民法判例まとめ33

2016-06-28 23:18:00 | 司法試験関連

共有物分割の方法

①  裁判所による共有物の分割は、その本質は非訟事件であって、法は、裁判所の適切な裁量権の行使により、共有者間の公平を保ちつつ、当該共有物の性質や共有状態の実状に合った妥当な分割が実現されることを期したものと考えられる。

②  したがって、右の規定は、すべての場合にその分割方法を現物分割又は競売による分割のみに限定し、他の分割方法を一切否定した趣旨のものとは解されない。

③  そうすると、共有物分割の申立てを受けた裁判所としては、現物分割をするに当たって、持分の価格以上の現物を取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせ、過不足の調整をすることができるのみならず、当該共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法(「全面的価格賠償の方法」という)による分割をすることも許されるものというべきである。

最判平成8年10月31日 百選76事件

・本判決は「特段の事情」が存すれば、全面的価格賠償も許されるとした。「特段の事情」に関しては共有物を取得する者の支払能力が重要である。

金銭所有権

①  金銭は、特別の場合を除いては、物としての個性を有せず、単なる価値そのものと考えるべきであり、価値は金銭の所在に随伴するものであるから、金銭の所有権者は、特段の事情のないかぎり、その占有者と一致すると解すべきである。

②  また金銭を現実に支配して占有する者は、それをいかなる理由によつて取得したか、またその占有を正当づける権利を有するか否かに拘わりなく、価値の帰属者即ち金銭の所有者とみるべきものである。

最判昭和39年1月24日 百選77事件

・占有=所有権説に伴う問題点を押さえる。

  → Xから金銭を騙取したAが騙取金の所有権を取得するので、Aに対して不当利得返還請求権を有するに過ぎないXは騙取金については何らの優先権を持たない一般債権者となり、第三者異議が認められず、他方で、騙取金がAの責任財産に組み込まれ、Aの債権者Yが騙取金相当額の責任財産の増加という棚ぼた式利益を得るという「不公平感」である。

  → この問題は、騙取金に対する不当利得返還請求権に他の一般債権者に優先する地位が与えられていないことに基づく。

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