杏林大学呼吸器内科 『あんずの呼吸 part2』

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コソ染め太郎のコソ染め日誌23(続き)

2011年12月03日 | こそ染め道場
こんばんわ。コソ染め太郎でございまする。


今日は前回の続きです。


前回のをご覧になってない方はコチラから↓
http://blog.goo.ne.jp/23c2230/e/74cf4d3cde19549f4ce5a55104bb8e44






という事で、今日のコソ染めです。

グラム染色と尿中抗原の感度、特異度を調べてきたよ。


グラム染色:感度 80%

すなわち
グラム染色で肺炎をひっかけられる確率=8割
って事みたいです。
(肺炎の診断基準は書かれておらず)


そして菌別では…

肺炎球菌
感度68.2%、特異度93.8%

インフルエンザ桿菌
感度76.2%、特異度100%

(大路剛;市中肺炎の起因菌の想定法,medicine vol45 no10 2008-10)


と、特異度ヤバス!
感度は抗菌薬投与済みだったりが影響しているんじゃないかという考察でした。



他の文献では…



これは何か現実的な数字に見えますね。
(グラム染色と培養の結果がどう合わないのか具体的な記述はありませんでしたが)
やっぱり培養で出てこない事は結構あるのかも…




一方、尿中肺炎球菌抗原の感度、特異度はと言うと…

感度 80.4%、特異度 97.2%(CHEST,2001)
感度 75%、特異度 84.1%(医学検査,2009)
感度 60~80%、特異度 70~90%(vs痰培)
感度 70~90%、特異度 70~90%(vs血培) (診断と治療,2009)
感度 82%、特異度 97%(J Clin Microbiol,2003)


Totalすると
感度60~80%、特異度70~97%

感度は少し低いのですが、特異度はかなり高いと言えるでしょう。


※肺炎球菌ワクチン接種直後、肺炎球菌感染症後2週間、小児は定着菌により
 偽陽性になる事があります。 Streptococcus mitisやStreptococcus oralis の
 感染症では交差抗原を有するため,偽陽性になることが知られています。
 また早期(3日以内)では偽陰性になる事があります。




う~ん。
思ったよりもグラム染色と尿中抗原の特異度が高いですね。

それに比べ僕は培養で出ない事が多いような気がします。
実際に僕のグラム染色と尿中抗原の特異度ってどんなモンなんでしょうか。
よし、計算してみるか!


グラム染色と培養の一致率=50%

尿中抗原と培養の一致率=33.3%




うわ~…


うわ~…


眼も当てられない。



特に尿中抗原ヤバイ!
マジで!?
これおかしいでしょ!
こんなんだったら検査の意味なし!


もう尿中抗原なんてやめましょ!
取るだけムダ!







ちょっと待って下さいよ。
痰の質が悪い可能性はないでしょうか?

そうですよ!
尿中抗原がこんなヒドイ検査なはずがないですよ!
Geckler4群以上でまとめてみましょう。


グラム染色と培養の一致率=57.2%

尿中抗原と培養の一致率=50%




ま、多少は見れるようになったかな?
N数が少ないんで何とも…


あとは技術的な問題だったり、尿中抗原の偽陽性に関する問診をしっかりやればもう少し上がるかもしれません。
今後も集めてN数増やしていきたいと思います。

でも、何か…




何か…





くやしいです!

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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
きちんと検証してみること、素晴らしいですね。 (三省)
2011-12-05 00:03:12
 高知県の診療所医師・三省です。興味深く拝見しました。
 コソ染め太郎先生の、読みやすい軽妙な文体で楽しく読みました。
 「臨床をしていて何となく漠然と感じていること」と、それを「きちんと一度纏めてみて、数値化してみること」は、感じていたことを‘見える化’して、ガーンッ と思ってでも、では何がいけなかったんだろう、と振り返るあたり、素晴らしいなあ、と思って見ております。
 調べるとか、纏めるって、そんなことですよね。研究発表のための研究ではなくて、臨床現場で率直に疑問を感じたことを纏めてみると、漠然と感じていたことが、見えていなかったものが見えてくるようになったり、そうした意識で診療すると、もっと精度が高まったり。結局は纏めること自体が診療の質を上げることになり、患者さんに良い結果をもたらすことになる。纏めて発表してハイ終わり、ではなくて、それが今後も自分自身の診療にも他人の診療にインパクトをあたえることにもなる、そのようなまとめと発表はとても楽しいし、長続きしますよね。
 えらく長ったらしく書いてすみません。杏林大学呼吸器科って、なんだかとっても楽しそうなところですね!
 診療所で孤軍奮闘している町医者からでした。
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Unknown (くつな)
2011-12-05 05:52:10
肺炎球菌はなかなか生えないですよね。
Autolysinが関与しているのではないかという点と、あとは釣菌の段階でα-Streptcoccusと間違えちゃってしまうというミスもあるようです。

