世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【戦争の危機はおカネ欲しさの演出や芝居に過ぎない?】戦争はなくなっていくだろう。が・・・②

2021-12-29 00:02:51 | 世界共通
前回からの続き)

 わたしたちは、人類史上もっとも平和な時代を生きている―――全人口に占める戦争・紛争で亡くなる人々の割合がかつてないほど下がっている。これ、事実ですが、そういわれてもにわかに信じられるものではないでしょう。そのあたりは、たとえば、昨年の世界の軍事予算の合計額が上記とは逆に史上最高額(約2兆ドル)に達した、なんて現状に照らすと、なおさら、ホントなの?って気にさせられるところですが・・・

 それでも、やはり戦争は着実になくなっていき、それにつれてその犠牲者の数も減少していくでしょう。というのも、上記ほどの巨費を投じて製造・購入された兵器・武器そしてこれらで重武装した軍隊が実際の戦争で使われたり戦ったりすることは、以下のとおり、ほとんとないと考えられるため。すなわち、こちらの記事を含めて何度か書いたとおり、万一そんなことになったら・・・核ミサイルが飛び交って人類絶滅・・・よりもずっと前に通貨・金融システムが崩壊してハイパーインフレが勃発して当の戦争当事国・・・って、はっきり言えば・・・アメリカ(とドル)が存亡の危機に陥る、ってこと。もちろん、かの国と同陣営(ドル圏)の中国やロシアも巻き添えにしながら、です。であれば、だれが(≒アメリカが)本気で戦争しよう、なんて考えるものですか。それでもヤる?いやいや、あり得ないでしょう、損するだけだから。つまり、投入コストを上回る収益をゲットできる―――負かした相手から奪った資産額が同コストを上回る―――戦争なんてあり得ないってこと、とくにアメリカにとっては・・・

 他方、毎年数千億ドル(日本円で数十兆円)もの軍事予算を享受するアメリカ・・・をはじめとする世界各国の軍需メーカーや軍属らには、引き続きこれを確保するには大義名分としての戦争の危機や国家間の対立が不可欠です。でも、リアルになってしまうと上記のようにマズいので、(アジアやアフリカ等における一部の紛争のようにドル等の価値に与える影響が小さいものを除くと)それらの多くは「演出」とか「芝居」としての危機とか対立ということになります(?)。具体的には・・・「中国」(南シナ海とか台湾など)や(日本の国政選挙等のタイミングでやたらとミサイルをぶっ放す・・・ように依頼されている[って誰に]?)「北朝鮮」などがその類でしょう。でないのなら、こちらの記事に書いたように、本来ならば一致団結して中国に対抗するべき米英豪仏が豪海軍の潜水艦導入をめぐって大げんかしたり、新型コロナウイルス感染が艦内で確認されたくらいのことで米空母が米安保上、超重要なはずの南シナ海の持ち場をサクッと離れたりするはずはありませんからね。

 ちなみに、上記の後者について補足すると、当該空母の艦長は、乗員の治療と艦内消毒等のためにグアム島に退避するに当たって、現場では武力衝突のリスクがないことに言及し(てしまっ)たために解任されましたが、それはそうでしょう。艦長としては危機感がなさ過ぎ・・・って、対中戦略的に、ではなく、こんなときに本当のことを口に出すようじゃ、って意味で。さらにいえば、くだんの元艦長、退任のあいさつの際に、グアムでのんびり・・・じゃなかったコロナ治療等ができるようになった乗員から拍手喝さいを浴びたそうですから、このあたりからも南シナ海&米海軍の緊張感?がひしひしと伝わってきますね・・・?

