113 方弘は、いみじく(126)その1 2019.11.11
方弘は、いみじく人に笑はるる者。親いかに聞くらむ。供にありく者ども、いと人々しきを呼び寄せて、「何しにかかる者には使はるるぞ。いかがおぼゆる」など笑ふ。物いとよくするあたりにて、下襲の色、うへの衣なども、人よりはよくて着たるを、「これをこと人に聞かせばや」など、げにぞことばづかひなどのあやしき。◆◆方弘は、ひどく人に笑われる者だ。いったい親はどう聞いているのだろう。供として歩いている者たち、その中のひとかどの者を呼び寄せて、「どうしてこんな者に使われているのか。どう思うのか」などと笑う。方弘の家衣服などの調製をとても上手にするところで、下襲の色、袍なども、人よりは立派に着ているのを、「これを他の人に聞かせたいものだ」などと、なるほど言葉遣いなどが変だ。【こんなに立派な装いをしているのを、他の人に見せたいものだ。というところを聞かせたいと言っている】
■方弘(まさひろ)=蔵人。家は染織・衣服の調製などをしていた。
■人々しき(ひとびとしき)=ひとかどの人間らしい者。
里に宿直物取りにやるに、「をのこ二人まかれ」と言ふに、「一人しても取りてまうで来なむを」と言ふに、「あやしのをのこや。一人して二つのものをばいかで持つべきぞ。一ますがめに二ますは入るや」と言ふを、なでふ事と知る人はなけれど、いみじう笑ふ。
◆◆自宅に宮中での宿直の装束を取りに従者を遣わすのに、「お前たち二人で行け」と言うので、「一人でも取ってきてしまいましょうのに」というと、「変なことを言う男だな。一人での物をどうして持てるのか。一升瓶に、二升は入るか」というのを、いったい何を言っているのかわかる人は人はいないけれど、ひどく笑う。◆◆
人の、使ひにて、「御返事とく」と言ふを、「あなにくのをのこや。竈に豆やくべたる。この殿上の墨筆は、何者の盗み隠したるぞ。飯、酒ならば、ほしうして人の盗まめ」と言ふを、また笑ふ。
◆◆人が使いとしてきて、「お返事を早く」というのを、「ああ、にくらしい男だな。竈に豆をくべているのか。この殿上の間の墨や筆は、いったい何者が盗んで隠しているのか。飯や酒ならは、人が欲しくて盗むだろうが」というのを、また笑う【殿上で見つからないので言っているが、それも例えが変】◆◆
方弘は、いみじく人に笑はるる者。親いかに聞くらむ。供にありく者ども、いと人々しきを呼び寄せて、「何しにかかる者には使はるるぞ。いかがおぼゆる」など笑ふ。物いとよくするあたりにて、下襲の色、うへの衣なども、人よりはよくて着たるを、「これをこと人に聞かせばや」など、げにぞことばづかひなどのあやしき。◆◆方弘は、ひどく人に笑われる者だ。いったい親はどう聞いているのだろう。供として歩いている者たち、その中のひとかどの者を呼び寄せて、「どうしてこんな者に使われているのか。どう思うのか」などと笑う。方弘の家衣服などの調製をとても上手にするところで、下襲の色、袍なども、人よりは立派に着ているのを、「これを他の人に聞かせたいものだ」などと、なるほど言葉遣いなどが変だ。【こんなに立派な装いをしているのを、他の人に見せたいものだ。というところを聞かせたいと言っている】
■方弘(まさひろ)=蔵人。家は染織・衣服の調製などをしていた。
■人々しき(ひとびとしき)=ひとかどの人間らしい者。
里に宿直物取りにやるに、「をのこ二人まかれ」と言ふに、「一人しても取りてまうで来なむを」と言ふに、「あやしのをのこや。一人して二つのものをばいかで持つべきぞ。一ますがめに二ますは入るや」と言ふを、なでふ事と知る人はなけれど、いみじう笑ふ。
◆◆自宅に宮中での宿直の装束を取りに従者を遣わすのに、「お前たち二人で行け」と言うので、「一人でも取ってきてしまいましょうのに」というと、「変なことを言う男だな。一人での物をどうして持てるのか。一升瓶に、二升は入るか」というのを、いったい何を言っているのかわかる人は人はいないけれど、ひどく笑う。◆◆
人の、使ひにて、「御返事とく」と言ふを、「あなにくのをのこや。竈に豆やくべたる。この殿上の墨筆は、何者の盗み隠したるぞ。飯、酒ならば、ほしうして人の盗まめ」と言ふを、また笑ふ。
◆◆人が使いとしてきて、「お返事を早く」というのを、「ああ、にくらしい男だな。竈に豆をくべているのか。この殿上の間の墨や筆は、いったい何者が盗んで隠しているのか。飯や酒ならは、人が欲しくて盗むだろうが」というのを、また笑う【殿上で見つからないので言っているが、それも例えが変】◆◆