時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

今年、家計はどうなるのか?

2007年01月16日 | 経済問題
朝日新聞のインターネット版に経済評論家の荻原博子の「がんばれ!家計」というコーナーがある。
新春早々のこの欄のエッセーを要約すると、
今年は家計にとって、厳しい年となる。なぜなら、大増税をはじめとする負担増と、それに見合うだけの給料アップが見込めないという厳しい現実があるからである。
2006年に引き続き、2007年も、大増税の年となる。すでに決まっているのが、定率減税の全廃による実質増税がある。
年収500万円のサラリーマン家庭(専業主婦の妻と高校生、中学生の子供で、生命保険料、損害保険料を控除額いっぱいまで支払っているという設定)でシミュレーションすると、この家庭の一昨年(2005年)の税金は、所得税と住民税を合わせて14万1100円。これが、昨年は定率減税が半減したために、1万3800円の増税となり、さらに、今年は定率減税が全廃になり、税金は3万1000円増え、2年間で4万4800円も増税になるという
定率減税の廃止は、すでに決まっているが、ウヤムヤになっている消費税アップや配偶者控除の廃止、給与所得控除の縮小などの増税話も、参議院選挙が終わったら出てくると予想している。
しかも、増えるのは税金だけではなく、4月には国民年金の保険料がアップし、10月には厚生年金の保険料がアップする。
また、一方の収入増は見込めないと予想している。
なぜなら、企業が、終身雇用や年功序列を捨てて、アメリカのような能力給を取り入れており、政府も、それを奨励しており、昨年5月に成立した新しい会社法では、株主の権利が色濃くうたわれたことを上げている。今まで日本の会社は、社長と従業員が支え、不況の時にはみんなで我慢し、そのぶん、好況になると利益が社員に還元される仕組みであったが、今後は、株主はより自分の利益を増やすために、給料を押さえようとする。
派遣社員の自由化やホワイトカラーエグゼンプション制度導入なども、実は、社員の給与を低くおさえるためのものであり、従来のような給料アップは望めないと分析している。
このような中で、荻原氏が主張しているのは、家族みんなで協力して強い家計をつくることが大切であり、いつ、どれくらいのお金が必要になるのか、そのために、どれくらい貯金をしなくてはいけないのか、貯金するためには、生活費をどれくらいに押さえなくてはいけないのかを計算し、家計に無理がありそうだと思ったら、収入を増やすために、妻がパートに出るだけでなく、子供も大きければアルバイトをしよう、と述べている。
彼女の家計や経済を取り巻く現状認識や分析には納得できるが、対策は必ずしもいただけない。
家計を考える時に、子供の成長、自分の老後などの将来設計を考慮して、計画を立てることは重要である。
しかし、足りなくなったら、節約して、とにかく家族みんなで働くしかないというのはどうもいただけない。
彼女自身が指摘しているように、派遣労働の広がりで、働いても生活保護基準以下のワーキングプアを生み出すような社会の仕組みに問題があるのだ。また、企業の利益が従業員に適切に配分されていないことに根本的な原因があるのだ。
この仕組みを変えない限り、庶民の家計はこれからますます追い詰められることになるだろう。
楽しく読ませていただいているエッセーであるが、現状の打開のための提案が乏しいと感じるのは私だけではあるまい。
こうすればこの社会を変えられる、と多くの国民が納得し希望を持てるような提案を希望したい。