 といったことも含め、軍事支出はスゴいことになってはいるものの、上述の事情から実際の武力衝突と戦争は回避され、それらの犠牲者数は減少を続け、結果として世界は平和になってきていると考えています。それはそれでたいへんけっこうなことだと思います、おカネのところは別として。しかし、そんな時代に逆行するかのように、銃弾による死傷者がどんどん増えている国がひとつ(だけ?)あります・・・って、ご存じ、アメリカ、です。

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【人類史上、いまがもっとも平和な時代?】戦争はなくなっていくだろう。が・・・①

2021-12-27 00:02:13 | 世界共通
 時代の大きな流れの観点からすれば、この星は平和になってきているのでしょう。素晴らしいことだと正直に思います。が・・・

 戦争(紛争)の犠牲者の数はどんどん減ってきている―――この国のメディア報道等からすると信じがたいこと?ですが、事実です。これ、以前のこちらの記事で触れたことですが、当時(2016年の数値)と比べて直近はさらに減少しています。

 で、このあたりは、Wikipediaの「list of armed conflicts in 2020」には現在進行中の17の戦争・紛争国における2020年時点の各種情報でも確認できます。それによると、これらの2014年の犠牲者の合計が23万人台だったのが、2020年には9万人台へと大きく減少しました。その内訳ですが、この間、シリアと南スーダンの2紛争の合計死者数が大きく減ったのが目につきます(2014年:12万人台→2020年:1万人弱)。いっぽう、2020年時点で多いのはアフガニスタンとイエメン(それぞれ2万人弱)での紛争となっています。前者については、米軍の撤退と、その後に政権を掌握したイスラム過激派勢力タリバンが国をどう治めるかにかかってくるかと思われます。そして、それら以外で注目されるのがメキシコの麻薬戦争(Mexican drug war)。これ2006年に始まって2018年に終結が宣言されたものの実際には現在も続いているもよう。これまでに十数万人が殺害されたそうです(その他に行方不明者が2万人以上とのこと)・・・

 といった具合で、このような個別のケースは、世界の一部の国や地域では、相変わらず悲惨な武力衝突が起こっていて、多くの人々がその犠牲になっていることを教えてくれてはいます。しかし・・・彼ら彼女らを含めた戦争・紛争の死者の絶対数が上記のように減少しているなか、この間の地球の人口は増え続けているので、全人類に占めるそれらの犠牲者の割合は着実に下がってきている・・・どころか人類史上、いまがもっとも低いレベルにあるそうな・・・

 というわけでわたしたち(日本人を含む人類全体)は、過去のどの時代の人々よりも平和な時代―――少なくとも自分らの命が戦争・紛争で危険にさらされるリスクの低い時代―――を生きています・・・って、繰り返しますが、ホントかいな?って多くの人々は感じるのではないでしょうか。それは、たとえば・・・こちらの記事でご紹介した、2020年の世界の軍事支出が統計で確認できる1988年以降で最高額(約2兆ドル!)になった、なんて現実があるからで・・・

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【ユーロ圏には日銀にインフレ扇動をやめるようプレッシャーをかけてほしいが…】エネルギー価格上昇に弱いユーロはドルの代わりになれない⑨

2021-12-23 00:03:15 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 これまで綴ったことから、ユーロ圏は、自分たち(欧州中央銀行[ECB])では制御不可能の目下のエネルギーインフレを抑圧するため、その「真犯人」である日本の日銀に対してインフレ扇動策(超緩和的な金融政策)をいいかげんやめるよう、強く訴えることが可能と考えられます(?)。前述のように、インフレの苦しみとこれが解消されることで得られる恩恵はユーロ圏の人々そしてわたしたち(日本人)にとって多くのところで共通だから、そのあたりを上手にアピールすれば、本来は内政干渉と言われかねない上記要求は日本でもけっこうな共感と支持を得られるでしょう(?)。その結果、これらが合わさって日銀に対する政策転換を促すプレッシャーになってくれれば・・・

 ということで、ユーロ圏の現状について綴りつつ本稿で述べたかったのはこのあたりになります。アメリカとか中国は(支配層が日銀政策由来のインフレで潤っているから)無理だけど、わが国と似たところがあるユーロ圏なら少しは力になってくれるのではないか・・・。そのへんは、以前からインフレの害悪を警告し続けている(個人的にリスペクトしているセントラルバンカーの)ドイツ連邦銀行イェンス・ワイトマン総裁あたりが声を上げてくれないものか、と願っているのですが・・・

