは、04年、文学界新人賞を受賞しているので、すでに十分なキャリアをつんだ書き手のようです。

それが、現代の女子学生の日常と、「アンネの日記」という重いテーマを結びつけた小説を書かせたのでしょうが、その妥当性については、審査の過程でも議論があったようです。

以下、選考委員のお一人、宮本輝氏の選評をご紹介します。

「巧みに戯画化されたユーモア小説として読んだが、多分にデフォルメされているのであろう女子大生たちやドイツ人教授が展開する一種のドタバタと、アンネ・フランクという実在した14歳の少女とをリンクさせる手法を支持できなかった。」「ついに収容所で死んだ14歳のアンネの居場所を密告したのが、ほかならぬアンネ自身であったという小説には、私はその造りが正しいか正しくないかの次元とは別の強い抵抗を感じて授賞に賛同しなかった。」