世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【米トランプ氏に叱られても日本の為替操作?は止められない】「輸出攻勢は無理筋」に気づくチャンス⑤

2018-03-29 00:02:34 | 日本

前回からの続き)

 こちらの記事に書きましたが、安倍首相は以前、アベノミクス円安誘導ではないと語っています。これは、米トランプ政権の保護主義的なスタンスをふまえ、アベノミクスが始まったと同時に急速に進んだ円安が、対米輸出振興を促すための戦略的な為替政策の結果だとアメリカ側に解釈される懸念を強く意識した発言だったかと思います。

 まあ、たしかにアベノミクスつまり日銀の金融政策「異次元緩和」は厳密には円安誘導とはいえません。これ、日銀が市場から国債を買いあげてキャッシュを売り手に渡すもので、円を売ってドルを買う為替介入などではありませんからね。とはいっても、ベースマネーを拡大して年率2%程度のインフレを起こす!ってことはそれまでより通貨価値を落とす、すなわち円安にする!と同じ意味になるわけです。したがって前述のように、アメリカがアベノミクス日本を中国と同じ為替操作国と誤認(?)するのも無理からぬところだし、日本の言い訳もなかなか通じないでしょう。

 ・・・だからこそ、そんな勘違いを招くような(?)操作はさっさと終えるべきだと考えています。先に論じたように円安にしても実体経済面でのプラスはほとんどないうえ、こうして最重要の同盟国アメリカ様・・・のドナルド・トランプ大統領がこれを嫌がっているのだから(?)。さらに実際に止めても実体経済に大きな影響はないでしょう。まあ為替は円高ドル安に大きく振れると予想されますが、前述した事情等からドル換算の対米貿易黒字額はいまと大きくは変わらないでしょうし、その円建て評価額は減少するものの、他方で原油や食料品の輸入円建て価格が大きく下がってGDPの主役・個人消費が喚起されるから、差し引きで日本経済は真にプラス成長できると確信するものです。

 ・・・って綴りましたが、以下の2つの理由から、やはり当面は難しいでしょう。1つ目は、アベノミクス唯一の取り柄「カブノミクス」が崩壊するおそれがあること。日本の株価をつり上げてきた外国人投資家が日銀の金融緩和縮小とともに円キャリートレードを手じまうため、急激な円高・・・そして株安の発生は不可避となってしまいます。このとき現政権にとってコワいのは、公的年金基金が莫大な評価損を計上することでその超~高値掴みという大失態が明らかになってしまうこと。ゆえに株安につながる政策変更は絶対にNG!となりそうです(?)。

 2つ目は・・・わが国が為替操作(?)を止めることは、ほかならぬアメリカ様を支えるつっかえ棒を取っ払うことになりかねないこと。こちらの記事に書いたような事情があるということです。トランプ大減税にともなう米財政収支の悪化や中国の米国債買い控え(?)等が心配されるなか、円安路線からの転換によってマネーを円に誘導したら・・・ドル・米国債は暴落、米長期金利の上昇に歯止めがかからなくなってアメリカは国家存亡の危機に陥りかねません。日銀としては米FRBに代わってでもこの破局を阻止しなければならないところです・・・?

 と考えてくると、アベノミクス日本はまったく動けない・・・という結論になりそうですね(?)。以前書いた「進むも地獄、戻るも地獄のアベノミクス」とはこのことです・・・

(続く)

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【アベノミクス日本は米に為替操作国と思われても仕方がない】「輸出攻勢は無理筋」に気づくチャンス④

2018-03-27 00:02:11 | 日本

前回からの続き)

 米トランプ政権は23日、輸入鉄鋼・アルミニウムに対する関税賦課を発動しました。結局わが国は、その適用除外国にはなりませんでした。よって日本からアメリカに輸出される鉄鋼製品には今後、25%の関税が課されることになります・・・。

 もっとも、わが国から輸出される鉄鋼材の対米向けの割合は全体の2%程度。しかも多くは原油掘削用鋼管など、高い品質が求められるもので、他国品では代替が難しいことから、本邦メーカーは関税分を上乗せして売ることが可能とみており、ダメージはそれほどではなさそうだ、とのことです。

