自遊空間、 ぶらぶら歩き。

日々見たこと、聞いたこと、読んだこと、考えたこと

路地の記憶(小学館)~佐藤秀明さん、阿久悠さん

2009-01-23 | 
カメラマンの佐藤秀明さんが撮りだめた、全国の路地の四季の写真255点とエッセイ、それに加えた阿久悠さんの「詞」20編です。

阿久悠さんが亡くなったあと、この本は出版されました。
絶筆といっていいでしょう。

北海道から沖縄まで、路地をはさんで暮らす人たちの話し声や、テレビからの音が聞こえ、夕飯のおかずの匂いがしてきそうな写真です。

軒下にはプランターや鉢植えの花。
やったばかりの水のしずくが残っています。


目黒、早稲田、本郷・・・、
本の中に、歩いてみたい場所をたくさん見つけました。

あみだくじ 阿久悠さんの1編です。

私はスースー泳いでいるには
達者な水鳥だった。
時には拍手も受けた
そんな時
得意を示しながら
たっぷりと泳いでみせたが
さて水鳥は鳥だから
飛ばなければならないと思うと
その勇気がなかった
私は自らを責め
苛立(いらだ)ちながら
泳ぎつづけていた

私がサラリーマンだったころ
何者かになりたくて
何処かへ行きたくて
身悶(みもだ)えつづけているのに
居心地のいい池にいた

そのころ私は時々
知らない町の路地へ
入って行くことがあった
迷い子になりたかった
歩いても歩いても出口がなく
歩いても歩いても退屈しない
そんな人の匂いのする路地を
あみだくじのように歩いた
そう あみだくじ
どこかに当たりの出口があって
ヒョイと飛べそうな気がしてたのだ


ノンフィクションライターの最相葉月さんが、日経の夕刊にこんなエッセイを載せていました。

生前の阿久悠さん、ある出版物に4年も連載したのに、担当者と直接会ったことがない。連載終了が決まって、これではいけないと阿久さんのほうから会いに行ったと。

出版の世界でも、プロの仕事をする人が減っているんですね。


さて残念ながら、私が住んでいるところは路地がありません。路地を見つける旅でも始めますかっ。




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