時々新聞社

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東京都:年収500万円未満世帯、初の過半数、過去最多

2007年05月17日 | 格差社会
東京都が5年ごとに実施する「福祉保健基礎調査」で、年収が500万円未満の世帯が昨年度、初めて5割を超え、1981年度の調査開始以来、過去最多となったことが分かった。300万円未満の世帯も全体の3割近くで前回調査より約10ポイント増加していた。雇用機会や賃金で地方より恵まれている首都・東京でも低所得層の増加が顕著になっている実態が浮かんだという。
調査は昨年11~12月、無作為に選んだ都内の計6000世帯を対象に実施、3775世帯から回答を得た(回答率63%)。
それによると、年収500万円未満の世帯は51%で、2001年より13ポイント増えた。また、300万円未満の世帯も27%に達し、前回より9.3ポイント増加。2000万円以上は1.6%で前回より1.7ポイント減少、1000~2000万円は11.5%で3.2ポイント減るなど、高所得者層は減少傾向だった。
また、収入源については、28%の世帯が「年金や生活保護」を挙げ、「仕事をしている人がいない」世帯も過去最高の22%に達するなど、厳しい生活実態が垣間見える。
今回初めて行った所得格差の意識調査(複数回答)では、所得を決める望ましい指標として「本人の努力・実績」を選んだのは79%と最も多く、能力主義への期待の強さが表れた。次いで「仕事の内容・職責」が54%で、日本の慣行として長く続く「年齢・経験年数」は16%にとどまり、年功序列的な考え方には否定的である実態が浮かんだ。
所得格差の是正手段(複数回答)としては、「努力・実績が十分報われる環境整備」(53%)▽「中途採用など就労機会の拡大」(30%)--などが多かった。また、現在の社会状況についての問いには、「格差が固定化している」と感じる人は34%に上った。
79%が「本人の努力・実績」さえあれば、豊かな収入が得られると信じているにもかかわらず、半数の世帯が500万円未満での生活を余儀なくされているのは、どうも矛盾していないだろうか。
今は、多くの企業で「能力主義」賃金が導入されている。
もともとは、人件費を抑制するための方法として導入してきたものであるが、個々の労働の能力や実績をどのように判断し、給料の額に変換するのだろうか。もちろん、個々人を見ると能力の優劣は存在するに違いない。当たり前のことである。まったく均質な労働であれば、時間単位で測定し、実績に応じて給与を支払うことは可能である。しかし、異質な仕事間の給与額を相対的に決めることができるのだろうか。また、時間単位で測定できない業務も多い。ましてや、昔と違って、徹底した分業が進められており、仕事の成果を正確に評価することは容易ではない。
「能力の高い人には、高い給料を」という総論には賛成であるが、その運用の実態には異論を唱えざるを得ない。
また、この考えを推し進めると、障害者などにはとても生活できるだけの給与を保証できなくなるだろう。必然的に、障害者、病人や高齢者など労働の成果が上げられない人間は、この世に不要だという考えに到達せざるを得ない。おぞましいまでの現実だ。
今回の調査結果は、「本人の努力・実績」といういびつな評価方法が社会に浸透した結果であり、企業の思惑が成就したものと編集長は見ているが、読者諸兄はどのように感じられただろうか。


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