 それよりも・・・EU、韓国といった、アメリカにとっての他の同盟国・地域が同除外とされるなか、日本中国などと一緒に対象国にされたことが問題でしょう。いかに今回の措置が、世界貿易機関の規定するルールに反する疑いが強い無茶なものとはいえ、唯一無二の(?)同盟国だと信じて疑わなかったアメリカの、この日本に対する仕打ちは・・・安倍政権のみならず一般国民にとっても超~心外でしょう。

 さらにドナルド・トランプ大統領は同措置にかかる大統領令に署名する際、「日本の安倍首相らは『こんなに長い間、アメリカをうまくだませたなんて信じられない』とほくそ笑んでいる。そんな日々はもう終わりだ」と言い放ったそうな。ようするに、わが国はアメリカにとって同盟国なんぞではなく、中国と並ぶ貿易戦争の相手国だ!と断言したに等しいわけです。これが偽らざる対日感情でしょう、トランプ氏の・・・

 ですが、冷静に考えてみると、先述した理由から、トランプ氏がこのように日本に対してもイラつくのは分からなくもないわけです。わが国はアメリカにとって中国に次ぐ貿易赤字国。しかも・・・アメリカの目には、日本はアベノミクス安倍政権スタート以降、アメリカに対して輸出攻勢を強めてきた・・・ように映るわけです(って、その所期の目論見はまったく達成できず、日本は対米貿易黒字を増やせないうえ、トホホにも人類史的な超マイナス成長に沈んでいるわけですが・・・)。実際、アベノミクス前は1ドル80円くらいだったのがいまは105円くらいと、3割も円安ドル高になったし、円安になると日本の株式市場では対米輸出売上の大きな企業の株価が上がったりしているわけですからね。よってここで「輸入インフレを起こしたいだけで、円安をテコに対米輸出をいっそう増やそうなんて意図はない」といくら反論したところで、信じてもらえないでしょう。アメリカからすれば、これだけ大きく円安に持っていったのだからアベノミクス日本は中国と同じく「為替操作国」に思えるに違いありません(?)。

(続く)

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【アベノミクス円安でも対米貿易黒字額は全く増えず・・・】「輸出攻勢は無理筋」に気づくチャンス③

2018-03-25 00:01:29 | 日本

前回からの続き)

 前回、アベノミクスには「円安誘導による外需狙い」という目論見があったという見方を示しました。しかし・・・これ、こちらの記事を含めて何度も指摘していることですが、輸出に過度にシフトした経済振興策は隣人窮乏策とみなされて相手国との貿易摩擦を引き起こすし、そもそも日本はGDPに占める輸出の割合が小さいため、いくら輸出を煽ってもその景気浮揚効果は限定的にならざるを得ず、むしろ原材料インフレのようなマイナス面を差し引くと、通貨安誘導はトータルではダメージのほうが大きくなるわけです。そんな様子は、アベノミクス開始後の超マイナス成長とか国富(金融資産)の激減ぶりなどに表れています・・・って、統計を見ない?アベノミクス関係者はまったく気が付いていないみたいだけれど・・・(?)

 さらに、このたび米トランプ政権が発動する輸入鉄鋼製品等への関税措置は、あらためて通貨安をテコにした輸出振興が無理筋であることを知らしめましたこちらの記事等に書いたように、アベノミクスによって失われたわが国のGDPは何と!1兆ドル(105兆円)以上にもなります。これを円安環境下で取り返すには日本は同額の貿易黒字を上積みするくらいしかありません。となると・・・世界最大の消費市場であるアメリカからはこのうちの半分(56千億ドル)くらいの黒字をゲットしたいところです・・・が、これ、対米黒字額で第1位の中国3470億ドル:2016年)を大きく上回る額ですから、絶対に達成不可能だろう・・・ってことは容易に想像がつくわけです、トランプ政権のこうした強硬姿勢からすれば。

