8月17日にアウェーで行われた2022年明治安田生命J2リーグ第28節ジェフ千葉戦ですが、試合結果は0対0のスコアレスドローに終わりました。
☆先発変更は2人&マンシャ選手Jリーグデビュー
前節の熊本戦から中3日で臨むこの千葉戦。7月23日に行われる予定だった日程が中止&延期となり今回の日程に組み込まれたわけですが、吉田監督は過密スケジュールのなかでもメンバーの大幅な変更はせず、先発を2人変えるに留めます。宮崎選手に代えて鳥海選手は良くある変更ですが、野澤陸選手に代えて新加入のエドゥアルド・マンシャ選手を先発に抜擢したのは少し驚きがありましたね。もちろん今シーズンすぐに活躍してもらうために獲得したわけですが、8月10日に加入したばかりの選手を途中出場で数分試合に使うなど慣れさせることなくスタートからいきなり起用してくるあたりは、マンシャ選手に対する評価が高いことが窺い知れますね。
☆激しく当たる序盤
ヴァンフォーレは立ち上がりの時間帯から積極的に動き、相手に厳しくプレッシャーをかけてボール奪取を試みます。また中盤のセカンドボールへの反応もいつものスタート時と比べて素早く反応しており、球際の攻防も怖がらずに果敢に向かっていくなど選手たちには戦う熱い闘志が感じられましたね。千葉はヴァンフォーレのプレスの圧力に押されて思うようなプレーができなくなり、とりあえず引いて守りを固める姿勢をとることが多くなります。その厳しいプレスの中心となっていたのが山田選手。前節の熊本戦では動きにキレがみられずに中盤のディフェンスが緩くなってしまった影響で相手に勢いのある仕掛けをされていましたが、その悔しい教訓があったからか山田選手は今回スタートからガツガツと行く強い気持ちをみせていましたね。彼の気迫もあってヴァンフォーレはチーム全体が組織的で厳しいディフェンスが発揮されており、中盤の争いでセカンドボールを回収することができていたので、そこから細かくパスを繋げるようになり試合の主導権を握ります。
☆マンシャ選手の守備対応力
この日の千葉は長身で屈強なフィジカルを武器にする櫻川ソロモン選手とブワニカ啓太選手が前線に配置されていました。守りながら彼らにロングフィードを素早く送ってポストプレーをしてもらいそこからカウンター攻撃を狙っていたと思いますが、彼らに立ちはだかった存在が新加入のエドゥアルド・マンシャ選手でした。187cmの長身を誇るマンシャ選手は主にブワニカ選手にマークにつき、そこに飛んでくるロングボールを警戒。的確にポジショニングをとって高い打点でジャンプしヘディングで次々とクリア。ブワニカ選手にポストプレーをさせません。独自採点の記事にも書いたのですが、純粋な競り合いの強さの他にも素早くハイボールの落下点に寄っていく嗅覚に優れていると個人的には思っていて、ただ単に待ち構えてヘディングするのではなくロングボールが来る間にも一歩二歩進んで対応できている印象でしたね。後半27分のこの試合唯一のピンチとも言えるシーンではロングフィードが彼の頭上を通って末吉選手に抜け出されてGKと1対1になったのでまだ荒削り感はみられますが、それでもそれをかき消すくらい他で良い守備をしており有り余る活躍をみせてくれたと思いますね。今後に大いに期待できる存在感でした。
☆シュートを狙うタイミングの模索
ヴァンフォーレは試合の大半の時間でボールを保持することができており、細かなパスを繋ぎながら徐々に相手ゴールに近づいていきます。相手の千葉もしっかりと守備ブロックを形成して特に危険なエリアでは人数をかけて強いディフェンスを敢行し隙をみせません。ヴァンフォーレは比較的空きやすい相手の3バックの両脇のスペースを攻撃の起点としてパスを回しますが、そこから中央に入っていく過程で相手のディフェンスが厳しくなるので、無理をせずに横パスでペナルティエリアの外周を半円を描くように展開し繋ぎ、それでも仕掛けるポイントがないと判断するとバックパスで戻して再び攻撃を組み立て直すというパターンが多くなります。ボール支配率が高くパス数が相手の倍以上の本数を記録していてもシュート数が4本のみというのは、そのような傾向にあったからだと言えます。シュートをほとんど打てませんでしたが、実際に試合を観ていると打とうと思えば打てるタイミングがたくさんあるなと感じることが多かったのも事実。完全に崩し切る&確実に狙える位置まで進まなければ無謀にシュートを打たないとチームで決めているのか分かりませんが、やはりゴールはシュートを打たないと入りません。エリア外周を横パスで繋いでいる段階で敢えてミドルシュートを狙ってみるなどの積極性な姿勢が見たかったですね。
そしてクロスボールを入れるタイミングも遅いと思います。もちろんスペースに入ってもボールを保持して自分たちの時間を作るのは優位に試合を進めていく上で大切なことと言えますが、そこからまた切り返して繋いで崩そうとしていたらゴール中央で待ち構えるリラ選手のような存在はいつクロスボールが入ってくるのか分からずシュートへの準備ができずにタイミングも合わせられなくなります。難しいことをしようとするのではなく、もっとシンプルなプレーを心がけることで中央にいる選手のクロスへの反応が良くなりそこから決定機は作れたと思います。クロスからの展開がほとんど得点の匂いがしなかったのはクロスを上げる前に難しいことをし過ぎていたからだと思いますね。
