落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

自伝三点セット

2006年02月19日 | book
『溥傑自伝』愛新覚羅溥傑著 丸山昇監訳 金若静訳
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こないだ読んだ『流転の王妃の昭和史』がなにやら物足りなかったので、ダ?塔iの方の自伝にも挑戦。
結果何が物足りないのかが判明。結局言論の自由のない国で書かれたものなので、両者には共産党の数々の失政や当然あるはずの政策への不満について、まるっきり一字たりとも触れていないのだ。浩夫人の自伝の方は主に妻として母として家庭人の観点から書かれていたので、それなりにバランスが取れているように読めたのだが、いかに地位は高くないとはいえ、皇弟という身分であり旧満州国の政治の中枢に深く関与する立場にあった氏の自伝としてはかなり偏った著書になってしまっている観は否めない。

それはそれとして、これはこれでなかなか興味深い一冊でもある。
とくにおもしろいのは清朝瓦解後、まだ紫禁城で暮していた溥儀との宮廷生活の描写。長い長い封建時代に築かれた奇妙な宮廷のしきたりのひとつひとつに、日本の平安時代の宮廷のそれとどこか似たところがあるのが興味深い。
それから戦後の戦犯収容所での生活のくだりは今までほとんど知らなかったことばかりで非常に新鮮でした。しかしこの本に書いてあること全部鵜呑みにしてたら誰でも「共産主義ってすんばらし〜〜〜!」なんつって洗脳されそーです・・・。
あとやっぱりこのヒトの一家はすごーく家族仲がよくてそれも驚き。シモジモの者(ぐりだ)は貴族とか皇族ってーと根拠もなく家族同士仲悪そうなイメージをもってるけど、この愛新覚羅家は親兄弟が常に互いをいたわりあい庇いあっていて、とてもとても仲睦まじい。よそへお嫁にいった姉妹や義兄弟、よそから嫁いだお嫁さんともわけへだてなく愛情深く親しい。ホントにお育ちのいい人ってこういうものなのかなあ。

昔、映画『ラストエンペラー』を観た時にはあんまり活躍してなかった印象のある溥傑さんだけど、実際控えめでおとなしい方だったそうだ。真面目で謹厳で周囲の人にはいつも尊敬されていたそうだ。
そんな溥傑氏の宿願だった日中友好だが、彼の逝去後12年も経た今もなお、両国関係は晴ればれとしない。
どうしてなのだろう。実は両国はホントは仲違いがしたいのか?そんなことあるわけがない。いちばん大事なことは、とにかく、まず仲良くすることであるはずだ。
なのになぜ?わからない。

溥傑氏は自分の自伝には『わが半生』(愛新覚羅溥儀著)に書かれたことは書かないとしていたそうなので(溥傑氏が『〜半生』の初稿を手伝っていたため)、この‘物足りない’感の一部分はそっちを読んで埋めなくてはならない。
あとこの本には『流転〜』と重複している箇所も一部省略してある。そっくり同じ部分もあるし、微妙に食い違ってる部分もあるけど。つまり『流転〜』と『〜半生』と『溥傑〜』はセットで読まんといかんってことですね。ぐったり。『〜半生』なんか上下巻なんだよね・・・。

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