時々新聞社

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外国人研修:8割の企業で、長時間労働や基準外賃金未払い

2007年05月14日 | 格差社会
全国47都道府県の労働局が2005年に、「外国人研修・技能実習制度」で来日した外国人労働者が働く866事業所を監督指導したところ、その8割にあたる694事業所で、長時間労働や基準外賃金の未払いなどの違反があったことが判明したという。
この問題は以前にも取り上げておいたが、これほど大掛かりな調査結果が判明したのは、今回が始めてである。
この制度を利用して来日している外国人は現在約16万人いるが、研修、実習を名目にしながら、実際は「格安の労働者」として扱われている実態が明らかになった。
制度上、研修は労働扱いではないため、実習生がいる事業所のみが指導対象になったが、研修生も同様の職場環境で働いているとみられる。
違反が最も多かったのは、非常用設備がない、衛生状態が悪いなどの「労働安全衛生法違反」328件。次いで、1日8時間、1週間40時間を超える長時間労働(労働基準法32条違反)326件。さらに、時間外・休日・深夜の割増賃金未払い(労働基準法37条違反)270件、最低賃金を支払っていない(最低賃金法違反)65件などとなっており、違反は延べ1516件に上っていた。
鳥取県の縫製会社では、中国人実習生12人を県の定める最低賃金(時給610円)を下回る285~476円で働かせていたとして、2社とその経営者を労基法、最低賃金法違反容疑で書類送検している。また、広島県府中労基署は、2005年の1年間に中国人実習生6人を含む19人の賃金と時間外賃金の計約3700万円を支払わなかったとして、寝具製造会社と役員を労基法違反容疑で書類送検している。このほかにも、似たような事例により、指導や勧告が相次いでいる。
青森では、縫製会社の研修生が長時間労働に耐え切れずに逃走し、保護を求めるなどの事件も起きている。また、パスポートや通帳の取上げなどの人権侵害も明らかになっている。
外国人労働者による労基署などへの相談件数は年々増え、2005年には全国で約1万件に上っているという。
こういう外国人労働者を研修や実習目的で受け入れている企業は、圧倒的に中小零細企業が多い。大企業による下請けへの単価切り下げや安い外国産の商品に対抗するため、このような企業では人件費や諸経費を徹底的に切り詰めてきたが、それにも限界がある。とうとう、研修生や実習生名目で外国人労働者を受け入れ、不法な労働行為をさせることによって、かろうじて経営を維持しているのが実態であろう。
外国人研修生、実習生を受け入れておきながら、不法な労働を強いる行為は許せないが、これを取り締まるだけでは問題は解決しないだろう。
中小零細企業の経営が維持できるような価格保証制度がなければ、経営そのものが成り立たないのは容易に想像できる。かつては、Made in Japanが世界を席巻したが、いまはMade in Chinaなどが世界市場を席巻しようとしている。
経済のグローバル化の中で、中小零細企業にも方向転換が求められていることも事実であろう。
また、バブル期を上回る高収益を上げる巨大企業の陰で苦しんでいるのは、一般労働者、非正規雇用者だけでなく、下請けである中小零細企業も同様であろう。
したがって、中小零細企業も、親会社に対して、下請け単価の切り上げなどを求めて声を上げる時ではなかろうか。
この点を改善しない限り、外国人研修生、実習生の悲劇は根絶できないと思われる。また、現在日本で進んでいるワーキングプアなどを解決する近道であると思われる。


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