 ちなみに2016年の日本の対米貿易黒字額は「たった」の688億ドル。この数字、上記の狙いとか期待値に照らせば、まったくもって不十分なことは明らかです。ではせめて、アベノミクスで後押ししたからこの額にまで達したのだろう、と思ったら、同直前の2012年の黒字額は765億ドルですから、増えるどころか70億ドルあまりも減ってしまいました・・・。つまり、わが国はアベノミクス円安でも対米貿易で利益を増やせてはいないことになります。まあこれは当然でしょう。こちらの記事等で綴ったような状況なのだから。いまさら自動車メーカーがアメリカに作った工場を全部たたんで日本からの輸出に切り替えますか?そんなこと、できるわけがない・・・(以上、データはJETROのHPより)

 もっとも上記貿易黒字の円建て額は円安で膨らむことになります。2012年の年平均為替レートは1ドル約80円、2016年は同109円ですから、それぞれの年の黒字額は6.1兆円、7.5兆円となり、1兆円以上は増加する計算になります。よって、輸出企業に限ればこうして円建ての売上額や利益が増える分、その株主、経営者、従業員等は多くの円を得ることになります。とはいってもそのときの1円は1/801/109ドルに実質価値が下落していて、実際には1.36円(=1×109/80)を稼いでようやくアベノミクス前とトントンになることに留意すべきですが・・・

(続く)

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【円安(対米)輸出振興がアベノミクスの目論見だが・・・】「輸出攻勢は無理筋」に気づくチャンス②

2018-03-23 00:01:38 | 日本

前回からの続き)

 このほど米トランプ政権が決定した輸入鉄鋼等に対する高率の関税ですが、先述のように対米輸出国ばかりかアメリカ自身にもダメージが及ぶ策となることは明白でしょう。その意味でも今後、あちこちから非難の声が上がるとともに中国を含む相手国が何らかの報復措置を打つ懸念も強まりそうです。

 そうしたリスクを先刻承知で実施に踏み切ったのは、アメリカ第一主義を掲げる同政権としては、自国相手に貿易黒字を稼ぎまくる国にはとにかく我慢がならない、ということなのでしょう。そのあたり、まあ分からなくもありません。外国製品が大量に入ってくれば、自国メーカーは市場からの退出を余儀なくされ、その社員の多くは解雇等されかねませんから・・・

 さて、世界最大の消費市場であるアメリカがこうして自らのマーケットに関税障壁を設けようとしているわけです。その無茶ぶりの是非はともかく、わが国はあらためて輸出に過剰な期待は寄せられないことを思い知る必要があります

 「円安誘導による外需狙い」―――以前「アベノミクス」のことをこう表現しました。アベノミクスとは日銀「異次元緩和」とほぼ同義です。これ、為替レートを円安ドル高方向にもっていく意図がありますが、実体経済面における通貨安のメリットはほぼ「輸出に有利」の一点だけ。アベノミクス前まで対米輸出額1ドル=80円だったものが同120円とかになるから、円建ての収益利益額は膨らみます。それに1ドル80円のときに原価が70円だったとしたら、同120円になって原材料円建て価格が上がっても原価を90円くらいに抑えることができれば0.9ドル(108円)で安売りしても差し引きの利益は(10円→18円に)増えるし、販価を1ドルから0.9ドルに下げられるから価格競争面でも有利になって相手国の市場シェアを奪うこともできそうだし・・・(って、ここでは受け取る円の実質価値が1円=1/80ドルから同1/120ドルに低下していることのマイナス面には触れていません)。

 アベノミクス関係者がこの円安輸出振興に期待をかけてきたのは明らかでしょう。具体的な中身はここでは省きますが、最近の株式市場で、円安になると輸出企業の株価が上がり、円高になると逆に下がる、といったところはそのあたりの反映だと思っています。何度も指摘していますが、じつはアベノミクスは「カブノミクス」(私的造語)すなわちそのプラス面は「株のみ」です。で、現状のマーケットはこのとおり、円安→株高、ということで、カブノミクス的にはどうしても円安を歓迎し、株安をともなう円高を忌み嫌う、となりがちです・・・ってこれ、こちらの記事等で綴ったとおり実体経済の感覚とはかけ離れるわけですが・・・

(続く)

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【米トランプ政権、輸入鉄鋼・アルミ製品に高率関税を賦課!】「輸出攻勢は無理筋」に気づくチャンス①