(「エネルギー価格上昇に弱いユーロはドルの代わりになれない」おわり)

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【ユーロ圏「日銀はインフレ扇動をやめよ」の訴えは日本国民の支持を得る?】エネルギー価格上昇に弱いユーロはドルの代わりになれない⑧

2021-12-21 00:00:37 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 これまで綴ってきた事情などから、ユーロ圏そして欧州中央銀行(ECB)には、自分たちでは足元のエネルギーインフレを鎮圧することはできないでしょう。が、他力本願ではあるものの、手は存在します。それは・・・量的緩和の縮小(金融引き締め)を強く要請する・・・ってECBに対して、でも、米FRBに対して、でもなく、日銀に対して、というものです。

 最近ではこちらの記事に書いたように、エネルギー価格の騰勢を煽り立てている真犯人は、中国(消費国)やサウジアラビア(産油国)・・・ではなくアメリカ&FRB・・・でもなく、日本・・・の日銀です。つまり、日銀が、その金融政策「異次元緩和」(長短金利操作付き量的質的金融緩和)で、株・債券をはじめとする各種資産の投機の大元となる超低金利マネーを市中に吐き出し続けているために 原油やガスの投機が活発化してそれらの価格が押し上げられた、というわけです。そのあたりは、一見すると調達通貨に思えるドルを含めたほぼすべての通貨に対して円が売られてきた(名目金利が最も低い円を元手にドル等への投資が行われてきた)経緯を見ても明らかでしょう。

 ここで、日銀は何を目的に上記政策を続けているのか、を振り返っておくと、それは、インフレ年率2%の達成のため・・・なんてのは「表向き」で、「本当の目的」はアメリカ支援すなわちドル価値の下支え(・・・と思わせておいて「本当に本当の目的」はバブルインフレで同国の「分断」をいっそう深化させて自壊に持ち込むこと)でした。まあ日銀の本心はともかく、そのターゲットはアメリカドルであって、ユーロ圏とユーロではないはずです。なので、もし日銀が緩和縮小(テーパリング)に転じるとしても、ユーロ圏が受けるそのダメージはアメリカよりはずっと小さいと考えられますし、これによる(投資の巻き戻し[原油→ドル→円]がもたらす)輸入エネルギー価格の下落によるインフレ鎮静化とそれにともなう域内景気や消費へのプラス効果を考えると、総合的に見てユーロ圏にとっては日銀のテーパリングは恩恵「大」といえるでしょう。

 他方、日銀に対するこの要求、ユーロ圏には可能でもアメリカには不可能です、絶対に。というのも、上記、そして以前から何度も指摘のとおり、これが同国のサポートになっている・・・って具体的には「上位1%」の富裕層にとって恩恵「大」だからです。ようするに、彼ら彼女らは日銀起源のインフレで大いに潤っている―――実質マイナス金利で借金して株や債券そして原油等の投機でカネもうけ(利ザヤ稼ぎ)ができている―――ということ。であれば、そのマネーの出し元である日銀には今後も栓を(全?)開にしておいてもらいたいわけです(裏を返せば、元栓を閉めろ、なんて口が裂けても言えません。それは自殺行為[保有資産額の暴落等→資金繰り悪化→破産?]になりかねないためです)。となるとガソリン代は上がり続け、生活は苦しくなるばかり・・・っても、それは残りの「99%」の米国民のことで、自分たちには無関係だし・・・

 話を戻します。ゆえにアメリカ(の富裕層すなわち支配層)には日銀に対し、インフレを煽る金融緩和を縮小せよ、なんていえませんが、ユーロ圏にはいえるはずです。上述のほか、域内大半の国はエネルギーの純輸入国であること、そしてアメリカほどは資産や所得の格差が大きくはない(インフレ&バブルで潤う層が米ほど厚くはない)こと(2015-18年のジニ係数[0に近いほど所得格差が小さくなる]:米0.39、独仏0.29)、さらにユーロ圏にとって安全保障上の脅威であるロシア(ユーロ圏へのエネルギー供給国)のこれ以上の増長?を抑えるべきであること、などからも、エネルギーインフレが収まるに越したことはなく、したがってこれを高進させる意図の日銀の上記政策に対してユーロ圏が是正を求めるのは合理的、というものです・・・