依然として深刻な就職内定率

2007年01月14日 | 社会問題
今春卒業予定の大学生の就職内定率(06年12月1日現在)が、前年同期比2.2ポイント増の79.6%となり、90年代後半の水準まで改善したというニュースが報じられていた。
12日、厚生労働、文部科学両省によるまとめでわかったという。
その内容を見ると、高校生(06年11月末現在)も4.5ポイント増の77.3%に上昇。地区別では、近畿や九州地区などの上昇が目立ち、厚労省は「雇用環境の改善が首都圏から地方へと広がっている」としている。
昨年と比べると、大学生の内定率は、男子が80.9%(前年同期比2.0ポイント増)、女子が78.2%(同2.7ポイント増)。地区別では、九州地区が最も上昇し、8.6ポイント増の73.8%。関東地区は、1.5ポイント減の83.1%だったというものである。
また、高校生では、近畿地区(京阪神を除く)の求人数が26.5%増と大幅に伸び、内定率も5.0ポイント増の80.0%に上昇した。ただ、都道府県ごとに見ると、沖縄の内定率は43.1%と最も低く、北海道も51.3%にとどまるなど、地域格差は依然大きいという。
内定率が改善したとは言うものの、5人に1人は就職できないのが現状である。高校あるいは大学の卒業時点で就職できなければ、当座はアルバイトや派遣社員などとして働かざるを得なくなり、正社員としての就職がますます困難になるのが通例である。
また、雇用環境が首都圏から地方に広がっていると述べられているが、沖縄、北海道のように2人に1人が就職できない事態は、到底座視できないものがある。
また、就職はできたものの、希望する職種や業務につけず数年で退職する若者も多いと思われる。
政府や財界は、一方では、残業代ゼロの労働者を作り出す法律を準備しながら、他方では、相変わらず人件費の削減のために新規雇用を抑制している。
抜本的な解決策は、8時間労働制を堅持し、残業時間を削減し、仕事量に見合った労働者を雇用させることを企業、特に大企業に指導することであろう。
厚生労働省は、この実態を目の当たりにしながら、なお、雇用は改善したと主張するのだろうか。また、残業代ゼロのホワイトカラーエグゼンプションを導入するつもりなのだろうか。
現状認識そのものが間違っているとしか言いようがないのではあるまいか。

復興住宅で孤独死が昨年66人…なぜ援助の手が差し伸べられないのか?

2007年01月13日 | 社会問題
阪神大震災の被災者らが暮らす兵庫県内の公営賃貸住宅(復興住宅)で、1人暮らしの入居者が死亡した「孤独死」が、2006年の1年間で66人に上ったことが12日にわかったという。
05年比で3人減り、70代以上が6割を占めた。最高齢は94歳の男女だった。
仮設住宅が解消した2000年以降、7年間の孤独死者数は計462人に上っており、高齢者の孤独死対策の重要性があらためて示された。
死因別では病死が58人、自殺が8人。男性が41人、女性が25人だったという。
震災後12年が経って、なぜこのような事態が起きるのだろうか?
しかも、66名の中に8名の自殺者が含まれている。異常な事態だ。
国も自治体も確かに莫大な借金を抱えている。特に、震災の復興のために兵庫県や神戸市の財政は決して楽ではないだろう。
しかし、イラクに自衛隊を派遣し、神戸新空港を建設する財政があるのに、なぜ、こういう孤独死が防げないのだろう。
昨夜もNHKの番組で、松戸市の団地での孤独死を防ぐ取り組みが紹介されていたが、自治体としての取り組みは弱く、対策のほとんどが住民の自主的な努力に委ねられているのが現状であり、自ずと限界がある。
国や自治体には、けっして「お金がない」わけではなく、国民の生命や財産を第一義的に守ろうという「心がない」としか言いようがない。
自分たちの足元から、政治というもののあり方を考えさせてくれた記事だった。

「すき家」のアルバイトに残業の割増賃金

2007年01月12日 | 格差社会
先日の毎日新聞に、ゼンショーが経営する牛丼の「すき家」で働くアルバイト(約1万人)に残業代の割増賃金が支払われるようになったことが報じられていた。
アルバイトやパートの労働条件が改善することは、ワーキングプアと呼ばれるバイトやフリーターの処遇が改善されるということであり、さらには正社員の待遇の改善にとってもプラスとなり、大変喜ばしいことである。
労働基準法では、残業には25%の割増賃金が義務付けられているが、アルバイトには残業時間分の時給は支払われるものの、割増賃金は支払われないことが多い。明らかな違法行為であるが、黙認されているケースが多いのが現実だ。
そのような中で、ゼンショーがなぜ今回のような措置を行ったのか?
その背景には、アルバイト店員の一部(15名)が個人加盟の労働組合に加盟し、経営者側と交渉した結果であることも報じられていた。
労働者一人一人は、当然のことながら会社に対して立場的に弱者である。それゆえに、法律が遵守されないケースも多いのだが、労働組合などを結成し、労働法制を楯に会社側と交渉することが重要である。
すき家で労働組合に加盟したアルバイト15名には、会社からの様々な嫌がらせが始まっているという。
勇気ある組合員の決意と努力で、全国のすき家のアルバイトの処遇が改善されたわけだ。この組合員たちに拍手を送るとともに、自らの生き方に自信を持ってこれからも頑張って欲しいと願っている。同時に、すき家のアルバイトのなかに、労働組合がしっかり根を張るとともに、この動きが、不法な労働条件の下で働くことを余儀なくされている他の企業のアルバイトやパートにも広がることを願っている。
ちなみに、この組合は、「首都圏青年ユニオン」というそうだ。おそらく、青年でなくとも相談に乗ってくれるに違いない。
アルバイトやパートであっても一定の条件を満たせば、有給休暇も取得できる。劣悪な条件で働いている青年や女性がもしこの記事を見ていたら、ぜひこの組合に相談することをお勧めしたい。
自分の人生は、自分で切り開いていくものである。自分の人生を振り返って、恥ずかしくない生き方をして欲しいと思っている。

