『ソウルボート航海記』 by 遊田玉彦(ゆうでん・たまひこ)

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「力む」とは2

2010年10月28日 09時57分28秒 | 合氣道のすすめ
もう一度、合気道の稽古で「力む」場面を説明します。稽古相手と対面して、片方が技を掛け、もう一人がその技を受けます。技を掛ける方は、その瞬間に力みを無くしてスムーズに動きますが、初心者の場合はここで力んでしまいます。なぜなら、技を掛けようと意識し過ぎて腕力に頼り、筋肉が硬直してしまうからです。このときの力みを「屈筋力」と呼びます。屈筋は物を持ち上げたり引っ張ったりする筋力(力こぶ)で、筋肉(上腕筋)が縮んで出すパワーです。一般に腕力とはこの屈筋力のことを指しています。

一方、あまり認識されていない筋力が、「伸筋力」です。これは筋肉の束が伸びることで出るパワーで、手腕を突き出す力です。実は、この伸筋力は、屈筋力の数倍のパワーを持っています。筋肉を縮めるよりも、伸ばすほうが力強いのです。例えば腕を強く引っ張られたら引っ張り返さず、逆に力みなく腕を突き出せば、相手の力を簡単に押し返せるのです。

さて、筋肉の働きはそうなのですが、では、いざそうなったらどうか。おそらく殆どの人が力んでしまうでしょう。押されたら押し返そうと、また引っ張られたら引っ張り返そうと反射的にそうなります。興奮状態なら尚更そうなり「力み」ます。屈筋パワーVS屈筋パワーです。腕力のあるほうが勝ことになります。

では、そのとき「力み」を消すにはどうすればいいのか。筋肉の動きは呼吸と連動していますから、息を吐きながら身体の力を抜いて腕を伸ばします。とはいえ、これがなかなか簡単ではありません。手首を掴まれると、反射的に力みが入ります。力むなと思っても、身に付いた動きに逆らえないのです。ですから合気道では、屈筋力に頼らない稽古を何度も繰り返し、力みを抜くことを身体に叩き込んで覚えさせます。

これが技の基本といえ、どんな動きでも力まない身体づくりを目指します。つまり、たとえどんな不利な状況下でも、フリーズ(固まる)しないということです。人の運動能力を高めるテクニックなのですが、学校の体育や一般スポーツで教えられることはあまりありません。ただ、「力むな~!」と言うだけでは力みは抜けません。どうしたら力まないでいられるかを教える具体的なメソッドが必要なのです。
(つづく)