 そして重要なのは・・・ユーロ圏の上記のすべてが、わが国にも当てはまる、ということです。だから、ユーロ圏は「内政干渉だ」との批判を恐れずに日本・・・の日銀に緩和縮小を要求できるはず。「エネルギーインフレ鎮静化は日本のためにもなることだ」と訴えて日本国民を味方につけることができますからね・・・

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【インフレ鎮圧に向けてユーロ圏がすべきは量的緩和をやめさせること、って日銀に】エネルギー価格上昇に弱いユーロはドルの代わりになれない⑦

2021-12-19 00:01:35 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 前述のように、先日の理事会で欧州中央銀行ECB)は、ユーロ圏各国のコロナ禍対策を支えるとの名目で昨年来続けてきた総額1.85兆ユーロの量的緩和策「パンデミック緊急購入プログラム」(PEPP)の来年3月での終了を決定しましたが、これで域内の重債務国の調達金利がこれから上がることが懸念されるためかドイツ国債とイタリア等の国々の国債との金利差(スプレッド)がじりじりと拡大しています。これも、いつか来た道、つまり・・・ほどなくECBは後者の「財政ファイナンス」(国債の直接引き受け)の再開に踏み切らざるを得ないでしょう。その結果、通貨ユーロの単位当たりの価値はドルに対して高まらない(どころか場合によってはドルよりも下がる?)ためにエネルギーインフレは収拾せず、各国の経済状態そして人々の日常生活はいっそう厳しい局面に向かうしかないでしょう・・・

 本稿タイトル・上段で指摘したとおり、そしてクリスティーヌ・ラガルドECB総裁も上記決定後の会見で「much of the current surge is driven by high energy prices・・・」と語っているように、欧州のみならずアメリカ等が(そしてなぜか?日本も)苦しめられているインフレの本質はエネルギー価格の上昇であり、それは米FRBの量的緩和すなわち実質金利マイナス誘導によって、カネよりもモノの利回りのほうが大きくなっているために生じたこと。であれば、モノ(商品)の代表選手である原油やガス等のエネルギー資源にカネが回ってそれらの価格を押し上げるのは当然でしょう・・・

 となってくると、アメリカ以外の国々は、エネルギーインフレを食らわないようにするには、自国通貨をドルよりも強くする必要があるわけですが、上述のことからユーロ圏&ECBにはそれができないわけです。かくしてユーロはドル同様に(あるいはそれ以上に)エネルギーに対して「弱い」通貨になっていくばかりでしょう。それではドルに取って替わることは永遠に?ないでしょうね、ユーロが・・・

 以上のように、ユーロ圏そしてECBには、自分たちで目下のインフレをコントロールできそうもありません。ではどうしたらいいのでしょうか?域内各国はインフレに蹂躙されるばかりになってしまうのでしょうか?・・・って、じつはあるんです、たった一つだけ、インフレから救われるためにユーロ圏がとり得る手が。それは・・・量的緩和をやめるよう強く訴えること。「え?ECBにはそれがやめられない、って書いているじゃん」・・・いえいえ、ECBに、ではなくFRBに、でもなく、日銀に、です

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【ECB、PEPP終了決定で独伊の「スプレッド」拡大へ…】エネルギー価格上昇に弱いユーロはドルの代わりになれない⑥

2021-12-17 15:33:54 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 前述のように、ユーロ圏各国のエネルギー自給率をみると、ドイツ、オランダ、フランスなどの相対的に経済力の強い(≒国債価格が高い・調達金利が低い)国々が高く、他方でスペイン、イタリア、そしてギリシャといった重債務国(≒国債価格が低い・調達金利が高い国々)が低いことが分かります。ということは、現下のエネルギーインフレのダメージがより大きいのも後者になりそうです・・・