憲法「改正」の国民投票法案のゆくえ

2007年01月11日 | 憲法・平和問題
民主党の鳩山幹事長が10日、自民党の中山太郎衆院憲法調査特別委員長と東京都内の個人事務所で会い、憲法「改正」手続きを定める国民投票法案について、25日に開会する通常国会に与党と共同修正案を提出する方向で党内調整に入ることを伝えたそうだ。
安倍首相は、通常国会で同法案を成立させる方針を明言しており、野党第1党の民主党が共同修正に合意すれば成立に弾みがつく恐れがある。
今まで、本紙でもたびたび述べてきたことであるが、なぜいま憲法を変えなければならないのだろうか?しかも「改正」の眼目は、戦争放棄を定めた9条の改変にあることは明確である。公明党などは、この本音を隠して「現憲法にはプライバシー権が明記されていない」などと屁理屈を述べており、また民主党の憲法「改正」素案にはセクハラの禁止まで書かれている。こういう問題は、現行憲法でも十分に対応可能であり、この憲法の規定に従って、プライバシーを守り、セクハラを罰することは現行の法律でもきちんと行えるのである。
9条の改定に関しては「国際貢献」という言葉が使われているが、9条を持つことにより、日本は戦後60年以上に渡り、近隣諸国に軍事的な圧力をかけることなく、世界の平和や経済の発展に十分に貢献してきたではないか。これが日本としての「国際貢献」のあり方であり、引き続きこれを発展させることこそがこれからの日本に求められているのである。
鳩山氏は中山氏から同法案成立への協力を要請され、「参院選のことを考えれば成立は早い方がいい」と明言。参院選が近づいて与野党の対決ムードが高まれば修正協議を進めにくくなると判断したという。しかし、7月の参院選へ向け社民党との野党共闘を重視する民主党の小沢代表が修正協議にブレーキをかける可能性もあると報じられている。
要するに、民主党も、自民党と同じように、憲法を変えたくてしかたがないが、国民の手前、参院選では対決姿勢を示したいので、対応に困っているということである。憲法問題という国の将来の進路についての最重要問題を政争の具にするのが、日本の「二大政党」の現実なのである。
憲法を変えたくない読者は、今後の地方選挙、国政選挙で、自民・公明の与党と民主党には、絶対に1票を投じてはならない。
「憲法を守りたい」というと願う国民は、大異を捨てて、「憲法擁護」の1点に大同団結し、一貫して憲法「改正」反対を主張している共産、社民に投票すべきであろう。
二大政党制への道は、憲法「改正」への道にほかならないのである。
もし、この投票法案が決まってしまうと、外堀が埋められ落城した大阪城と同様に、憲法という本丸そのものも大きな危機にさらされることになる。
憲法「改正」のもくろみを、この投票法案という入り口の時点で葬り去ってしまうことが、子孫に平和な社会を残す唯一の道である。

