(前回からの続き)
「カブノミクス」―――取り柄は「株のみ」―――以前から「アベノミクス」をこのように表現しているとおり、これを推進する日本の安倍政権・黒田日銀は、先述した「金融経済優先」路線を取っているといえます。こちらの記事等でも書いたとおり、両者はインフレを起こす(実質金利をマイナスに誘導する)!と宣言して円キャリートレードの魅力を高め、おもに「外国人投資家」たちに日本株を買わせることで株価をつり上げ、その資産効果で景気を浮揚させようとしてきた、みたいな感じ?
他方、これはいっぽうで、肝心のジャパンマネーを手繰る「日本人投資家」の対米投資意欲を減退させることになります(その結果、日本企業が空前のキャッシュリッチになったのはこちらの記事に書いたとおり)。キャリトレにともなってドルが円に対してアベノミクス前より20%以上も高くなったため、購買力平価や実質実効レート、すなわち実体経済の観点からはこれが割に合わなくなってしまったことが大きいでしょう。アメリカにとってそれが意味することは、金融面では金利上昇圧力であり、実体経済面では日本企業による直接投資の停滞です。その代わり―――「アメリカへの工場進出をやめる代わり、日本の自動車メーカーは、日本で余計に車を作って、通貨安をテコに大量にアメリカに売り込む気だ!」といった警戒と懸念の気持ちを多くの人々に抱かせ、結果としてアメリカの対日感情も悪化していくことに・・・。そのあたり、いくら日本にその気がない(実際に、ドル建ての対米貿易黒字額はアベノミクス後でも増えてはいない)、といったところで、米ドナルド・トランプ大統領は聞く耳を持たないでしょう・・・(?)
こちらの記事などで指摘しましたが、アベノミクス・・・というより日銀の現金融政策には、ひょっとしたら、上記のようにジャパンマネーに対米投資を手控えさせることなどによってアメリカの金利を上昇させ、借金バブルの崩壊および激しい資産デフレを誘発して同国経済を壊滅させようという秘めた狙いがある(???)んじゃなかろうかと勘繰っています。一応、表向きは、円がドルに対して高くなるから本邦投資家のドル買いが促されると見込んでいた・・・けれど思ったほどは進まなくて誤算、みたいに一般的にはみられている感じ(?)ですが、上記の真意を見抜かれていないという意味では、それも想定の内なのでしょう、きっと・・・(?)
・・・って、さすがにそこまで極端な深読みはしないでしょうが、ともかく米トランプ政権が、いまの日本にはアメリカにとっては脅威な面があり、ゆえに通商交渉等を通じてその修正を図っていこう、というのは分かる気がします。その過程で、人為的な為替レートを誘導している日銀の金融政策の転換が促され、これが本来のあるべき水準にシフトすれば、アメリカの実体経済にとってはプラスに働くと思います。つまり、購買力を回復したジャパンマネーが金融面でアメリカを支え、実体面では日本企業の対米再進出を通じて同国に雇用創出等の恩恵をもたらす、ということです。