”貴女の過去など~”と歌う菅原洋一さんの「知りたくないの」など、数々のヒット曲(の作詞)で有名な「なかにし礼」氏が作家に転向し、第122回(2000年上半期)の直木賞を受賞。その後も面白い小説を書き続けていることはご存知の通りです。
ただ、この「戦場のニーナ」は、「週刊現代」に連載(2006年1月~11月)されたそうですが、小生は、今回図書室でみかけるまで知りませんでした。
物語~”1945年8月16日、満州牡丹江北東部の日本軍(関東軍)永久トーチカは、ソ連軍の猛攻によって壊滅し、日本兵(人)は全員戦死した。
しかし、生き埋めとなっていた女子の幼児一人がソ連軍によって救助され、「ニーナ・フロンティン(戦場)スカヤ」と名付けられる。彼女は、ロシア中西部の都市エカテリンブルグで里子に出され、中国人として育てられる。
その後、孤児院へ送られ、親なし児!国なし児!などと苛められ、私は何処から来たの? 私は誰? と自らのアイデンティティーに悩みながら成長する・・・”
このところ、直木賞や芥川賞などを受賞した作家の作品を読む機会が多かったのですが、これらの作品が、果たして、相応の質を有しているか疑問に思うことがありました。しかし、このなかにし氏の作品を読むかぎり、これらの賞の持つ権威を信じることができると思いました。
つまり、そのテーマと構成力、人物描写の確かさなど、受賞者にふさわしい作品だと思います。そして、何よりも読後に訪れる静かな感動が、この作品の質の高さを物語っています。一読をお勧めします。