防衛問題、2題

2007年01月10日 | 政治問題
防衛庁が正式に防衛省に昇格した。この問題については、新年早々の記事で、一層の「国民の監視」が必要なことを述べておいたが、この気持ちはますます強まるばかりである。
新聞報道によると、これまで外交の主導権を握っていた外務省が危機感を強めているが、これに対して防衛省幹部は「外務省とは別ルートで独自の政策調整を行う時代になる」ことを公言し、もう暴走が始まった感じだ。
安倍政権が最重要課題として掲げている憲法「改正」、特に、9条をめぐる議論との関係で見過ごすことはできない。
さて、もう一点はホルムズ海峡において、アメリカの原子力潜水艦が日本のタンカーと衝突し、船体に穴を開けるという大事故を起こしたという記事である。
編集長は、この記事を見て、2つの点から危惧を覚えた。一つは、米軍が民間の船舶に危害を及ぼすものであることを如実に示す事件であることだ。米軍は、民間人を守ってくれるどころか、害を及ぼす存在であることが改めて証明され、しかも国名も船名も明らかにせずに立ち去ったという。また、もしタンカーが沈没したり、燃料や積荷が海上に流れ出したり、原潜の放射能漏れなどがあれば、周辺の被害は計り知れないものになったであろう。もう一つは、米軍が中東を含む世界の海をわがもの顔に航行し、「世界の憲兵」として振舞っているという現実である。ホルムズ海峡の近隣諸国に言わせれば、迷惑かつ危険極まりないものである。
中国やロシアがこういう行動をとれば、いったいどういう非難が巻き起こるであろうか。米軍なら許されるとでもいうのだろうか?
軍事力によって、平和を維持する時代には終止符を打ち、国連憲章に基づく外交努力によって世界の平和を維持する方向に転換する時代を一国も早く築くべきであろう。

二大政党づくりをあおるマスコミ

2007年01月08日 | マスメディア
いまのマスコミの現状を率直に嘆かざるを得ない。
テレビはもちろんのこと、新聞も今年の参院選に向けて、二大政党づくりに躍起になっている。
自民党を中心とした政権か、民主党を中心とした政権か、その2つの選択肢を前面に出して、どちらかの政権の選択を国民に問う報道が目に付く。
テレビでも、参院選の1人区の動静を二大政党を中心に報道している。また、毎日新聞の「世論」調査では、参院選で自民党と民主党のどちらに勝ってもらいたいかという選択肢しかない。他の野党を支持する国民にも、自民か民主のどちらかを選ばせるような「世論誘導」調査となっている。まったくお粗末としか言いようがない。
国民の政治に対する多種多様な要求をたった2つの選択肢の中に求めることにそもそも無理がある。
世論調査でも、二大政党にも増して、「支持政党なし層」が最も幅を利かせているではないか。そして、多くの国民は、こういう世論誘導を嘲るように、選挙においてどちらにも投票しない「棄権」という選択をするのである。
安倍政権が最重要課題に掲げる憲法「改正」を見ても、民主党も9条の改定を含む「改正」を掲げているため、現在の憲法を守りたいという国民は二大政党のどちらも選びようがない。
昨年の臨時国会で採択された防衛省法案も、二大政党の間にはまったく意見の相違はなく、民主党も賛成して採択された。
また、民主党は「格差社会の是正」を参院選の重点政策として掲げるというが、その格差を生み出している張本人の財界、大企業に政治献金欲しさにすり寄っているのがこの民主党なのである。また、憲法「改正」を最重点に掲げる自民党に対して、これに真っ向から反対するという対決軸が打ち出せず、苦し紛れに別の争点を持ち出さざるを得ないところが、野党第1党たる民主党の情けなさである。
そして、この民主党と選挙協力をする社民党という存在もわけがわからない。憲法「改正」という一大問題で相反する政策を持つ民主党と手を結ぶという行動が国民の政治不信をますます助長することになっているのである。
マスコミは、国民が有する多種多様な現実や要求に焦点を当てて、その問題に各政党が過去においてどのように行動してきたか、そして今後どのように打開しようとしているのかを真摯に報道すべきである。
今年は、いっせい地方選挙や参院選が行われる年である。国政のみならず、地方政治の現実にも光を当て、国民が本当に知りたい政党の姿を報道して欲しいと願っている。

