はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

平成二三年四月某日~茅ヶ崎里山公園

2011年10月29日 12時10分35秒 | 日詠短歌

  平成二三年四月某日~茅ヶ崎里山公園


一面の曇りだが雲にも高低があるその隙を縁取る光

ワイパーを止める路肩に寄せる傘は、もういいだろう

土道にひいやり沈む靴底コート替えにはまだ早かったか

雨垂れが鳴り止まない日差しのなか眼鏡に映る木 葉 蝶

ようやくだようやくだようやくだよう森のなかの鳥の声

水音がんんんこんなにも心地いい 水はいい

むくむくと気に帰ってゆく最中の水を吸い込む

栗の木が芽吹いたことで今までが丸裸だったと気づいたことだ

木が揺れるこんなに深く春ってのは見えてたものがかくされること

漂うのは切り株の匂い(死のにおい)再生のための臭いだ、と

むしろ吸われることこそ心地良いこの、養分を欲している生命群のなか

黒のますます冴えわたる鶺鴒がコマおとしにしか見えない

彼女のせいか今年は緑がつらくないいや、辛さがここまで届かない

この有休で忘れられれば良いのだが(丁度眉月の頃でも無いし)

左肩が下がれば影もうつむく太陽光線は嘘をつけない

精神病という衣が甘いだからまだクローバーを憎まなければならない

辛いと感じはしないが――あらゆる緑を塗りたくる山

でも快晴のもとでは少しうざったい例えば遠くの菜の花の畑

筍の生々しく濡れる外皮そんなにも悪なのだろう風は

朝方の頁が妙に柔らかい親指一本で頁をめくる

ぷつりぷつりと集の終わりから読んでいく一人の歌人を過去にするため

柿の萌黄が特に美味そうだ小指先ほどの葉を嬲っている

沼上に緑羽小虫がけぶりとぶ春の嵐のその次の日なので

春とはまず虫のことその塊は常に斜め上にある

俺は別に何もしてない鴨二羽がへんに無様に羽ばたいてゆく

五位鷺の嘴からゆるいSえがき胃の腑へたどりつく時間を

少々下品な蛙の斉唱が突如止む俺のために

春なのに飛行機雲が形成しやすい湿気の状態らしい

一気圧とは一万メートルの空気の重さ(抗う軽さ)

金属製のヴィオラの話は聞いたことがあるよ 今もえている草原

ゲンゲ咲き詰められて多分明日、いや明後日には入る耕耘機

春女苑ひしめく道の端にいたらお前、だめだ と言われたのだ

むしろ野にある背黄青鸚哥のほうが無様だ ゆるゆると乾く道

農道の中央に伸びてゆく今年も轢き残されて萌える緑

土道の尽きるころ駐輪場が盛大に反射をかえす所

ひろいひろい芝生を抜けてきた風のおかげで腕の形態を知った

開ききる寸前は妙に剣呑たんぽぽの黄色が天上を突く

また地震そういえば直接草に座り揺れを感じたことなど無かった

揺れの中でも変わらない小鳥のトーンなら良いか 尻が冷たい

節電の声をかけられて気づくこと「日本全国便所の100w」

成長する石を持つ国 少なくとも国歌と決めた歌がそう言う

今年中に七〇億となる人口(辻褄合わせにもならない衝動)

「雑草なんて名前の草は無い!」という故に国民なんて名の人も無い

隆起する亀裂に沿って北東から南西に至る伏流の波

下り道桜並木のふもとからアスファルト傷つけ馬が来た

桜並木もただの樹となったやれやれとわずかに紅い蘂を残して

桜蘂がおとたてて降る削ぎ落とされた顔の野仏

口を開けてまぶたを開けて ああ、それでも「安らかでした」と言いたいのです

猫の群が這い出てくるそろそろ人と光が退く時刻

すべてのっぺらぼうになる瞬間(陽・色・戦)動いてはいけない動くと割れる


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