2018-03-21 00:01:50 | 日本

 「アメリカは自国相手の貿易で黒字を稼ぎまくる国にイラつくわけです。これ重要、そして要注意・・・」―――本当にこのとおりになってきましたね・・・

 今月1日、ドナルド・トランプ大統領は、外国からアメリカに輸入される鉄鋼製品に25%、アルミニウム製品に10%の関税を課すことを発表しました。いっぽうで北米自由貿易協定加盟国のカナダとメキシコ、そしてトランプ氏のツィートによれば「同盟国であり偉大な国(our ally, the great nation)」オーストラリアへの本適用は除外しました・・・が、どうやら中国、欧州、そして日本の製品にはしっかりと税金をかける構えのようです。

 個人的にこれ、あちらこちらで指摘されているとおり、日本や中国などはもちろん、当のアメリカ自身にとってもダメージの大きなネガティブな政策と考えています。同国は現在、100か国を超える国々から鉄鋼製品を輸入しており、そのスケールはアメリカからの輸出の4倍にもなっています。いっぽう国内で生産されている鉄鋼製品は2000年には11200万トンでしたが2016年には8650万トンにまで減少しています。これらをふまえると現状、アメリカは自身の鉄鋼需要を外国製品で充たすしかないため、これらの価格が急に跳ね上がったらどうなるかは明白です。「シンプルにいえば、アメリカの製造業者、労働者、消費者に対する増税だ」(a tax hike on American manufacturers, workers and consumers)とオリン・ハッチ上院財政委員長が述べていますが、そのとおりだと思います。よってこのトランプ関税、米経済と国民経済への悪影響もまた甚大、ということになりそうです・・・

 さて、この騒ぎ(?)のなかで日本があらためて強く認識しなければならないことがあります。それは、冒頭のフレーズを含む以前記事のタイトルのとおり「円安輸出攻勢はアメリカ様が許さない」ということです。今回はこれが誰の目にもハッキリと分かる、つまりはアメリカが日本の対米貿易黒字を「やり玉」に上げ始める展開になってきました。米トランプ政権は、大切な同盟国であるはずの日本をあからさまに敵視してきたわけです、中国などと一緒にして・・・って、アメリカ第一主義を標榜するトランプ氏にしてみれば当たり前なのでしょうが・・・

 もっともこれ、予想できたことではありますね。実際に同氏は、昨年11月の来日時における日米財界人との会合において、日本との貿易は公正、オープンではないと述べ、日米間の貿易不均衡に強い不満感を表明していました。ちなみにこのあたりは数字でも分かります。米財務省によればアメリカの対日貿易赤字額は現在689億ドル(2016年)。これは中国(3470億ドル)について2番目の大きさです・・・

(続く)

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【ユーロもドルと同様、インフレで劣化していく】ユーロ圏のインフレ依存も止まらない⑤

2018-03-19 00:00:10 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 以上により、いつもの結論になりますが、ユーロ圏は、いまの枠組みで居続けるならば、欧州中央銀行ECB)の量的緩和策(QE)を停止することはできず、よってその共通通貨ユーロの大量放出も止まらないために、インフレの害悪を避けることはできないだろうと考えています。

 このあたりをドイツは以前から嫌がっているわけですが、いくらドイツ・・・連邦銀行(独中銀)のイェンス・ワイトマン総裁がQEをやめよ!と訴えても、ECB内では残念ながら(?)多勢に無勢、全体の真ん中を取ったかのような決定つまりQE続行が延々と繰り返されるため、その主張が通ることはまずあり得ないでしょう(?)。ワイトマン氏には来年、ECBの次期総裁になる可能性がありそうですが、たとえトップになったところでユーロ圏ではご自身の理念を実現させることはできず、フラストレーションがたまるばかりになってしまいそうで心配です。やはり同氏には、こちらの記事等で書いたように、日銀にお越しいただくべきだった・・・って、もう遅いけれど・・・(?)