安倍晋三は、本当にバカだ。

2007年01月07日 | 政治問題
下品なタイトルで大変恐縮であるが、これしか言葉が思いつかなかったので、どうかお許しをいただきたい。
安倍首相は5日、首相官邸で記者団の質問に答え、一定条件下で会社員の残業代をゼロにする「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入について「日本人は少し働き過ぎじゃないかという感じを持っている方も多いのではないか」と述べ、この制度の導入によって、労働時間短縮につながるとの見方を示したという。
さらに「(労働時間短縮の結果で増えることになる)家で過ごす時間は、例えば少子化(対策)にとっても必要。ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を見直していくべきだ」とも述べ、出生率増加にも役立つという考えを示したという。首相は「家で家族そろって食卓を囲む時間はもっと必要ではないかと思う」と指摘。長く働くほど残業手当がもらえる仕組みを変えれば、労働者が働く時間を弾力的に決められ、結果として家で過ごす時間も増えると解釈しているようだ、と報じられている。
以上の報道内容を見て、読者諸兄はどのように感じられただろうか?
日本人は働きすぎではないかという点には同意できるが、どこをどのようにねじ曲げたら、このような解釈ができるのだろうか?
安倍首相の脳の構造を調べてみたくなった。
このホワイトカラーエグゼンプションは、財界、大企業が残業代を支払いたくないがゆえに、わずかばかりの賃金の上積みと引換えに残業代を全面的にカットする制度であり、もし、この制度が導入されれば、「8時間でこれだけの仕事ができるはずだ」と会社が判断した仕事量(実際には、とうてい8時間では終了できないほどの仕事量)が対象となる労働者に与えられ、結局、サービス残業が横行するようになるのは目に見えているではないか?
ところが安倍首相に言わせると、この制度の導入によって、「残業時間が削減される」というのだ。残業時間が削減されるのではなく、企業が支払う「残業代が削減される」だけである。企業が、自分たちが損をするような制度の導入を画策するはずがないではないか。常識ある頭で考えれば簡単にわかることである。
安倍首相が、本当に残業時間を減らし、労働者が家庭で過ごす時間を保証したいと考えるのであれば、法律によって、1日の労働時間を7時間とか、6時間に規制し、さらに残業代の割り増し率(通常25%)を50%、100%にし、企業が残業をさせないように規制を強化すればよいではないか。そのことによって、新たな雇用も生まれ、失業率も大幅に改善し、ワーキングプアなどの貧困層も解消されるに違いない。
ところが、安倍首相の発想はまったく逆転している。驚くほかはない。
政府は、早ければ今年の通常国会で、この法案を提出しようとしているが、夏の参院選前に導入をゴリ押しすると選挙に悪影響を及ぼすとの慎重論が与党内にもあるため、参院選後の臨時国会に上程するとの予測もある。
いずれにせよ、政府・与党も、首相も、この法案が、選挙に悪影響を与えるという認識を持っているということは確かなようだ。
にもかかわらず、「残業時間が削減され、少子化対策につながる」と公言するのが、この国の首相のおつむのレベルなのである。

経団連の野望

2007年01月06日 | 財界
経団連が、向こう10年間に財界が求める「日本のあるべき姿」についての「改革」の方向性を示した「希望の国、日本」(御手洗ビジョン)を発表した。
これによると、2011年度までに消費税を7%にし、その後さらに10%にする二段階の引き上げを提言する一方、法人実効税率は現行の40%から30%にするよう求めている。
また、「イノベ-ション」(革新)については、科学技術だけでなく、教育や国・地方のあり方、憲法の変革を主張し、「憲法改正を実現」することを提起している。
日米同盟を安全保障の基軸として、「ミサイル防衛」能力の向上、二国間や多国間の共同演習の推進まで求め、愛国心教育の必要性を強調している。
労働分野では、労働者派遣や請負労働に関する一層の規制緩和を提言し、ホワイトカラーエグゼンプション(労働時間規制の適用除外)の推進を求めている。
ビジョンでは、今後5年間に重点的に取り組むべき課題を114項目の「アクションプラン」にまとめている。
一つ一つの内容は、財界、大企業が経済活動による利益を独占し、国民に更なる負担や困難を強いる内容になっている。
本紙でもたびたび取り上げてきた貧困と格差の問題、非正規雇用やワーキングプアの増加、サラリーマンや高齢者への税負担の増大などの弊害も、企業が成長することによって、自然に解決するかのように描いているが、これはとんでもない誤解であろう。
現在の日本社会が抱えている諸問題は、経済活動による利潤のほとんどを大企業が独占したことによって生まれてきたものである。
このビジョンの中では、「企業エゴ」に陥ることがないように自らを戒めているが、ここに描かれている内容の一つ一つが「企業エゴ」の現われにほかならない。これを作成した人物は、そのことにも気づかなかったのだろうか。
もう一つは、この「希望の国、日本」というこのビジョンのタイトルそのものが示すように、安倍首相のいう「美しい国、日本」のスローガンに呼応する内容になっていることである。
財界が求める一連の政策は、いま政府が実際に手を付けようとしている政策そのものであり、自民党という政党が、財界の言いなりになっていることを証明するものである。
いま、多くの国民が日本の社会の行く末に大きな不安を抱いている。もうそろそろ財界、大企業の言いなりの政治に終止符を打つ時期に来ているのではなかろうか。

