『ワイルドサイドをほっつき歩け』は筑摩書房のPR誌「ちくま」に連載されていたエッセイを(人名は仮名)まとめたものに書きおろしを加えた1冊です。
あとがきに記した日付はちょうど1年前、2020年1月27日です。
中国武漢の都市封鎖は始まっていたものの、遠く離れたイギリスでは新型コロナウイルスの脅威はまだ問題になっていないようで、コロナのコの字も出てきません。
そのあとがきにはこうも書かれています。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で青竹のようにフレッシュな少年たちについて書きながら、そのまったく同じ時期に人生の苦汁をたっぷり吸い過ぎて、メンマのようになったおっさんたちについて書く作業は複眼的に英国について考える機会になった。二冊の本はコインの両面である。
青竹とメンマは発行に1年の差はあるけれど、話題性では青竹のほうに軍配があがったように見えます。
でも、私はコインの両面を十分楽しみました。
英国の医療制度は大まかに分けてNHS(国民保健サービス)とプライベート(民間医療サービス)の2つに分かれ、自分でお金を払って治療を受けられる人はプライベートを、無料で治療を受けたい人はNHSを利用するそうです。
ところがこのNHS、利用するのがおそろしく困難なんだそう。自分がかかる診療科にたどりつくまで、時間と手間がかかるのです。場合によってはその間に病気が進行してしまうほど。
でも、英国のEU離脱決定に影響を与えたかもしれない、このNHSを労働者階級は愛してやまないのです。
一刻を争う新型コロナ感染症の治療に、この2つのシステムはどう機能したのでしょう。
みかこさん、コロナ禍の1年に、時折りリモートで英国から発信してくれていますが、じっくり文章で読みたい私です。
今日のお使い時に寄ったバラ園越しの青空がきれいでした。