 もっとも、ユーロと同じく、基軸通貨の米ドルもまたインフレ通貨であるわけです。しかも米トランプノミクスをみる限り、いまの勢い(?)は後者の方が断然勝っている感じです。したがってユーロはドルに対しては高くなりそうで(?)、欧州市民にとってはエネルギーコストの面ではインフレのダメージは少しは小さいかも・・・って、あくまでもアメリカと比較して、ですが・・・

 ユーロそしてドルの2大通貨はこうしてインフレで沈んでいくことになります。ついでにいえば英ポンドとか豪ドルカナダドルなども同様でしょう。よって、主要通貨でほとんど唯一インフレではない(=名目金利-インフレ率>0)通貨「」を持つわが国は、本来ならば世界最強のポジション「円>スイスフランを含むすべての外貨」にいるわけです。この有利な立場こそを最大限生かした国家経済運営を図るべし―――上述、ユーロ圏各国のバラバラ具合や通貨ユーロの必然的失敗(=インフレを制御できないこと)は、わたしたちにこう告げています(?)。

(「ユーロ圏のインフレ依存も止まらない」おわり)
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【ECB、キャピタル・キーに縛られて重債務国の債券を十分に買えず…】ユーロ圏のインフレ依存も止まらない④

2018-03-17 00:00:55 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 ここまで書いたことから判断すると、欧州中央銀行ECB)は今後も量的緩和策(QE)を続けるしかないと考えられます。でも・・・そうなると先述したリスク、とくにドイツオランダなどで顕在化している住宅バブルがますます過熱し、これら国々の経済や金融システムに悪影響が及ぶのは必至でしょう。ご紹介の下記グラフを見ても、まあ・・・そうなっちゃうだろうな~ってことは容易に想像がつくところです。

 他方で、いくら継続するといっても現状のQEの規模では・・・イタリアとかギリシャにとってはまだまだ不十分といえます。そのためECBにはもっと派手に緩和マネーをばらまいてもらわないと・・・といったあたりが彼らの胸の内でしょう(?)。

 よって、もっとも望ましいQEの仕方は・・・ドイツやオランダのような国々の債券購入は手控える一方、イタリアやギリシャなどの債券はもっと多く買い入れる、というものになります(?)。これだと、前者の長期金利は適度に上がってバブル抑制が図れるうえ、後者では長期金利がいまよりも下がることで不動産投資が活性化し、景気が上向くほか、住宅価格も値上がりして待望の資産効果がもたらされるに違いありません(?)。いまのECBは本心ではこれをしたいところでしょう(?)。現ECB総裁マリオ・ドラギ氏は・・・イタリア人ですからね・・・

 しかし、残念ながら(?)ECBにはこれが実際にはできません。このやり方だとイタリアとかギリシャみたいな重債務国の国債ばかりを買い上げることになり、ECBが彼らに対して実質的な財政ファイナンス(中銀による国債の直接引き受け)を施すかたちになってしまうからです。このときこれら諸国は、ECBが買い支えてくれることをいいことに、次々に国債を振り出して放漫財政に走るに違いありません(?)。こんなこと、欧州債権国とりわけドイツには絶対に受け入れられないでしょう。これが共通通貨ユーロの大量発行すなわち激しいインフレにつながりかねないためです。

 そんな収拾不可能な事態に陥ることのないよう、ECBはQEの実行に当たっては各国のECB出資比率(キャピタル・キーcapital key)に応じて債券を買い入れるようにしています。上記リスクを勘案すれば当然のルールではあります・・・が、これですと先述した各国の欲求不満が解消されることはけっしてない―――最大出資国ドイツはもっとも多く債券が買われるので金利が低くなり過ぎてバブルが膨張を続け、かたや同比率の低い国々では十分に下がらないので資産デフレが止まらない―――わけです・・・

 このように考えてくるとやはりECBには、ユーロ圏各国をそれぞれの苦境から脱出させる手がないということになってしまいますね・・・(?)

(続く)
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【欧州中銀にQEを続ける以外の選択肢はない】ユーロ圏のインフレ依存も止まらない③

2018-03-15 00:01:47 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 

 前回ご紹介した上記のユーロ圏6か国の住宅価格推移ですが、直近(2017年第4四半期時点)の指数の大きさを順番に並べると下記のようになります(カッコ内が同指数:2015年第1四半期値を100)。

