桔梗おぢのブラブラJournal

突然やる気を起こしたり、なくしたり。桔梗の花をこよなく愛する「おぢ」の見たまま、聞いたまま、感じたままの徒然草です。

小金城跡

2009年02月23日 20時40分51秒 | 城址探訪

 土曜日、日曜日と二日つづきの好天でした。
 おぢさんがいつも踏切を渡っている流鉄には、起点の馬橋から二つ目に小金城趾という駅があります。この駅を利用したことは一度もありませんが、我が庵からは歩いて十分もかからぬところにあります。

 去年のいまごろ、春の土の匂いを嗅ぎたいと思って近隣の散策を試みて、この駅があるのを識りました。
「城趾」と名づけたからには、近くにお城があったのだろうと思ったのですが、あたりを見回してみても、それらしきものは見当たりませんでした。さほどのものではないのだろうと考えて探索もしないうちに、そろそろ転居一年を迎えようとしています。

 土曜日の夕方、滅多に行かない方向(小金城趾駅方向)のスーパーへ買い物に行って、近くに大谷口歴史公園という公園があるのを識りました。名前からして興趣をそそられましたが、すでに薄暗くなりかけておりましたので、その日は行くのを断念。翌日曜日に行ってきました。



 横須賀橋で新坂川を渡ります。この橋は私が通勤に利用している大谷口新橋より一つ上流に架かる橋で、互いに見ることができるほど近いのですが、大谷口新橋あたりまで護岸を固めていたコンクリートは土に変わって、草が生い茂り、すっかり田舎の風情です。
 こんな小川でありますが、利根川からの水が流れているので、これでも一級河川なのです。

 橋を渡って流鉄の踏切を過ぎると、上り坂があります。その坂の上り口で道を左に取ってしばらく歩くと、楠や椎の大木が聳える丘が見えてきました。それが大谷口城の趾、別名小金城です。

 この地に城を築いたのは高城胤吉という戦国前期の武将で、城が完成したのは天文六年(1537年)。
 天文六年という年は、室町幕府最後の将軍となる足利義昭が生まれた年です。前年には豊臣秀吉が生まれ、その二年前には織田信長が生まれています。武田信玄が父を追放するのは四年後、長尾景虎が兄を押しのけて家督を継ぐのは十一年後です。戦国の風雲急を告げ始めたころといっていいでしょう。

 高城氏は千葉氏(当時の当主は二十五代利胤)の家老職・原氏(同胤清)の重臣という家系です。千葉氏からみれば陪臣ということになりますが、軍事力に優れた家系だったようで、その軍事力によって重きを置かれ、胤吉は利胤の叔母を妻に迎えています。
 陪臣でありながらも、なかば独立した存在で、北条、上杉など近隣の大名からは、独立した戦国大名の一人と目されていたようです。



 かつては金杉口といわれていた虎口の一つから公園に入ると、いきなり急勾配がありました。
 東日本ではまだ石垣を用いた築城術のない時代ですが、この勾配は攻めるのにむずかしく、守るのに易しそうです。

 


 障子堀。
 空堀の途中に高さ2メートルぐらいの間仕切り(障子)をつくるので、この名があります。これによって侵入してきた敵は遮られることになります。

 


 畝堀(うねぼり)というこの時代独特の堀です。
 蒲鉾(かまぼこ)を裏返しにした形に3メートル掘り下げ、さらに真ん中に1メートルほどの溝を掘り下げただけのものですが、地質が粘土質であるため、滑りやすく、上りにくい構造になっています。侵入してきた敵が前後から挟撃されれば、逃れるすべがないのです。

 城域は東西800メートル、南北700メートルに及び、十二もの郭を備えていたといわれます。
 城跡となっている丘は標高20メートルほどに過ぎませんが、周囲を巡って歩くと、坂を上ったり下りたり、結構しんどい思いをしなければなりません。土饅頭のようなボテッとした丘ではなく、そこここが谷に穿たれて、天然の要害となっていることがわかります。

 私が訪れたとき、園内は無人でした。
 時折冷たい風が吹いて、椎や楠の葉を鳴らします。真っ暗になれば、甲冑姿の亡霊が出るかもしれぬナ、と思わせます。
 畝堀のあるあたりは展望台のように拓けていて、かつては見晴らしがよかったのでしょう。いまはマンションが林立しているので視界が利かず、敵が迫ってきたとしても気がつきません。

 千葉氏、原氏、高城氏はともに北条氏に荷担しました。そのため、秀吉の小田原攻めによって、戦国という舞台から姿を消すことになります。
 大谷口城も秀吉軍の浅野長政に攻められて、天正十年落城。築城後わずか五十三年のイノチでありました。

 東国には日本史を書き換えるような有力な戦国大名がいなかったこともあって、この時代の目はどうしても尾張三河あたりに向きがちです。しかし、没落して行った者たちには、つむじ曲がりの私の琴線に触れる何かがあります。
 これからは時折近隣の歴史散歩に出てみようと思っています。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« おどるポンポコリン | トップ |  »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

城址探訪」カテゴリの最新記事