時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

キヤノンは直接雇用、日亜化学は直接雇用拒否

2007年09月02日 | 格差社会
偽装請負で社会的に批判を浴びていたキヤノンが、請負労働者83人の直接雇用に踏み切った。待遇は「期間社員」ではあるが、まずは一歩前進である。
偽装請負は、実態は派遣社員であるにもかかわらず、請負契約を装い、派遣期間の制限(以前は1年間、現在は3年間)を越えて働かせる違法行為である。
キヤノンの御手洗会長(経団連会長)は、この派遣期間の制限が気に食わず、以前は派遣期間が1年間に達すれば、企業は派遣労働者に対して直接雇用の義務を負っていたものを、政府にこの期間を延長させ、現在は3年間を経なければ、派遣労働者は正規雇用に未知が開けない仕組みになっているが、御手洗会長はこれさえも気に食わず、「請負法制を見直せ」という圧力をかけている。
いずれにせよ、キヤノンは、違法な偽装請負をずっと続けてきたわけであるが、今回やっと正規雇用を受け入れたということだ。
しかし、今回の件はキヤノンが違法な請負を反省したためではない。請負労働者が労働組合を結成して会社側と交渉をして勝ち得たものである。しかも、労働組合が労働局に申告をしてから10ヵ月も経ってからやっと実現したものである。
労働者の粘り強い努力に敬意を表しておきたい。
さて、一方で、請負労働者の直接雇用を約束しておきながら、これを反故にしようという悪辣な企業も依然として存在する。
青色ダーオードで有名になった日亜化学(徳島県阿南市)だ。
以前に本紙でも、請負労働者の直接雇用に道が開かれたと報じた日亜化学であるが、労働組合との交渉の席で、突然「(直接雇用の)合意がなされたとの認識は持っていない。」などと発言し、以前の約束を反故にする態度に出ている。
昨年11月に、徳島県の立会いの下で、日亜化学と労働組合との間で、「同企業で3年以上働いてきた請負企業の労働者について、3年働いてきた経験を最も重視する採用選考を行って直接雇用する」などの3項目の合意を行い、当時、県知事も「大きな前進。全国の企業のリーディングケースになっていくのではないか」と絶賛していたが、日亜化学はこの合意の存在すら否定する開き直りの姿勢を示している。県の商工労働部は、昨年11月の合意の存在を認め、「労働者の申告に基づいて、調査に入っている。やれることをやっていきたい」と述べている。
労使関係では、労働者の立場は圧倒的に弱い。だからこそ、労働法制に基づいて、労働組合などを結成し、会社側と交渉を重ねるわけだが、今回の会社側の態度は、労働法制の根幹さえ否定する態度と言わざるを得ない。
こういう「偽装請負」や違法派遣は全国に蔓延しているに違いない。そしてそれらが、所得格差の大きな一因になっており、種々の「難民」を生み出す裁断の原因になっている。
製造業にまで広がった派遣業種に対する規制強化、派遣期間に対する制限の強化、請負、派遣労働者の待遇改善などを法的に定めることこそ求められている。
全国でこういう世論が盛り上がることを期待している。


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