独(119.4)>蘭(117.7)>仏(108.0)>西(106.8)>伊(98.2)>ギリシャ(94.0

先述のように、独、蘭、仏、西の4か国等の住宅価格はこの3年ほどでかなり上がっています。ドイツなどは上昇率が2割にも達し、資産バブルが発生している状態といえそうです。これ、明らかに20153月に欧州中央銀行(ECB)が開始した量的緩和策(QE)の「おかげ」でしょう。つまり長期金利が各国のファンダメンタルズを反映する水準以下に引き下げられ、ローン金利が低くなった結果、住宅投資が活発になったということだと考えられます。いっぽうでイタリアおよびギリシャでは同価格は引き続き下降中です。ということはこの2国にとっては上記「おかげ」が足りていない―――まだまだ金利が高い―――のでしょう・・・

 その(長期)金利ですが、低いところは(10年物)国債価格が高くなり、高いところは低くなるわけです。この国債価格について上記6か国を(10年物)序列化した不等式が以下になります(カッコ内は3/9時点の長期金利値)。

独(0.64%)>蘭(0.68%)>仏(0.89%)>西(1.42%)>伊(2.00%)>ギリシャ(4.14%)

ここで注目は、トップのドイツから最下位のギリシャまで、この国債価格の序列と上の住宅価格上昇率の序列が一致すること。その意味することは上述のとおりで、不動産に代表される各種資産市場が熱を帯びるか冷え込むかは(長期)金利の動向次第、ということなのでしょう。これ、まあ当然ではありますが、両不等式における国々の順番がぴたりと一致するのは興味深いと思います。

 さて、こうした各国バラバラな?経済状況下でECBは今後どのような金融政策を打つべきなのでしょうか。わが国のTVニュースを見ると、欧州では景気が過熱気味になっているのでECBはQEの幕引きに向かうだろう、なんて見方が多いような印象を個人的には受けます。でもそれってあくまでもドイツなど一部の国々の情勢に過ぎず、上記のようにフランスあたりから(国債価格・住宅上昇率が)「下」の国々はECBの支え(国債とか社債の買い入れ等)がないと厳しい状況に逆戻り―――長期金利が跳ね上がって資産デフレが深刻化し、金融危機がまたも勃発―――してしまいそうです。

 もちろんそれによって困るのは南欧債務国だけではありません。ドイツなどの、上記不等式では上位にある国々の銀行はイタリアなどの国債やら社債をしこたま抱えているわけです。これらの価格が暴落(金利が暴騰)したら、その主要な所有者である独銀等もまた過小資本とか債務超過状態に陥ってしまい、結局はドイツ・・・の納税者が巨額の金融システム救済資金を拠出せざるを得なくなります。そうした事態はドイツ人だって回避したいところでしょう・・・

 ・・・このように考えてみると、ECBは・・・今後も「QEを続けるしかない」で決まり、であることが分かります(?)。

(続く)
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【EU圏QEもう結構/もっと派手に:違いは住宅価格推移で分かる】ユーロ圏のインフレ依存も止まらない②

2018-03-13 00:01:54 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 前回、欧州中央銀行ECB)の量的緩和策(QE)にかかる資産購入プログラムが今年に入って縮小されたことに関連し、「もうたくさん」といったドイツのような国々もあれば、反対に「もっと派手にやってくれないと困る」といったギリシャのような国々もあるなど、同じユーロ圏内でもQEに対する思いがまったく違っている様子について綴りました。このあたりが反映されているデータの典型例は先にご紹介の国債価格(長期金利)となりますが、ここでもう一つ、住宅価格を挙げておきたいと思います。

 上は独、蘭、仏、西、伊、そしてギリシャのユーロ圏6か国の、2010年第1四半期から2017年第4四半期までの各四半期ごとの住宅価格の推移をみたものです(出典:ieconomics.com)(ECBのQEが開始された直前の2015年第1四半期の値を「100」としています)。これを見ると、QE(長期金利の押し下げ誘導)は「もうたくさん」つまり住宅バブルが発生しているところと、「もっと派手にやってくれないと困る」つまりいまも資産デフレが進行中のところの差がはっきりと分かります

 前者の代表は、もちろんドイツ。同国ではQEが始まるずっと前、つまり2010年あたりからほぼ一貫して住宅価格が上昇トレンドを描いています。ということは、住宅市場はそもそも過熱気味で、むしろ金融を引き締めるくらいがちょうどよいくらいだったはず。そんなときに逆の金融緩和策が実行されてしまったら当然、バブルが膨張してしまうわけです。実際、ECBのQEが始まった当時(2015年第1四半期)から現在(2017年第4四半期)までの3年弱の間の通算上昇率は2割近くに2010年初頭からでは同45%に達しています。