☆何もできなかったフォゲッチ選手とジェトゥリオ選手
0対0のスコアが長い時間続き、終盤の時間帯となってここから先に1点を入れた方が勝利にグッと近づく展開となっていた後半42分に攻撃的な新戦力をピッチに送り込む決断を下します。フォゲッチ選手は右サイドに張って持ち前の精度の高い右足を駆使したクロスボールを供給する役割として、ジェトゥリオ選手はシャドーの位置で前を向いて仕掛け、フォゲッチ選手のクロスに合わせてシュートを狙う存在として得点を決めるプレーを期待されていました。しかしその役割をこなすような機会はほとんど訪れず、あまりにも出場時間が短すぎましたね。フォゲッチ選手は右サイド&ジェトゥリオ選手は前線にいてもボールが回ってこないと分かると、早くボールに触れたいがために味方選手の近くまで寄ってしまいます。それでは本末転倒。せっかくピッチに入ったのに残り時間が短くて焦ってプレーしていた感があるので、彼らを最大限活かすためには焦らず落ち着いて自分の得意としているプレーができるくらいの長い時間が欲しかったですね。特にジェトゥリオ選手はこれがJリーグデビュー戦だったので少し可哀想でした。
☆引き分けに終わった要因は?
この試合0対0のスコアレスドローに終わった要因は、攻撃のスピードが遅かったことが挙げられると思います。ヴァンフォーレは試合の主導権を握り、中盤6人の細かいパスワークによって時間をかけてじわじわと前に進んでいきますが、相手の守備ブロックを形成したディフェンスが対応に来るとそこを突破するチャレンジをせずにボールを保持することを第一に考えます。それによって横パスやバックパスが急増し、効果的なポゼッションではないパス回しが続いてしまいます。ボール支配率やパス数が多い方が勝つルールなら今回のヴァンフォーレは圧倒的ですが、サッカーは得点の多い方が勝利するスポーツ。ある程度まで進んだ段階でパスを繋ぐことを止め、突破などで相手の守備網を切り崩す努力をしなければゴールに近づくことができません。終始試合の主導権を握っていれば相手からの逆襲を食らう場面も少なくなり理想的ですが、得点を奪うためには保持している状態からボールを手放す勇気も同時に必要になってきます。もちろんボールを手放すと反撃を受けるリスクも高まりますが、今回はその勇気がヴァンフォーレは出なかったと言えるでしょうね。
あとは先ほども言ったようにいつクロスボールを上げるのかゴール前で待っている選手が掴みづらいということ。この試合ではよく相手の3バックの両脇のスペースに入り込んでいましたが、入ってから駆け寄ってくる相手をかわすために何度もフェイントをしたり近くの味方選手とショートパスを繋ぎながら綻びを見つけようとしていました。もちろん相手を突破するためには必要なプレーとも言えますが、やりすぎはかえって悪影響を与えてしまうことにも繋がります。今回はサイドのスペースに入ったすぐにクロスボールを上げられるタイミングが何度もあったので、シンプルなプレーを選択するだけで簡単にゴール前にクロスボールを上げられたはずです。ゴール前の選手もこのタイミングでクロスを上げてくるなと事前に分かっていればゴール前に入ってシュートを打つタイミングを合わせやすくなると思うので、もっと決定機は作れたと思います。高いテクニック力を発揮することは良いのですが、時と場合を踏まえて攻撃のスピード感を大事にして仕掛けてほしいですね。
守備面では安定した空中戦の強さを誇るマンシャ選手を筆頭にして、鋭いインターセプトでパスカットする須貝選手や彼らを統率する浦上選手など組織的な守備が構築できていました。そこに加えて厳しくプレスをかけるボランチの山田選手や守備意識強くプレーする両ウイングバックなど守備のフォローも十分で、櫻川選手とブワニカ選手を中心とする屈強な千葉攻撃陣にほとんど仕事をさせませんでしたね。彼らが交代した後は攻め込まれる機会が増えましたが、それでもトータルは安全に守れていたと思います。
…この引き分けによってヴァンフォーレの今シーズンの成績は、9勝13分け9敗の勝ち点30となり順位は12位となっています。今回の試合は第28節の延期分だったので他の会場は試合をしておらず、もし勝利できていたら上位との勝ち点差を一気に詰め寄ることができただけに、非常にもったいない勝ち点1の積み上げでしたね。J1参入プレーオフに出場できる6位長崎との勝ち点差が ‘7’ あるので依然厳しい状況は変わりませんが、残り12試合でジリジリと上位に迫れるように一つ一つの試合を大事に戦っていき、一つでも多くの白星を手に入れましょう!
2022.08.17 2022明治安田生命J2リーグ 第28節 vs.ジェフユナイテッド千葉
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