二刀流実現の条件

2017-11-29 01:26:31 | 雑感

大谷がどこに向いているか、いろいろな意見があって面白い。

アメリカの論調は、「ヤンキースが大本命」というのが多いが、日本では、「田舎の弱小チームのほうがいい」という意見が多い感じ。

まずアメリカ人はホント金が最優先なんだなというのが分かる。大谷に提示できる金額は、最大でも4億円だ。ヤンキースはその中で2位。その他、NYでプレーすることの意味、ヤンキースの一員になることの意義などが語られるが、最終的には「それがビッグマネーに繋がるから」という話。全部金基準。

その次に出てくるのが、ヤンキースは王朝が始まる、新時代のコア4を目指せる、という「ワールドシリーズ優勝が狙えるから」というものだ。これは分からんでもない。

正直、金と優勝でいえば、現時点で拘る必要はないだろう。むしろ、これから6年間、最初のチームで実績をあげ、29歳の時点でFAになれば、巨大契約も夢ではない。その頃の相場では7年3億ドルも見えてくるだろう。

日本側の意見は、「二刀流が実現できる環境を提供してくれるチーム」という意見が全てといってもいいくらいだが、「実現できる環境」というのは、ずいぶんブレ幅のある概念だと思う。

日ハムのような育て方を期待している人が多く、「2,3年かけて」、「結果をすぐ求めない」、「栗山監督のように体をはって大谷を守ってくれる人がいるところ」などの意見を本当によく目にする。そして「結果」をすぐ求められるヤンキースは向いていない、としてどや顔でしめる感じだ。

しかし、ヤンキースに限らず、結果を出せない選手をメジャーで2,3年かけてじっくり育てる球団なんてない。「育てる」というのは、一般的にはまずは「マイナーで」という意味で使われる。打率2割の打者を2,3年もメジャーで使うチームなんてあるわけないのだ。「結果を出せない」にも程度問題がある。この危険性は無視できない大きさだと思う。

ただでさえ、メジャーはロースターが25名で日本より少ない。また、才能あふれるプロスペクトがマイナーにはわんさかいる。若手にメジャーでの経験をさせる、というのは重要なのだ。昨夏ヤンキースがA-rodをシーズン中に強制引退に追い込んだのも、若手に枠をあけるためだ。その空いた枠に入ってきたのが、ジャッジでありサンチェスなのである。再建期のチームならばむしろ若手間の競争は激しい。トッププロスペクトが山のようにいる中、「結果が出ない大谷」に拘る理由はない。

したがって、再建期に入っている地方の球団のほうがゆっくり「メジャーで育ててくれる」、というのは幻想である。ある程度の余裕は見てくれるかもしれないが、2、3年ものんびり構えてはくれない。また特例を認めればチーム内に不協和音が生じてしまう。この点ではヤンキースもパドレスも違いはないと思う。

二刀流を実現するには、メジャーで「同時に」成功する必要がある、と前に書いたが、「同時に」成功するための条件とは何だろうか。打者として結果を出すのには時間がかかると思う。松井は日本で50本塁打・打率3割3分4厘・長打率6割9分2厘、本塁打・打点の2冠王という完ぺきな状態でメジャーへ渡った。その松井でさえ、初年度は本塁打16本、長打率4割3部5厘、打率2割8分7厘と大きく数字を下げたのだ。下げたというよりは、長距離砲としては成功しなかった(ヤンキースタジアムはリーグ有数の左打者天国であるにもかかわらずだ)。打者大谷はポテンシャルはあるかもしれないが、シーズンを通じて活躍したことがない。まだ成長途上の選手だ。結果を出すまで時間がかかるということである。

個人的には、以下の育成方法がベストだと考える。まずはマイナーで投打共に結果を出すまで待つ。次に早ければ8月、遅くとも9月のセプテンバーコールアップでメジャーに昇格させ、40~50試合程度様子を見る、という起用法が一番大谷のためだと思う。とにかく必要なのは「多くの経験」だからだ。マイナーなら経験を積める。思うようにいかない場合は、秋口のアリゾナ・フォールリーグや、カリビアンリーグで修行させ、来春マイナーリーガーの身分でキャンプに招待する。要は、他の若手と同じということだ。

「同時成功」が難しい上に、投手としてメジャー、打者としてマイナーという「使い分け」ができないのが育成上の難点なのだから、最初から両方マイナーでやらせればいいのである。「二刀流大谷」というくくりで見れば、まだ「恐ろしい才能の塊」、という段階の選手に過ぎないからである。

しかし、メジャー球団は本音では、大谷は投手としてはすぐメジャーで使える、という皮算用をしている(田中・ダルビッシュよりちょっと落ちるという見立てだろう)。つまり「投手大谷」は最初からメジャーで使いたい。「投手大谷はメジャーで」という前提で条件を出してくるということだ。この「目先の誘惑」を断ち切り、「マイナーで結果を出してください」という提案ができるチームこそ、本気で二刀流を実現させようと考えているチームだと思うがどうだろう。

大谷自身も代理人も、結果が出るまで「メジャーでの特別扱い」をしてくれる、という期待をしているとしたら、痛い目に遭うような気がする。

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