血液培養陽性をゴールドスタンダードとした場合に、喀痰グラム染色で多数の菌を認めるという症例であっても、肺炎球菌性肺炎の45-50%、インフルエンザ桿菌性肺炎の34-47%は喀痰培養が陰性となるとされています。
肺炎球菌性肺炎の場合、培養陽性をゴールドスタンダードとすること自体が妥当ではないのかもしれません。
個人的には培養で生えなくても気にしていません(微生物検査室が外注ですし・・・)。

ちなみに、上記に関する文献です。
Barrett-Connor E. The nonvalue of sputum culture in the diagnosis of pneumococcal pneumonia. Am Rev Respir Dis. 1971 Jun;103(6):845-8.
Wallace RJ, Musher DM, Martin RR: Haemophilus influenzae pneumonia in adults.  Am J Med  1978; 64:87-93.
Levin D, Schwarz M, Matthay R, et al: Bacteremic Haemophilus influenzae pneumonia in adults: A report of 24 cases and a review of the literature.  Am J Med  1977; 62:219-224.
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Unknown (コソ染め太郎)
2011-12-05 21:59:17
〉三省先生
ありがとうございます。
先生の心のこもったお言葉をいただくだけで涙が溢れて止まりません。
周りを見ていて思うんですが、臨床で大事なのは「興味」なんでしょうね。
病気に対する興味。患者さんに対する興味。知識に対する興味。
ま、興味ある事だけやってちゃそれはそれで駄目なんですけどね(笑)




〉くつな先生
そうなんですよ。全然生えないんですよ、肺炎球菌の奴!
それに比べ調べた論文たちの特異度の良さに驚愕してました。
特に最初に紹介した論文。
グラム染色の特異度ほぼ100%ってお前…
培養をゴールドスタンダードにする事に無理があるかもという先生のコメントにただただうなづくだけです!
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2009年の臨床微生物学会で (師範手前)
2011-12-20 19:47:52
後出しですが。実は2009年の臨床微生物学会で報告しました。
対象検体は2008年に当院で来た検体4800件のうち、喀痰190件、尿219件、膿汁145件に加えて、血液培養陽性液110件の700件弱でした。勿論材料採取が良好なものに限定版しましたが。で、完全一致率⇒菌種推定と検出菌が合致したもの。属レベル一致率⇒属は合ったが種は外れ。

喀痰の完全一致率⇒42.2%、属レベルまで一致率⇒57.3%、完全不一致率⇒5.2%、結局発育しない⇒12.5%

ここから、種一致と属一致は混同。

尿の一致率⇒74.7%、不一致⇒18.7%
膿汁の一致率⇒82.1%、不一致率⇒2.8%
血液培養陽性液の一致率⇒94.5%、不一致率⇒4.5%

でした。

やっぱり喀痰は難しいのが分かったけど、会場に居た重鎮から研究内容が悪い(遺伝子の大家?)とお叱り受けて会場は騒然としました。
加えて学会発表のメイン会場のトップバッターだったので、以降の演者はやり難かったようです。おおさぶい。
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Unknown (コソ染め太郎)
2011-12-21 00:37:26
>師範手前様
やはり喀痰は難しいんですねぇ。プロでもその数字ですか…
むしろ尿培養の不一致率が思ったより高いですね。
主に属レベルの不一致なんでしょうか?

研究内容が悪いとはキツイ一発ですね。
恐ろしや…
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尿の不一致は (師範手前)
2011-12-21 01:58:47
腸球菌⇆B群溶連菌、大腸菌⇆クレブシエラ、プロテウス⇆緑膿菌でしょうか。
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Unknown (コソ染め太郎)
2011-12-22 00:00:02
あ~なんか経験があります。尿培あるあるですね。
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