 で、そう考えると、これらPIIGS(ユーロ圏重債務国:ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)諸国は、もはや救いようがないのではないか、と他人事ながら悲観的になってしまいます。欧州中央銀行ECB)の量的緩和(という名の「財政ファイナンス」[国債の直接引き受け])がなければPIIGSは金利急騰→財政破綻→国民経済・社会・治安の崩壊、等となるでしょうし、だからといって量的緩和をやってもらったら今度は輸入エネルギーへの依存度の高い彼らのほうがドイツなどの(量的緩和をそれほど必要としない)国々よりもその価格上昇に苦しめられる(経常収支のさらなる悪化、財政赤字の拡大、国民生活水準の低下、等のダメージを被る)でしょう。じゃあどうすれば?・・・って、厳しい行財政改革断行、国際競争力のある産業の育成、などなどが絶対に必要ですが、いまさら・・・ってECBの累次の財政ファイナンスで規律の緩んだ、かの国らが、(失礼ながら)これらにマジメに取り組むはずはないわけで・・・

 ・・・などと綴っていたら、16日の理事会で、(市場予測のとおり)ECBは現行の量的緩和策「パンデミック緊急購入プログラム」(PEPP)を予定どおり来年3月で終えることを決めました。他方、国債等資産の購入額については同4~6月は月400億ユーロ、7~9月は同300ユーロとし、PEPP前の量的緩和策である資産購入プログラム(APP)の購入額(月200億ユーロ)に戻すのは同10月以降とのこと。このあたりで期間的な段階を設けたのは、いわば激変緩和措置、つまりPEPP(現在は月700~800億ユーロくらいの資産を購入)をやめて、購入額をいきなり200億ユーロに下げることで生じる市場等の混乱を回避するためなのでしょう。

 とまあ、大方の予想どおりの決定となったわけですが、上述のようにユーロ圏全体が直面している激しいエネルギーインフレに、ECBとしては、まずは対処しなくてはならないので、これは常識的なものでしょう。

 しかし・・・これによってECBによる財政ファイナンスの下支えが弱まるためにPIIGSの金利は徐々に上がり、これら諸国は、またもや財政不安に陥るリスクが高まります。当然、マーケットもそう読んでいるであろうことは、ドイツイタリアの国債の金利差(スプレッド)から窺えます。現時点(日本時間17日15:00)のドイツの長期金利はマイナス0.35%でイタリアは0.99%ですから、本稿3回目時点の金利(10日時点)から、ドイツは下がり、イタリアは逆に上がって、スプレッドは拡大する方向に・・・

 結局、いつものように「ECB would come in and buy.」(本稿4回目でご紹介のUBP銀行マネージャーのコメント)となる・・・ことでユーロ圏のエネルギーインフレは鎮まらない・・・のではないでしょうかね・・・?

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【ユーロ圏、重債務国ほどエネルギー自給率も低い…】エネルギー価格上昇に弱いユーロはドルの代わりになれない⑤

2021-12-15 21:15:20 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 これまで述べてきたことから、ユーロ圏各国は、(ギリシャイタリアのような重債務国はもちろん、いまやドイツをはじめとする経済力が強い国までも)欧州中央銀行ECB)の量的緩和策・・・という名の「財政ファイナンス」(中銀による国債の直接引き受け)にすっかりハマってしまったことで、これで必然的に生じるインフレを受け入れざるを得なくなっているといえそうです・・・

 で、それでもっともネガティブな影響が出てくる分野は・・・やはりエネルギーでしょう。最近ではこちらの記事を含めて何度も書いているところですが、現下のエネルギー価格の国際的な高騰は、コロナ禍からの回復にともなう需要の増加・・・などではけっしてなく、そのコロナ禍を口実として昨春にいっそう拡大された米FRBの、これまた量的緩和によって大量に市中供給されたドルが引き起こしたことドルは基軸通貨すなわち「石油交換券」であり、これがこうして超過剰に散布されたら石油等に対して価値を落とす、つまりエネルギーのドル建て価格が上がるのは当然です。