 ドイツほどではないものの、オランダもまたドイツに近い状況となっています。同国の住宅価格は2009年ごろにピークを打った後、南欧諸国の債務危機等の影響もあって徐々に下降、20132014年にかけてボトムをつけています。上記QE後は少しずつ上げ幅が大きくなり、直近では急激に上昇し、QE開始から現在までの通算上昇率は約17%とドイツに次いで大きくなっています。

 フランススペインの住宅価格はQE開始の少し前あたりで底に至り、QEが始まってからは徐々に上がってきました。QE後の通算上昇率は78%くらいで、QEの価格押し上げ効果がそれなりに表れてきたものと思われます。

 これらに対し、QEの後もさえない展開となっているのはギリシャイタリア2か国。両国の不動産価格はともに上記危機の直前あたりに高値を記録した後は一貫して下がり続けています。とくにギリシャの住宅価格の下げはきつく、QE直前の価格は2008年頃の6割程度に落ち込んでいます。さらに両価格とも、本来ならばQEによって押し上げられそうにもかかわらず、それから3年近くたったいまでもイタリアは98くらい、ギリシャは94くらいと、同スタート時点よりも下がってしまっています・・・

(続く)
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【欧州中銀、1月より資産購入規模を半減でQE手仕舞いか?】ユーロ圏のインフレ依存も止まらない①

2018-03-11 00:00:58 | ヨーロッパ

 今年9月でQE(量的緩和策)は終わる・・・ことはなく、アメリカと同様に欧州もまた、資産インフレにどっぷり依存した道を歩むしかないでしょう、このままだと永遠に・・・?

 この1月から、欧州中央銀行ECB)は現行の資産購入プログラム(QEの一環:APP)について、国債等を含む月間購入額をそれまでの600億ユーロから300億ユーロに縮小しています(9月まで実施予定となっている)。したがってマーケットでは、米FRBに続いてECBもいよいよテーパリング(緩和策縮小)に入ったか、との見方が広がり、それが足元のドルに対するユーロの上昇の一因となっているように思えますが・・・

 さて、ECBが上記QEをスタートさせたのは3年前の20153月でした。それ以降ECBは、APPやマイナス金利政策等を通じて金利の低め誘導を行って投資を刺激・・・というか、ぶっちゃけ資産バブルを醸成しようとしてきました。こちらの記事等に書いたように、ユーロ圏・・・のなかでもギリシャに代表される、支払い能力が低くて経済・金融基盤がぜい弱な重債務諸国はバブル、とりわけ不動産バブルの資産効果で景気を浮揚させたいという思いが強いわけですからね。

 いっぽう、ドイツを筆頭とする債権国サイドはこれらとはまったく様相を異にします。つまり、経済の実態に照らして金利が低くなり過ぎ、不必要なバブルが発生してかえって危険ということになります。したがってECBにはすぐにでもQEを止めてもらいたいところでしょう。

 まあECBは、こうしてユーロ圏各国のファンダメンタルズがまったく違っているなか、どうしても全体の中間点を取ったような政策を選択せざるを得ません。となると・・・上記の前者にとっては金利が高過ぎ、期待する大きさにバブルは膨らまず、他方の後者ではリスキーな水準にまで住宅等価格が上昇してしまい、どちらにとっても欲求不満が解消されることはない・・・といったことはこちらの記事などで綴ったとおりです。

 なお、これまた何度か指摘した点ですが、上述の違いは各国の国債価格=利回り差に表れてきます。同価格が高い順(長期金利が低い順・支払い能力が高い順)に並べると「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」といったようになります。現時点(3/9)の長期金利はドイツが0.64%、ギリシャが4.14%と、同じ域内の共通通貨ユーロ建て国債であるにもかかわらず、3.5%もの金利差があります。そんなバラバラ状態のユーロ圏で、ひとつの金融政策を展開することが、いかに無理のあることか、容易に想像ができるところです・・・

(続く)
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