読者諸賢、ハウリン・メガネである。
昨日に引き続きウィルベリーズの話である。
今回は
トラベリング・ウィルベリ「Vol.3」
(90年 EUオリジナル 西ドイツプレス盤)
私は前回書いた「Volume One」を聴き終え、
「にんまり」しながら盤を置き換えた。
1stがあれだけ「レイドバック感」
を匂わせていた以上、
同系の深化をしていると予想していたのだ。
僕はどうしてもボブの
「しゃがれたグルーヴ」
(分かるかなこの表現。
僕にとってボブのグルーヴは
"うねる"でも"巻き込む"でもく
"しゃがれている"のだ)
が好きで、「Volume One」収録曲「Congratulations」のような方向を期待していた。
そして針を落とした。
針を落としてA-1が鳴った瞬間に
僕は慌ててステレオのボリュームを落とした。
音がデカい!
ステレオの前でうろたえつつ、
そのまま続くA-2でうーむ、と唸りつつ確信した。
これ、盤自体のカッティングレベルが高いのだ。
マトリクス単位でのカッティングレベル差
というのもあるだろうし、ユーロ盤という特性もあるだろう。
ただ、これはおそらく違う。
ウィルベリーズ自体が
「高い音圧」を望んでいたのだ。
サウンドプロダクトの印象で僕はますます確信を深めた。
この盤、リンの印象が少ない。
さらに言えばこれはトムの音だ!
リンとトム
この2人のバランスの変化は2人がからんだ次作
トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの名盤
「Into The Great Wide Open」(91年)
で見せる
リンの控えめなプロデュースっぷりへとつながっていく。
前作の発表後、
レフティことロイ・オービソンの急逝に見舞われたウィルベリーズは
今作をロイ抜きの4人で製作している。
実際の力関係は不明だが、
前作は元々ジョージの大ヒット・アルバム
「Cloud Nine」からの発展であり、
あれはリンがプロデューサーだった。
おそらく今作で初めて最初から4人で作る、
となった際に、一番若いトムに最も馬力があったのだと思う
(そして皆がトムの力量を信頼して任せたのだろう)。
サウンドのバランスが前作よりロック寄りになっており、
それに引っ張られるように全員、
ボーカルのテンションが高い。
もっと言えばサウンド全体のテンションが高い。
明らかに"ロック"に寄せている。
そう、ロックバンドとしてのウィルベリーズは
この「Vol.3」で完成されたのである。
前作以上に全曲で満点を差し上げたい大名盤なのだが、
ここはあえて、A-2「Inside Out」
と
B-3「New Blue Moon」を押しておこう。
前者はレイドバックしつつもタイトなボーカル・コーラスワークが楽しめる名曲。
後者はオリエンタルなムードを漂わせるコーラスワークに
全員が各々のカラーを出したボーカルを乗せている名曲である。
※前回からの繰言になるが、「Vol.3」も当然ヴァイナルじゃなきゃ駄目だ。
※「Vol,3」は「Volume One」よりもCDでの「ノッペリ感」が酷く、
ここまで私が書いてきた内容が
まったく意味をなさなくなってしまう。
※大事なことなのでもう一度言う。
ヴァイナルで聴け!
さて、ウィルベリーズのオリジナルアルバムはこの「Vol.3」と
前作の「Volume One」の2枚だけ。
先日トムも亡くなり、
残されたのはボブとリンだけとなってしまった。
本当に残念でならない…
もはや復活することは出来ないが、
この2枚の名盤を残したウィルベリーズは
本当に素晴らしい「バンド」だった!
という事実。
この事実に裏付けられた音こそ、色褪せずに
僕らの音楽ライフに一生残り続けるのである。
そしてこの盤何度も言うが、
やっぱりヴァイナルで聴かなきゃならぬ!
ヴァイナルなら、きっと伝わる!
きっと泣ける!
きっとハウル!
ハウリンメガネでした。