 で、その理屈からすると、ユーロ圏&ECBは、ECBが今次の量的緩和「パンデミック緊急購入プログラム」(PEPP)をしなければエネルギーインフレを食らうことはなかった、ということになります。ECBが、多くともPEPP以前の量的緩和(資産購入プログラム[APP]:月200億ユーロの国債等の購入)の規模にとどめていれば、ユーロの対ドルレートはFRBの上記量的緩和以降は上昇し、それによってユーロ換算の石油や天然ガスの値上がりは抑制され、ユーロ圏のインフレはいまほどにはならなかったでしょう。けれど実際は、ECBは先記のようにPEPPを実行する以外になく、結果としてユーロ圏はアメリカ&ドルに付き合う形となって、人々は米国人と同様の苦境に陥っているわけです・・・

 で、そのエネルギーですが、想像がつくとおり、現在のユーロ圏の主要国で、エネルギーの自給を達成できているところは一か国もありません。ということで、どこも多かれ少なかれ、石油とか天然ガスなどを外国(ロシアや中東など)から輸入しているわけですが、このインフレのもとでは、その海外依存度が大きい国(自給率が低い国)ほど厳しい経済状況にあると考えられます。

 で、そのあたり、ユーロ圏各国のエネルギー自給率(IEA2019年データ)をみると・・・フランス54.1%(IEAは原子力を自給エネルギーとみなしているため原発大国のフランスは高くなる)、オランダ46.1%、ドイツ35.5%、アイルランド30.0%、スペイン28.1%、ギリシャ27.3%、ポルトガル27.0%、そしてイタリア23.1%・・・などとなっています。これをみると、ここでも既述の「フランス以上・以下」の序列が現れていることに気づかされます。すなわち、独・蘭・仏などの国債価格が高い(調達金利が低い)国々のエネルギー自給率が相対的に高く、同価格が低い(同高い)PIIGS諸国(ユーロ圏重債務国:ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)の自給率が低い、ということ・・・

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【ギリシャを救ってしまったことでユーロ圏のインフレ黙認は定まった】エネルギー価格上昇に弱いユーロはドルの代わりになれない④

2021-12-13 21:33:17 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 どのみち欧州中央銀行(ECB)は、現行の「パンデミック緊急購入プログラム」(PEPP)などの名称の如何によらず、量的緩和すなわち実質的な「財政ファイナンス」(中銀による国債の直接引き受け)を継続するしかない・・・というのは、こちらの記事も含めて何度か指摘していることです。つまり、ギリシャとか(ユーロ圏の4大国のひとつである)イタリアなどのユーロ圏の重債務国の財政破綻(≒債務不履行≒貸し手にとっては貸倒損)には当該国のみならずユーロ圏の相対的に経済力の強い国々(とくにイタリアに対する投資額で1位のフランス)も耐えられないので、これを絶対に回避しなくてはならない、ということ。

 そのへんは、上述の現況(イタリア等の金利の上昇傾向、これら国債と独国債とのスプレッド[金利差]拡大)からすれば、今回も同じでしょう。よってECBは、16日の理事会で、たとえPEPPを予定通り来年3月末に終えることを決めるとしても、ほどなく、それと同等クラスの量的緩和の再開に追い込まれると予想されます。このあたりについては、先月1日のフィナンシャルタイムズ記事において、スイスのUBP銀行のマネージャーが、独伊国債間のスプレッドがカギとなり、これが拡大すればECBは市場介入し、国債を買うだろう(ECB would come in and buy.)と述べていますが、そのとおりと思います。

 で、そうなってどうなる?についても、すでに何度か論じたところです。すなわち、ECBはイタリア等の金利が許容範囲に収まる程度に国債を買う・・・のと同時に、同国らの重債務国の国債だけを買うのは許されないために「キャピタル・キー」(ユーロ圏各国のECB出資比率)のルールに基づいて(市場原理的には不必要なのに)ドイツ等の国債も大量に購入することになります。となれば当然、ドイツなどでは金利が下がりすぎてしまい、いらぬインフレやバブルが発生し、人々の経済生活にダメージが及ぶことに・・・

