最初に私の告白から。 『神曲』は私の書棚に遥か昔から、黙ってそっと立って居た。 いつのことか思い出せないが、少しページを繰って投げ出したままになっている。
自己弁護がましいけれども、この『神曲』は、”重要な古典であり、ひとつの世界、または文化あるいは芸術を理解するには必読の書といわれながら、読み通した人が驚くほど少ない”点で<源氏物語>に似ている、と思う。 違うかしら?
だが、そんな困った私に助け舟を出してくれているかのように響く本書の書名に、私は直感的に飛びついた。(全くわからなかった)という、何十年も負い目に背負ってきた無念から解放されるなら・・・と 天の声がどこかでささやいたようだ。
まず、本書は多くの角度から『神曲』の存在意義/功績を説いている。それは、① 3行定型詩を確立した欧州文学史上の意味合いであり、② 地獄と天国の間に【煉獄】概念を明示することで、三位一体概念を大衆に理解させるための恰好の教典になったこと、そして③ 『神曲』に影響されたペトラルカ、ボッカチオなど後世の芸術家が小説を発展させた。 ④ 言語学的にいえばフィレンツエ地方の方言に過ぎなかった”俗語”で美しい韻律を駆使して現代イタリア語の基礎をなしたことなどだ。
ダンテが『神曲』に用いた”俗語”はラテン語とは違う。私を驚かせたのは、その”俗語”が700年後の今も注釈なしに読解可能なほど、イタリア語を作り上げたことである。実際、著者によると、今もイタリアの高校では『神曲』が・・・そのまま・・・授業で使われているという。ダンテの生きた時代は日本でいうと鎌倉時代。いうまでもなく鎌倉言葉は現代日本語と似ても似つかない。 日本の古典文学学習を思い出そう。 古語辞典の助けなしでは読解できないし、教科書は脚注だらけだ。
だが、そういう時代ギャップは日本だけでない。現代世界に国家の体裁をなしている国の言葉で、イタリア語のように700年前とほぼ変化していない言語など有ろうか? 無い。 言語に「完成度」と表現するのが妥当するなら、ダンテは詩を用い、とんでもない民族遺産を創ったのである。 この凄さの意味するところが、ご理解戴けるだろうか? 私は、何度も本を置き、文字通り仰天した。
それはさておき、書評に本書を取り上げた理由は、①~④のうち特に②を、私なりの理解で此のコラム読者と一緒に追いながら、1神教風土に生きない人間がキリスト教に生きる人々の心の成り立ちを可視化できるのか試みつつ、暗闇の手探りではあろうが、頭を整理したいからに尽きる。 ≪ つづく ≫
自己弁護がましいけれども、この『神曲』は、”重要な古典であり、ひとつの世界、または文化あるいは芸術を理解するには必読の書といわれながら、読み通した人が驚くほど少ない”点で<源氏物語>に似ている、と思う。 違うかしら?
だが、そんな困った私に助け舟を出してくれているかのように響く本書の書名に、私は直感的に飛びついた。(全くわからなかった)という、何十年も負い目に背負ってきた無念から解放されるなら・・・と 天の声がどこかでささやいたようだ。
まず、本書は多くの角度から『神曲』の存在意義/功績を説いている。それは、① 3行定型詩を確立した欧州文学史上の意味合いであり、② 地獄と天国の間に【煉獄】概念を明示することで、三位一体概念を大衆に理解させるための恰好の教典になったこと、そして③ 『神曲』に影響されたペトラルカ、ボッカチオなど後世の芸術家が小説を発展させた。 ④ 言語学的にいえばフィレンツエ地方の方言に過ぎなかった”俗語”で美しい韻律を駆使して現代イタリア語の基礎をなしたことなどだ。
ダンテが『神曲』に用いた”俗語”はラテン語とは違う。私を驚かせたのは、その”俗語”が700年後の今も注釈なしに読解可能なほど、イタリア語を作り上げたことである。実際、著者によると、今もイタリアの高校では『神曲』が・・・そのまま・・・授業で使われているという。ダンテの生きた時代は日本でいうと鎌倉時代。いうまでもなく鎌倉言葉は現代日本語と似ても似つかない。 日本の古典文学学習を思い出そう。 古語辞典の助けなしでは読解できないし、教科書は脚注だらけだ。
だが、そういう時代ギャップは日本だけでない。現代世界に国家の体裁をなしている国の言葉で、イタリア語のように700年前とほぼ変化していない言語など有ろうか? 無い。 言語に「完成度」と表現するのが妥当するなら、ダンテは詩を用い、とんでもない民族遺産を創ったのである。 この凄さの意味するところが、ご理解戴けるだろうか? 私は、何度も本を置き、文字通り仰天した。
それはさておき、書評に本書を取り上げた理由は、①~④のうち特に②を、私なりの理解で此のコラム読者と一緒に追いながら、1神教風土に生きない人間がキリスト教に生きる人々の心の成り立ちを可視化できるのか試みつつ、暗闇の手探りではあろうが、頭を整理したいからに尽きる。 ≪ つづく ≫