ハンギョレ新聞 2000年にニンニクに対する関税10倍引き上げると
携帯電話などの輸入中断措置した前例あり
専門家「政経分離」の見通しを示すも
在中韓国企業人らは不安を訴える
「中国、国益にかかわる問題に恐ろしいほど急変」
「当時、韓国では国を挙げて大規模な交渉団を派遣した。
しかし、面会を申し込んでも、中国からは全く反応がなかった。ただ待つだけで何もできなかった。
ずっとホテルで待機するわけにもいかず、撤収しようと思ったこともあった。ところが、土壇場で中国側から面会に応じるという連絡が来て、中国側はごくわずかな人数だけで交渉に出てきた。結局、ほとんど中国の意思が反映された」
2000年の夏、韓中関係を揺るがした「ニンニク紛争」の交渉を間近で見守ったある関係者は、当時をこう振り返った。
ニンニク紛争は韓国が同年6月、中国産の冷凍ニンニクと酢漬けニンニクの関税率を、2003年5月までに従来の30%から10倍以上の315%に引き上げたことから始まった。
韓国政府が安価な中国産ニンニクから農民を保護するために取った措置だったが、当時世界のニンニクの生産量の75%程度を占めていた中国は、突然の大幅な関税引き上げ措置に強く反発した。山東省の農民が自殺した事件も、中国政府の態度を強硬にする契機となった。
中国は一週間後に、韓国産携帯電話とポリエチレンの輸入を暫定的に中断するという報復措置を発表した。結局、韓国側が関税率をほぼ従来の水準の30~50%に引き下げ、中国側は携帯電話の輸入中断措置を解除したことで、ニンニク紛争は終わった。
事実上、中国の貿易報復が威力を発揮したニンニク紛争は、中国の経済報復の事例として語り継がれている。
10年後の2010年9月、中国は日本との尖閣諸島(中国名・釣魚島)紛争の際も、希土類の日本への輸出中断という経済報復カードを切ったことで、17日ぶりに日本に拿捕された自国の船長を送還させた。
ハイテク製品の重要な原料である希土類は希少資源で、日本は中国からの輸入に全面的に依存しているため、屈辱的にも白旗を上げるしかなかった。
高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備問題で韓中関係が急速に後退した中、中国の経済制裁に対する懸念が広がっている。多くの中国経済専門家たちは、中国が「政経分離」の原則を守ると予想している。
北京KOTRAの資料によると、昨年、中国は韓国の全体の貿易のうち23.5%を占め、1位の交易国だった。
韓国も中国の全体の貿易のうち7.1%を占め、4位の交易国だった。中国経済も良くない状況で、中国も経済報復カードを取り出すのは容易ではないということだ。
また、両国が加盟している世界貿易機関(WTO)の規定上、政治的理由による貿易制限はできないことになっている。
駐中韓国大使館のパク・ウンハ経済公使は、「韓中は、経済発展目標を実現するうえで、互いにとって重要なパートナーだ。北朝鮮の核実験で起きた政治安全保障問題を経済と連携させることは、中国の国益にも役に立たない」と述べた。
しかし、在中企業人の間では、「中国が有・無形の手段を通じて、目立たないように制裁を加える可能性がある」として、不安感が広がっている。
北京に進出した韓国企業のある従業員は、「中国の世論を毎日チェックしているが、まだ目立った動向はない
。しかし、火の粉が飛び散る恐れがあるため、注視している」と述べた。北京のある消息筋は「今すぐではないが、THAAD配備が決まったり、対立がさらに深まると、中国が最も目に見える効果が大きい遊客(<ヨウカ―>中国人国外観光客)の韓国観光制限措置を取るという噂が流れている」と話した。
丹東など、朝中国境地帯で北朝鮮と貿易をしている人も「いても立ってもいられない。中国人たちは国益や愛国という問題がかかると、恐ろしいほど急変する」と懸念を示した。