 とまあ、ECBとユーロ圏はいままでも、そしてこれからも、こんな感じでやっていく―――デフォルトを食い止めるために通貨ユーロの増発を繰り返していく―――しかないでしょう。それはおそらく・・・2010年に顕在化したギリシャ債務危機が契機。同国を破綻させる(ことでユーロの信認を保つ)のではなく、こうして救済してしまったことで、上記の方向性は変更不可の暗黙のコンセンサスとなった、という感じでしょうか・・・

 であれば、いまさら方針転換してギリシャやイタリア等に真っ当な要求(行財政改革の断行で財政赤字を削減する等)をするなんて無茶だし、自分たち(ドイツ等)だってコロナ禍を口実に財政赤字を膨張させているのだから、それらのモラルハザード?の代償としてユーロ圏はインフレを受け入れる以外にないはずです・・・

 で、そのようにインフレに目をつぶることでもっともイタいところが・・・ユーロ圏においても、エネルギー価格の上昇なのでしょうね・・・

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【ECB、インフレ抑制か、財政ファイナンス継続か、で苦悩も…】エネルギー価格上昇に弱いユーロはドルの代わりになれない③

2021-12-11 14:01:03 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 先述したユーロ圏の各国の長期金利ですが、今週末時点でドイツがマイナス0.34%、フランス0.01%、スペイン0.39%、イタリア0.97%、そしてギリシャは1.38%、などとなっています。このあたり、前回もご紹介の不等式(長期国債価格の高い順)「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」のとおりに並んでいるわけですが、ここで注目するべきは、ここのところの動きの違いでしょう。つまり・・・ドイツやフランスなどのグループと、イタリアやギリシャなどのグループでは、前者は長期金利が下がる傾向にあるのに対し、後者では逆に少しずつ上昇しつつあり、両者間のスプレッド([とくに独国債との]金利差)が拡大していること。

 で、この半年ほどの間のユーロ圏の各国長期金利を見てみると、8月頃にボトムをうった後は徐々に上昇し、10~11月にかけて直近のピークをつけました・・・が、オミクロン株の広がりを含めたコロナ禍再拡大の気配が意識されるようになったためか(あるいは、それを口実に市場が利益確定等に動いたためか?)、それ以降は徐々に下がって現在に至る、といった推移となっています。これに対して、あの?ギリシャの長期国債は、独仏のそれらとは逆の動きで、11月以降も上がり続けています。そしてイタリアは・・・ギリシャほどはっきりは見えないものの、これまた上昇トレンドに転じる気配が感じられます。両国だって、本来ならば・・・上記オミクロンでリスク・オフ→金利低下(国債価格上昇)、となるべきが、それとは逆の現象が生じているわけです。ということは、これ・・・前回書いたこと、すなわち欧州中央銀行ECB)の量的緩和策「パンデミック緊急購入プログラム」(PEPP)の終了時期(来年3月の予定)が近づく中、この2国(を含む欧州の重債務国)は財政資金の調達がいっそう困難になるだろう(国債価格は下落し、金利は上昇するだろう)、と読んだ市場が、これらの国債をいまから売って独仏などの支払い能力の高い国の国債を買い増しているのでしょう、おそらく・・・

 このあたり、ECBは非常に難しい判断を下さなければなりません。前述のとおり、ユーロ圏、とくにドイツ等のインフレ(実質マイナス金利の低さ)は国民の我慢の限界に達するくらいに高進しているために、これを煽り立てる方向に作用するPEPPは停止するしかないでしょう。が、他方で、それはユーロ圏の重債務国の「財政ファイナンス」(中銀による国債の直接引き受け)を一気に減らすことになるために、PEPP中にこれを享受しまくった?これら諸国はたちまち深刻な財政不安、そして毎度おなじみの?財政危機に瀕するおそれがあるわけです。このようにECBは、(上記不等式で、おおむねフランス「以上」の国々の)インフレ抑制か、それとも(同フランス「以下」の国々の)財政支援か、という、完全にトレードオフな二者択一を迫られているわけです・・・(っても、財政不統合下であれば当然ですが)

