阿部ブログ

日々思うこと

来年の通常国会に 『秘密保全法案(仮称)』 が提出されるが、一言述べたい

2011年11月24日 | 日記
国家的な機密情報の保全については、兼ねてから問題視されて来た長年の課題と言えるが、法律を作ったから解決する問題でもないが、無いよりはましか。。。
この法律は所謂「スパイ防止法」ではないので、この法律は問題なく国会を通過すると思われる。

海上自衛隊イージス艦の情報漏えい(2007 年)など、関連事案の発生を受けて、そのあり方が議論されてきたが、今、新たな段階を迎えようとしている。10 月7 日、政府は「政府における情報保全に関する検討委員会」(委員長・藤村修官房長官)を開き、来年の通常国会に、「秘密保全法案」(仮称)を提出する方針を確認した。
この検討委員会は、日本政府における情報保全に関し、秘密保全に関する法制の在り方及び特に機密性の高い情報を取り扱う政府機関の情報保全システムにおいて必要と考えられる措置について検討する事を目的とするもので、以下のメンバーで構成される。

■委員長  内閣官房長官
■副委員長 内閣官房副長官
■委員   内閣危機管理監
      内閣官房副長官補(内政担当)
      内閣官房副長官補(外政担当)
      内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)
      内閣情報官
      警察庁警備局長
      公安調査庁次長
      外務省国際情報統括官
      海上保安庁警備救難監
      防衛省防衛政策局長

この委員会の他、有識者会議があり、メンバーは、縣公一郎早稲田大学政治経済学術院教授、櫻井敬子学習院大学法学部教授、長谷部恭男東京大学大学院法学政治学研究科教授、藤原靜雄中央大学法科大学院教授、安冨潔慶應義塾大学法科大学院教授と言う面々。

この委員会の他、政府における『情報保全に関する検討委員会』があり、これも民間・学会の有識者をメンバーとして、日本政府の情報保全システムに関して様々議論を重ねている。当該委員会のメンバーは以下の通り。

 小池英樹  電気通信大学大学院情報システム学研究科 教授
 小屋晋吾  トレンドマイクロ㈱ 戦略企画室統合政策担当部長
 神成淳司  慶應義塾大学環境情報学部 准教授
 杉浦隆幸  ネットエージェント㈱ 代表取締役社長
 中村康弘  防衛大学校電気情報学群情報工学科 准教授
 羽室英太郎 警察大学校附属警察情報通信学校 情報管理教養部長

さて、この秘密保全法案は、秘密情報を漏えいした公務員に対する罰則を強化する内容で、情報管理や報道の自由との関係など、様々な観点から法案の意義や問題点をめぐる議論が行われるが、この法律の背景には、国家公務員における情報漏洩事件の多発がある。最近の機密漏洩に関する事案としては、以下のようなものがある。

(1)神戸海上保安部の海上保安官が、中国漁船による巡視船衝突事件に係る捜査資料として石垣海上保安部が作成したビデオ映像をインターネット上に流出させた。

(2)情報本部所属の一等空佐が、職務上知り得た「中国潜水艦の動向」に関する情報を、防衛秘密に該当する情報を含むことを認識した上で、部外者に口頭により伝達。

(3)在日ロシア大使館書記官から工作を受けた内閣情報調査室職員が、現金等の謝礼を対価に、職務に関して知った情報を同書記官に提供したものでシェルコノゴフ事件と呼ばれる。

(4)海上自衛隊三等海佐が、イージスシステムに係るデータをコンパクトディスクに記録の上、海上自衛隊の学校教官であった別の三等海佐に送付し、当該データが別の海上自衛官3名に渡り、更に他の自衛官に渡ったもので、これはMDA秘密保護法違反である。

(5)在日中国大使館駐在武官の工作を受けた日本国防協会役員(元自衛官)が、その求めに応じて防衛関連資料を交付。

(5)在日ロシア通商代表部員が、現金等の謝礼を対価に、防衛機器販売会社社長(元航空自衛官)に米国製戦闘機用ミサイル等の資料の入手・提供を要求。

(6)在日ロシア大使館に勤務する海軍武官から工作を受けた海上自衛隊三等海佐が、現金等の報酬を得て、海上自衛隊の秘密資料を提供したものでボガチョンコフ事件と呼ばれる。

(7)警視庁公安部外事2課の国際テロ対策に係るデータがインターネット上へ漏洩した事案。漏洩データには、警視庁職員が取り扱った蓋然性が高い情報が含まれていると認められている。

これら上記事案頻発している為、単なる国家公務員法などでの対応ではなく、国家機密の防護と漏洩防止を主眼とした法律と体制整備が必要と判断したものである。まあ、上記の事案など偶々発覚したもので氷山の一角の一角であろうが~

この手の法律の穴は色々あるが、ポイントの一つとしては、もう少々対象範囲を広げる必要がある点。国家公務員だけではなく、勿論地方公務員(警視以下の警察職員含む)や国会議員とその秘書(事務所関連者含む)、及び政党関係者も含むものでないと、漏洩は止まないだろう。
また本格的な国家機密防衛にはやはり、カウンターインテリジェンス機関の創設が望まれる。警察庁や警視庁公安部などでは対応に限界があるのは間違いなく、警察関係者は大いに反対するだろうが、ここは国家存立の観点から、一元化した組織、若しくは外事部門は警察に残し、国内防諜組織を組成するのが望ましい。

この際、公安調査庁は関連法案共々廃止し、警察外事部門への一部編入と国内防諜組織への編入を行うのが、人的リソースの有効活用となろう。
潜在的敵性団体・個人などの監視・偵察は、国内防諜組織が担う事とする。

防衛省の情報・対情報関連組織においては、警務部隊の隊内監視機能の強化と増強、及び調査隊の更なる充実、及びサイバー諜報戦への対応能力拡充を期することが殊更に重要である。特に情報関連隊員については、ICTによる防諜監視を実施することが必須。

まあ、色々述べたが、最低でも国家公務員を対象とする秘密保全の法律であれば、やはり人的かつICTを駆使した監視・偵察を行う組織は必須であろう。法律を作って罰則を強化しただけでは、情報の漏洩は今後も水面下で起こり続ける事は議論の余地がないだろう。
でも、そもそも国家として秘密など、この日本国・政府にあるのだろうか? 個人的には防衛計画なども公開してOKだと思う。どうせ計画通りには行かないから。それと人間の考えることはみな同じで、既に公開されている情報などで十分推測可能である。
秘密は持たないのが「第一原則」とし、秘密文書やデータも守秘期間が過ぎたら全部公開するべき。この意味での国家文書管理組織の重要性がわかるだろう。これは後日機会があれば書きたい。