私がまだ小学生のころ
父親がなにかたいそう厄介な
問題を抱えて苦労しているのが
家で一緒に食事をしていて
わかったことがありました。
母親との会話の中に
「入札」という言葉がよく出てきて、
それがなにかわからぬなりに
それを成功させるために
高血圧を心配しながらも健康を無視して
毎夜遅くまで接待を続けているのが
子供心にもわかっていました。
そしてある日なぜか珍しくも
午後早い時間に父が帰宅していて
私の帰宅を知った父が私を呼び寄せ
二人して陽の高いうちから
風呂に入ったものですが
なにかを感じて私が
「あの入札はどうだっとの?」
「ああ、あれはどうもダメだった。
今日それがわかったんだよ」
「それで早く帰ってきたの?」
父が苦笑いで頷いてみせました。
「老いてこそ人生」
石原 慎太郎 著
筆者のお父さんとの
心温まるエピソード
父親の目、子供の目
お互いがお互いを意識しながらも、
ともに本音で話しているのが
よく伝わってくる
子供のいない自分には
なんとも理解できない光景であるが
うらやましくもあり
そういう苦労をせずに済んだ想いもある
いずれにせよ、
子供といっても我が子には
格別の想いがあるのだろう
筆者の父親は真剣に
「入札」がなんのことがわからぬままに
とても大切なことだと察し、
心配していた我が子のことが愛おしく
子供は真摯に自分の知らない
「入札」がどういうものなのか
少し目の前ベールが剥がれた気がしただろうし
たとえ結果がどうであれ、
父が入札の不安から
解放されたのだと悟り安堵
なんとも素敵な親と子供の
触れ合いを感じて心温まる
きっと筆者とその子供達に
も受け継がれていったのだろう
早起き鳥
人気ブログランキングに参加
読者の皆様のご支援に心から感謝申し上げます。