【北京時事】中国の著名人権派弁護士・浦志強氏(50)がインターネット上で発信した言論をめぐり懲役3年、執行猶予3年の有罪判決を受けた事件に対して欧米諸国や日本政府が相次ぎ「懸念」を表明した。
一方、共産党機関紙・人民日報系の環球時報は判決が言い渡された22日を挟み、9~24日に4回も浦氏に関する社説・論評を掲げる異例の報道で「言論の自由には境界がある」と強調。国内世論も巻き込み激論になっている。
習近平指導部は、言論の自由が拡大すれば、一党支配体制が揺らぐと危機感を強めている。
「(自由や法の支配など)国際社会の普遍的価値にのっとった扱いを受けることを強く望む」。24日の記者会見で浦氏の有罪判決について「懸念」を表明した菅義偉官房長官はこう続けた。
中国の人権問題にあまり言及しない日本政府としては突っ込んだ見解だ。米国務省も「困惑している」と表明、有罪判決撤回を要求し、浦氏を「世界に知られる勇気ある弁護士」とたたえた。
一方、環球時報は、欧米など民主主義国家や中国国内の改革派知識人らが、浦氏への支持を拡大させる中、判決翌日の23日の社説で「(判決は中国で)言論の自由における新たな境界線を作った」と強調。
「西側諸国は、中国の司法行為への反対が、対中政治・世論闘争でカギとなる戦場の一つと見ている」と警戒感をあらわにした。
24日の社説では「浦氏の有罪判決に反対する国内外の勢力は、言論の自由が、中国の法律より高い優越した権利であると見ている」とけん制している。
浦氏は、訴訟・法律を通じて共産党・政府を監督・批判できる言論空間を広げようと闘ってきた。
党・政府が主導するプロパガンダや歴史観に対する議論を巻き起こそうと、ネット上であえて挑発的な言論を投げ掛けた。中国憲法が定めた「言論の自由」や「国家機関・公務員への批判権」を最大限利用し、「言論の自由」の境界線を動かそうとしてきた。
浦氏の弁護人も初公判で「言論の自由の境界線はどこにあるのか」と提起した。
有罪判決で浦氏は弁護士資格を失うが、中国社会で存在感を高めた浦氏への「報復」を狙った当局の摘発は結局、中国に「言論の自由」を求める国際社会や国内の声を高める結果になっている。
[時事通信社]