便利な生活を追求するだけでよいのか

2007年01月05日 | 環境・食料問題
今年の新年も、元日は実業団駅伝、2、3日は箱根駅伝を観戦して楽しんだ。それぞれ、中国電力、順天堂大学による中盤での逆転があり、見ごたえのあるレースだった。選手や関係者諸氏に感謝の言葉を送りたい。
さて、箱根駅伝は、東京-箱根間の約100kmを往復するわけであるが、この100kmという数字は、地球の大気圏の高さ(厚さと呼ぶ方が正確かもしれないが、)とほぼ同じである。
上空100kmを超えると、そこはもう大気圏外、宇宙である。
地球という星は、厚さがわずか100kmの大気に覆われているに過ぎない。
月の表面に立って地球を見ると、この星の表面がわずか東京-箱根間の距離、駅伝選手ならわずか5時間で到達する厚さしかないわずかな大気で守られていることを見ることができるだろう。この大気層の余りの薄さに驚かざるを得ない。
このわずかな大気の中に、約65億人の人間が暮らしており、その他にも無数の生き物が共存しているのである。
今日接したニュースによると、大気汚染が再び悪化し、自然状態の100倍の速度で生物が絶滅するなど、環境が過去20年間に大幅に悪化し、このままでは改善も望み薄だとする地球環境白書案が国連環境計画(UNEP)によってまとめられたという。
白書の発行は2002年以来で4回目で、ブルントラント元ノルウェー首相らの有識者委員会が、環境破壊を招かない「持続可能な開発」の重要性を指摘してから20年を機にまとめ、今年半ばに正式発表される。
白書案によると、1987年に約50億人だった人口は05年には約65億人に増加。大気汚染では、先進国で減っていた硫黄酸化物の排出量が、アジアでの排出増によって95年ごろから増加に転じたそうだ。都市部でのディーゼルエンジンの排ガスなどに含まれる有害な微粒子の汚染が原因で、毎年80万人が死亡しているとしている。
京都議定書の採択などの対策にもかかわらず、環境悪化が貧困解消や人間の幸福実現の障害になっていると指摘。環境対策を意思決定の根幹に置くよう各国に政策転換を求めている。
人間は、便利な生活を求めて、進化を続けてきたが、地球環境にまで目に見えるほどの悪影響を及ぼすようになったのは、産業革命以来のわずか200年くらいであろう。
化石燃料を燃やし続けることによって得られる莫大なエネルギーによって、我々の暮らしは充分に快適で、便利になった。しかし、人間の欲は留まる所を知らず、今も更に快適で、便利な暮らしを追い求め続けている。
そのことによって、地球環境は確実に悪化し、この白書案が指摘するように、人間の幸福の実現の障害になっていることに、多くの国民が既に気づいているはずである。しかし、そうは言っても、産業革命前の江戸時代のような暮らしに逆戻りしたいと思う国民はまったく存在しないだろう。
我々にできることは、できるだけ無駄を省いた簡素な暮らしを心がけ、白書案が指摘するように環境対策を意思決定の根幹におくように、自国の政府に要求することである。
このことなくして、子孫に「快適な未来」というタスキを引き継ぐことはできないのである。

