桔梗おぢのブラブラJournal

突然やる気を起こしたり、なくしたり。桔梗の花をこよなく愛する「おぢ」の見たまま、聞いたまま、感じたままの徒然草です。

祭りのあと

2009年05月19日 12時15分24秒 | つぶやき

 先週、浅草の三社祭がありました。
 浅草を離れて五年経ちます ― 。その間、三社祭には行ったことがありません。
 思い返すと、三社祭の前はいつも天候不順で、肌寒い思いをしていました。当日は雨、ということもたびたびありました。
 浅草を離れてから、毎年五月になり、肌寒い日がつづくと、そういえば三社が近い、と思うようになりました。

 私が棲んでいたのはビューホテルの裏手。町内会の名でいうと、西浅三北というところでした。
 西浅三というのは台東区西浅草三丁目の略、北は文字どおり三丁目の北のほうという意味です。ところが、南に西浅三南という町内会はなく、代わりにあるのは中部に芝崎中、南部に同東、同西の二つの町内会です。
 芝崎というのは昭和四十年の住居表示変更まで、三丁目全体が浅草芝崎町だったからです。

 三丁目に日輪寺という時宗のお寺があります。
 このお寺が明暦三年(1657年)の大火のあと、芝崎村(現在の大手町あたり)から移ってきました。学僧の集まる寺で、芝崎道場とも呼ばれていたことから、移ってきたあたりも芝崎と呼ばれるようになったということです。
 ということは、西浅三北ではなく、芝崎北でよかったはずなのですが、なにゆえに芝崎を名乗らず西浅三北であるのか、棲んでいる当時は疑問も懐きませんでした。無縁の人となってから、疑問を懐くようになったのです。

 それぞれの町内に二基から三基の町神輿や女神輿、子ども神輿があります。
 西浅三北町内で自慢できるのは、浅草神社氏子四十四か町約百基の中で、おそらく一番大きな町神輿を持っていたことです。ただ、他町の口さがない連中からは「張り子の虎のようだ」と揶揄されていました。確かに図体がデカイことはデカイが、そのわりには軽いというのです。
 法被も白地に黒字で「西浅三北」と、贔屓目に見てもカッコいいとはいえない。汗で濡れると肌が透けてしまうので、何かだらしなく見えました。
 


 当時棲んでいたマンションのベランダ(四階)から撮った町神輿の様子です。
 日曜日に巡行する宮神輿も、この道を上手から下手へと通って行きます。
 宮神輿は一之宮から三之宮まで三基あって、それぞれ一基ずつ三年ごとに巡ってきます。
 宮神輿が通るときは神輿を担ぐ人と見物人と警察の装甲車が一体となって、道路は身動きのとれない状態になります。

 建物の一階を車庫や店舗にしているビルは揃ってシャッターを下ろします。シャッターを上げたままでいると、いつ神輿が雪崩れ込んできて、怪我人が出たり、中のモノが壊されたりするかしれません。揉み合う神輿が流れて、ビルの壁に叩きつけられる担ぎ手もいます。
 私は毎年四階から高みの見物―。

 祭、とくに三社祭ともなると、やはり血湧き肉躍るものがあります。毎年百万人という人が集まる東京一の祭なのですから、昂奮はなおさらです。
 朝から祭り囃子が響いて、神輿担ぎに出るわけでもないのに落ち著きません。遠来の客があったりすれば、昼過ぎにはすでに酩酊状態です。

 しかし……。
 私はやっぱりへそ曲がりなのか、と自分で考えることもありましたが、なんともいえず好きだったのは、祭の当日より、翌月曜日でした。
 今週の月曜日もそうだったように、祭までは肌寒い日がつづくのに、祭が済むと、不思議と夏を思わせるような陽気になります。

 浅草にいたころの私は勤めを持たず、フリーランスの生活をしていました。自由気ままに街を歩くことができたので、祭の翌日の空気を堪能すべく、とくに好んで浅草の中心部-雷門近く-へ昼飯を食いに出ていました。
 いつもなら観光客で賑わう仲見世も人通りは疎らです。三社祭の当日を外して、翌日にこようなどという酔狂な観光客がいるはずはないから当たり前です。

 仲見世が閑散としているのですから、路地を一本折れれば、なおさら人影はありません。時折野良猫が道路を横切るだけ。大騒ぎをしたあと、疲れてしまって、みんな眠っているような印象を受けます。この日が一年を通じて浅草が一番静かな日ではないだろうかと思います。
 街にはけだるい空気が流れているだけです。このけだるさがなんともいえず、佳かった……。



 この画像はなんだ? と思うでしょう。
 怪しげなネットと風の吹き溜まりに逆さに置かれたU字溝。
 三社祭とはまったく無関係な画像。三社祭の終わった翌日、三社祭とは無関係なところで撮ったというだけの話です。
 市川大野の駅と私の勤め先の真ん中あたりに、この吹き溜まりがあります。あと二か月と少々すると、このU字溝の上に青い籠が置かれ、一袋¥400也の梨が入れられるのです。


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