 ・・・って、そう思えても、結局、ECBの選択肢はひとつしかないはず。後者すなわちインフレには目をつぶって財政ファイナンスを続けるというものです。ギリシャ、そして・・・とりわけイタリアのために、です。

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【インフレ高進でPEPPは止めるだろうが…】エネルギー価格上昇に弱いユーロはドルの代わりになれない②

2021-12-09 00:00:36 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 こちらの記事でご紹介のように、現在、ユーロ圏では、欧州中央銀行(ECB)によって超緩和的な金融政策「パンデミック緊急購入プログラム」(PEPP:コロナ禍対策の各国財政支援を名目にECBが総額1.85兆ユーロを限度に各国債等の資産を購入するもの)が実行されているわけですが、その終了時期を当初の来年3月とすることについて、今月16日の理事会で正式に決定されるのかどうかに市場が注目しています。で、個人的には、さすがにやめるしかないだろう、とは思っています。前述、そして以下に書くように、EU各国ではインフレが激しくなっており、これ以上、この手のインフレ促進策を続ける大義名分が成り立たなくなったためですが・・・

 ところで、以前から述べているとおり、通貨金融統合・財政不統合のユーロ圏では、加盟国間で経済力(経常収支や財政状態等)が異なるためにそれぞれの国債価格(金利)に相当な違いが生じるわけですが、その序列は、国債価格の高い順([長期]金利の低い順)に並べた不等式「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」のとおり、ほぼ固定されています。そうしたところでPEPPのような量的緩和策が行われると、ドイツなどでは国債価格が高くなりすぎて(金利が低くなりすぎて)景気が過熱する(余計なインフレやバブルが生じる)一方、イタリアなどでは購入される国債等が少なすぎるために金利が十分に下がらずに景気がなかなか良くならず、そのへんは・・・まあ全体の中くらいに位置するフランスあたりが平均的かな、といったところです。

 ちなみに、じゃあECBは「平均」以下の国の国債だけ買えばいいじゃん、となりそうですが、それは、これら対象国の財政放漫化ひいては通貨ユーロの信認失墜をもたらしかねないので絶対に?NG。かといって当該国の財政破綻を避けるには量的緩和(という名の事実上の財政ファイナンス)は必須。で、その折衷案?として、ECBは「キャピタル・キー」(ECB出資比率)に基づく国債購入をしてきているのは、これまた本ブログで何度か書いたとおりです。

 で、上記をふまえながらユーロ圏のインフレの現状を想像すると、ドイツあたりはとくにヒドいのだろうな、となるわけですが・・・やはりそのようですね。EU統計局のこのたびの発表によれば、同国の物価上昇率は前年同月比で6.0%とエリア平均の4.9%やフランスのそれ(3.4%)等を上回ってきました。で、このインフレ、前述のとおりエネルギー価格の急騰がもたらしたものですが、これから欧州は冬本番すなわち天然ガスや石油の需要のピーク期を迎えます。であれば、ドイツ(やオランダ)などがECBにテーパリング(PEPPの停止:インフレ抑制)を強く求めるのは当然でしょう。これほど顕著なインフレなのに同国の長期金利は足元でマイナス0.37%(日本時間8日19:00)と世界最低なのだから、なおさらです。もちろん、ドイツほどではないにしてもフランスなどの域内の大国も状況は似ているので、このあたりはドイツと同じ思いのはずです。

 以上などから、ECBはPEPPの予定どおりの終了を決定する(せざるを得ない)と予想するものです。が、やっかいなことに?これを先取りした動きが出てきました。ギリシャやイタリア等の金利が(ビミョ~に)上がってきた、ということです・・・

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