熊本地震の発生から2週間で、震度1以上の有感地震の発生数が千回を超えた。同じ内陸型の阪神大震災や新潟県中越地震と比べても速いペースだ。
14日と16日に震度7の地震が連続して発生し、その影響が広範囲に及んでいることが要因とされる。過去に例を見ない経過をたどる熊本地震。活断層にはまだ「割れ残り」も指摘され、予断を許さない状況が続いている。
「過去の経験予測が当てはまらない」。14日に最初の地震が発生してから6日後の20日、気象庁の青木元地震津波監視課長は「余震発生確率」の公表を見合わせる考えを示した。
余震発生確率は、阪神大震災を機に導入された。被災者により高い注意を促すためだ。この通例に従い、気象庁は一夜明けた15日、「3日以内にマグニチュード(M)6・0以上の発生確率は20%」とする余震発生確率を公表していた。
ところが直後の16日未明、M7・3の激震が襲う。「過去の経験予測」が当てはまらない事態に気象庁は当惑。2週間で千回のハイペースについても「異常事態」と受け止めている。
気象庁によると、28日午後11時までの有感地震の発生数は1027回。新潟県中越地震の場合、千回に達したのは1年後だった。阪神大震災は震度計が少なく比較できないが、M3・5以上に限ると、阪神が2週間で95回だったのに対し、熊本地震は熊本地方だけでも218回(28日午後1時現在)に上っている。
ハイペースの理由は何か。東北大災害科学国際研究所の遠田晋次教授(地震地質学)は「M5、6級が何度も起き、それらの余震が幾重にも重なっているのではないか」と分析する。
これまでの地震は震源地周辺で余震を繰り返していたが、熊本地震は前震と本震の震源地だった熊本地方だけでなく、阿蘇、大分県中部の計三つのエリアに広がる。千回は、各エリアで起きている地震を積み重ねて合計したもので、範囲が広い分、ペースも自然と速くなる。
広範囲に及んだのは「これらのエリアは断層が多く、誘発されて、それぞれに地震を起こしていると考えられる」(遠田教授)。
気象庁などによると、震源が浅いことも理由の一つとされる。余震は、本震で破壊されずにひずみの残った地盤が、後に割れることで発生する。震源が浅いと地中の圧力が弱いため、押さえつけられることなく、地盤が割れやすくなる。特に九州は小さな活断層が複雑に分布しており、地震を誘発しやすい環境にある。