細菌、ウイルスとのたたかい

2007年01月03日 | 医療・社会保障
多くの抗結核薬が効かず、世界保健機関(WHO)が警戒を呼びかけている「超多剤耐性結核菌」に、国内でも年間60~70人が新たに感染していると推定されることが結核予防会の調査で判明したという。
WHOは、最初の治療で用いられるイソニアジドなど2種類の薬に耐性がある結核菌を「多剤耐性」と分類。さらにカナマイシンなど2度目以降に試すいくつかの抗結核薬にも耐性があるものを「超多剤耐性」と定義している。世界の結核患者の2%は超多剤耐性菌に感染しているとされるが、日本での実態はわかっていなかった。
結核療法研究協議会が、2002年6~11月に、国内99か所の結核治療施設に入院した患者3122人から採取した結核菌を分析したところ、多剤耐性菌が55人から検出され、うち17人(約31%)は超多剤耐性菌だったという。
B型肝炎、HIVなどでも、耐性ウイルスの発現が問題になっている。
細菌やウイルスに有効な薬剤を投与すると、細菌やウイルスが薬剤に対してやがて耐性を獲得し、やがては薬剤が効かないものが出現し、これに対してさらに強力な薬剤が開発、使用されるようになる。こういうイタチごっこを続けているうちに、細菌やウイルスがどんどん強力になり、ついには、前述のような超多剤耐性結核菌が出現したわけである。
風邪に罹って病院に行くと、細菌検査などが行われないまま、大量の抗生物質が処方される。
開業医や病院にとっては、評判が第一とばかりに、とにかく早く治るようにと、抗生物質の大量処方が行われ、患者もこういう病院に対して良い病院という評価を与えるようになる。
こういうことの繰り返しが、取り返しのつかない事態を招いていることに多くの医療関係者や国民は既に気づいているはずだ。
人間には本来持っている免疫力がある。少々の風邪であれば、規則正しい生活と休養で十分に治すことができるはずである。欧米では、病院に感染症の専門医が配置され、耐性金の出現を出来る限り遅らせるよう、必要な細菌検査を行ったうえで、最小限限度の抗生物質などを処方する試みが広がっている。こういう取り組みを日本も見習うべきである。必要最小限の薬の世話にならねばならぬこともあろうが、可能な限り、薬に頼らずに病気に立ち向かう努力が必要ではなかろうか。
HIV感染なども先進国の中で、感染患者が増えているのは日本だけである。一時、注目されたエイズ予防キャンペーンもすっかり下火になってしまった。また、最近話題の鳥インフルエンザへの対策も立ち遅れている。
先の結核菌の場合、もし回りの人たちに感染すれば治療の方法がない。
これからも、細菌やウイルスと人間とのたたかいは長い間続くことだろう。人間の英知が、細菌やウイルスに負けないことを祈りたい。

昇格した防衛省への国民の監視を

2007年01月01日 | 憲法・平和問題
新年明けましておめでとうございます。
新年早々、昨年の話題で申し訳ないが、どうしても言っておかなければならないことがある。
昨年12月に閉幕した臨時国会において、防衛庁を防衛省に昇格する法案が可決された。
自民・公明だけでなく、民主党までが賛成して成立した。国会議員の9割余が賛成したわけだが、小さな政府が期待されている時に、なぜ新たな省が必要なのか、これが現在の国民の世論を正しく反映しているのであろうか?5~6割の得票率しかない政党群が9割以上の議席を占めているという小選挙区制によるいびつな議会構成を物語るとともに、もっと国民の声を聞いた上で決めるべきであったろう。
この法案は、安倍首相が教育基本法「改正」法案とともに、臨時国会の最重点法案に位置づけたものだ。この重点課題のうちの一方に、野党第一党の民主党が賛成なのだから、もう一方の法案にも腰砕けになったのも容易に理解できる。
安倍首相は、これをバネに憲法改正をめざすだろう。「憲法改正」の露払い役が「防衛省」法案である。
また、防衛省は庁の時代とは異なり、外務省と対等であることをもって、外交努力などは無視し、軍事力をテコにした紛争解決を主張し始めるだろう。財務省との予算折衝も、格段にやりやすくなり、装備の充実にはずみがつくだろう。同省単独で法案も提出できるようになった。
先の国会で防衛省昇格法が成立した背景には、自民党の連立パートナーである公明党の強い意向もあったと言われている。来夏の参院選目前の通常国会で審議するとなると、一応「平和」を主張する創価学会婦人部の全面協力が選挙で得られなくなるという公明党の党内事情も絡んでいたという。
今後は昇格した防衛省への国民の監視が引き続き重要である。また、昇格法案に賛成した自民、公明、民主各党の今後の対応にも注意したい。
たとえ軍事力が増強されても、わが国の防衛政策の基本である「専守防衛」の方針をしっかりと守ることだという議論もある。しかし、もし政府が主張するように、北朝鮮のミサイルや核が日本をめがけて発射された場合、10分もあれば日本に到達する。これを防ぐことは、軍事的にはほとんど不可能である。だとするならば、軍事力の強化ではなく、外交によって、平和を築いていく以外に日本を防衛することはできないのである。
現在も世界の各地で戦火が絶えないが、軍事力に頼れば頼るほど事態は泥沼にはまるのが普通である。
核兵器はもちろんのこと、軍備で平和を守ろうとする愚かな試みには、そろそろ終止符を打つべき時期であると思われる。
2007年が、平和への大きな一歩を踏み出す年になるよう努力したい。